くみは、九人きょうだいの末娘。
 
兄姉と年齢が離れているため、上の姉たちはもう結婚して家にいない。
 
長男の利明は父親に「お前は検察官になれ」と言われ、本当になってしまう。
 
そんな兄の存在は両親の誇りである。
 
時代は昭和三十年代四十年代の古き良き時代。
 
母やん(があやん)は、姉のお見合い相手だった父を奪って駆け落ちした。
 
商売の才覚のあったが家には殆ど寄りつかない父親に代わり、店を切り盛りしながら九人の子供を育てた母。
 
ときに厳しく、ときに優しく、働き者で頑固で強くて涙もろい・・・そんな母親が、昔の日本にはたくさんいたものです。
 
 
作者のあとがきに大変共感したので、抜粋ですが書いておきます。
 
 
昭和三十年代、四十年代の頃の親たちは頑固でものわかりが悪かった。子供たちの歓心を買うようなことはしなかったし、学歴のない貧しい庶民が大半だった。
しかし、自分がパチンコをやるお金はあるのに給食費を払わない親や、子供が万引きしても「金を払えばいいんだろう」などと開き直る親は一人としていなかった。
力道山のプロレスを本気で見るような、いまよりずっと素朴な人たちだったけれど、世間に顔向けできないことはしない、人の道に外れることはしない、お天道様がいつも見ている、という謙虚な気持ちを忘れることなく、子供たちにそれを教えた。背筋のピンと伸びたまっとうな人たちだった。
 
 
作者は当時の親たちを手放しで絶賛しているワケではありません。
 
しかし、あの頃人々の中に流れていた「何か」が現代に欠けてしまったことを私も常々感じているので、作者の方の仰りたいことはすごくよくわかるんです。
 
この本を読むと、作者が言いたいことがホントにわかる気がします。
 
我が家も似た部分がありましたし、母はやっぱり「母やん」的な人です。
 
同じようにできるか?と言われると全然自信がありません。
 
「母やん」はすでに過去のものになってしまっているのかもしれません・・・。