「凪子の空」 「月子の青」 「征子の道」 「佐喜子の家」 「征子の海」 「月子ちゃんへ(凪子の手紙)」の六編のお話ですが、佐喜子は三姉妹の母親で、長女・征子、次女・月子、三女・凪子のそれぞれの物語になっていて、独立した物語ですが、全部繋がりがあります。
三女の凪子は、生まれつきの子宮の奇形で子供が産めない身体です。
昔、交際していた彼にそのことを打ち明けると「避妊しなくてもデキない身体」と受け止められ、暴力的な関係を迫られてしまい、以来、恋愛も結婚も諦めていました。
しかし、そんな凪子の全てを受け入れてくれる男性が現れます。
凪子さえ居れば、子供の居る未来などいらないと言ってくれる人、そして一人息子なのに、息子の愛した女性のことを受け入れてくれる優しい義父母。
凪子は亮一と結婚をした。
次女の月子は、親の反対を押し切って無職で金髪の翔平とデキ婚をした。
結婚後、定職に就いた翔平は転勤で北陸に・・・月子ももちろん一緒に赴いた。
女児を出産し、夏海と名付けた。
三歳になってもオムツが取れないのが悩みで、何かと面倒でうるさい娘と二人の時間はストレスが溜まり、ヒステリックな声を上げてしまうことも多い。
ママ友達との付き合いも今ひとつ上手く出来ない。
月子はブログでそんなストレスを発散させている。
精一杯、おしゃれな生活をアピールして、美化したり見栄を張ったり、アクセス数を気にして、付いたコメントには必死にコメントを返す。
後ろで夏海が泣いていても「うるさい!」と言って、パソコンに向かう毎日。
そんなある日、ブログに匿名での誹謗中傷コメントが立て続けに書き込まれるようになる。
消しても、またすぐに書き込まれる。
時を同じくして、夏海が急に熱を出した。身体には赤い発疹が。
窮地に立ったとき、月子を救ってくれたのは・・・。
三十七歳にしてマンションを買い、デパートの幹部社員として働き続けている長女の征子。
征子のもとに、ある日母の佐喜子が家出してやって来る。
良妻賢母を地で行くような、怒れば黙り込んでしまうような、この母が父のものの考え方に「プッツン」してしまったと言う。
結婚だけが正しい生き方って訳じゃない。
征子は、そう思って生きてきた。
恋人も居たが別れてしまった。その彼は今年、別の女性と結婚した。
今は仕事が恋人、月一万五千円のスパ通いが唯一の贅沢。
征子の心の奥深くに巣くっている風景があった。
二十七年前、凪子を危険な状態で出産した母の姿だ。
あのときの不安、恐怖、孤独・・・征子が大人になっても潜在的に抱えていたものは、彼女の生き様に反映されていく・・・。
母の佐喜子は、征子宅への一日だけの家出の後、また家出をしてしまう。
今度は叔母のユキナが一人で老後を過ごす、都心から離れた、小さな庭のある三間しかない小さな一軒家を頼り、一ヶ月ほど経っている。
佐喜子は夫のマザコンっぷりについにキレたのだ。
夫の実家に行くと、冷蔵庫にメモが貼ってある。
実家に居るうちに佐喜子がやるべき事を義母が書き記したものだ。
庭の草取り、洗面台のカビ取り、人形の虫干し、台所のコンロを青い洗剤できれいにすること、換気扇をきちんと磨くこと、トイレ掃除、和室の電球交換、階段拭き、布団干し・・・
これに食事の仕度や洗濯など、日々の家事も当然付く。
夫は、このときとばかりに母親に楽をさせようとして、佐喜子がやる全てのことは当然と思っている。
そんな状態の中、夫が長野の実家の近くの土地を買うと言い始めたのが、佐喜子を「プッツン」させたのだった。
こんな姑(夫もだ!)、私なら捨てます。(爆)
ていうか、できません!!
でも佐喜子はやっちゃうし、家出してても何度も家に帰って様子を見たり、ちょこちょこと家事を済ませたりしてしまうんですよね。
私なら、こんなキレ方をしたら二度と戻らないと思うんだけど。
同じ家の母と三姉妹、それぞれがとても身近な感じに描かれていて、共感するところの多い作品でした。
しあわせって、他人が見た目で決めることじゃなくて、自分が感じることなんですよね。
凪子のように子供のできない夫婦を「可哀想」と言う人がいるかもしれません。
でも子供がいなくても、凪子も夫の亮一もしあわせだと思っているなら、他人の思いなんてどうでもいいんですよね。
案外、他人の目線になって自分のしあわせを計ってしまっていないでしょうか?
私のしあわせは、私にしかわからないものです・・・そう思わせてくれた一冊でした。