智史と佑司、そして花梨。
十三歳のときに知り合った三人とトラッシュという名の一匹の犬。
ゴミ置き場で遊んだ思春期の思い出。
その後、三人はバラバラになり、いつの間にか連絡も途絶え、やがて大人になった。
智史は昔から好きだった、水草を扱うアクアショップ「トラッシュ」を経営していた。
美咲という、結婚紹介システムで知り合った女性と交際もしていた。
ある日、智史の店に森川鈴音という女が住み込みで働きたいと言ってくる。
彼女はモデルや女優をしていて、バイトの夏目くんも彼女が目の前にいることに驚いたほどだった。
その森川鈴音こそ、十三歳のころ一緒に遊び、十四歳で初めてのキスを交わした相手・花梨だったのだ。
この物語はファンタジーだと私は思う。
誰かが死んでしまったり、長い眠りについたまま目覚めなかったり、そうすることで目を覚まさない他の誰かを目覚めさせる。
小学生のときに眠りについてしまった、花梨の姉・鈴音が、花梨が眠りに落ちることで目を覚ます。
十年以上も眠り続けていた、それも子供から大人に眠ったまま成長した鈴音が、普通に智史と言葉を交わす場面には、とても違和感。
何もそんなややこしい設定にしなくても、物語は充分成立する気がしたので、ちょっと残念。