長い副題が付いてますので、書いておきますね。
 
『ヴェネツィアが燃えた日
  ~世界一美しい街の、世界一怪しい人々~』
 
訳者は高見浩さんです。
 
 
イタリアの北東部に位置するヴェネツィアは、私は未踏の地ながら憧れの場所です。
 
この本一冊で、ヴェネツィアを知り尽くしたような錯覚を起こしそうでした。(笑)
 
始まりは1996年のフェニーチェ劇場消失事件から。
 
グラン・テアトロ・ラ・フェニーチェは、ヴェネツィアのシンボルとも言える歌劇場。
 
そのフェニーチェが謎の失火(または放火?)により、一夜にして消失してしまう。
 
筆者は奇しくもこの火災の三日後にヴェネツィアを訪れるのだ。
 
 
この作品は読んでいてドキュメンタリー番組を観ているような感覚に陥る。
 
書き手の伝え方が実に巧みで、ややこしい内容ながら面白く、最後まで興味深く読み進めることが出来た。
 
とても長い記録だが、どのエピソードにも惹かれるし、ヴェネツィアに行ったことのある人ならなおのことでしょうが、私のような行ったことのない人間にも観光しながらガイドさんの話を聞くよりわかりやすく書かれている。
 
実に様々な人々が登場するので全部はとても書ききれません。
 
知りたい方は読んでみて下さい。(* ̄∇ ̄*)>
 
中でも興味深かったのは、オルガ・ラッジとエズラ・バウンドの恋とその後の奇妙な遺産の行方ですね。
 
エズラ・バウンドは詩人で家庭があったが、バイオリニストのオルガと恋に落ちます。
 
二人の間にメアリーという娘が生まれますが、メアリーはよそに預けられ幼少期を両親と離れて過ごします。
 
エズラ・バウンド亡き後、老年になったオルガは二人の間で交わされた書簡やエズラ・バウンドの功績を未来に語り継ぐために「エズラ・バウンド基金」の創立を考えていました。
 
老年になったオルガの身辺の世話を親身になって焼いたのは、ジェイン・ライランズでした。
 
彼女は献身的なまでにオルガの身の回りの世話をする一方で、「エズラ・バウンド基金」を隠れ蓑にオルガの遺産を我がものにしようとしていた・・・かもしれないというのだ。
 
すでに九十歳を過ぎたオルガが知ったときにはすでに遅く、メアリーとその息子のウォルターが調査に乗り出したときには、全てが後手後手に廻っていたという・・・。
 
親の面倒を他人に全部して貰っておいて、遺産にだけは執着するメアリーとウォルターというのもどうもいけ好かない感じがしたけれど、何でもジェイン・ライランズという方は、これもまた同じようなことを繰り返してのし上がったような女性だったようで。
 
祖母の面倒を見ていた折りでもあり、何となく考えさせられる事件でした。
 
人間は、裸で生まれて裸で死んでいく・・・誰かが言ったっけ・・・相田みつをさん?
 
財産など遺さないに越したことは無いな・・・と思いました。
 
 
で、肝心のフェニーチェの火災ですが、放火事件として犯人も捕まり、「職務怠慢」の罪で他のフェニーチェを運営する側の人々も裁かれましたが、ホントのところは限りなくグレー。
 
先人たちが大切に守って来た国の財産が一夜にして灰になる様を見つめる人々の思いは、想像もできません。
 
注意一秒、ケガ一生、マッチ一本火事のもと。
 
皆さん、火の元には気を付けましょうね!!!←そんなことが言いたい訳じゃないだろーっヽ(`Д´)ノウワァァァン