「椿姫」 「夜明けまで」 「星がひとつほしいとの祈り」 「寄り道」 「斉唱」 「長良川」 「沈下橋」
の七編の短編集。
ストーリーごとに舞台となる場所が違い、話す言葉も方言です。
私も田舎住まいなので、方言バリバリですが、方言にはぬくもりがあります。
「椿姫」は標準語でしたが、望まない妊娠をしたヒロインの苦悩が描かれており、「夜明けまで」では、愛し合いながらも結ばれることも無く引き裂かれた男女の死後、その娘と息子の手で、ひとかけらの遺骨になってようやく一緒になれるというお話。
「星がひとつほしいとの祈り」は、心に残りましたね。
生まれながらに目の見えないヒロイン。
彼女は旧華族の家柄のお嬢様で、地方出身の身の回りの世話をしてくれる娘がいる。
ヨネという娘はお嬢様にいつも寄り添い、手足になって働いた。
ヒロインは家庭教師の男性に恋をするが、彼は戦争に行くことに。
ヨネの計らいでひととき恋人同士として過ごしたものの、妊娠してしまう。
ヨネは実家のある松山に彼女を疎開させることを勧め、彼女は出産するも死産してしまう。
東京大空襲に遭った東京の家は跡形も無くなり、父も亡くなってしまった。
そして松山も空襲に遭い、ヨネも致命傷を負ってしまう。
彼女の焼けただれた身体をさすってあげると喜んだという。
ヒロインはそれで、マッサージを生業とするのだ。
これは長い長いマッサージ師のおばあさんの話だ。
マッサージを受けながらその話を聞いていた文香は、目が覚めてフロントに問い合わせても、そんなマッサージ師はいないし、昨夜文香はマッサージを呼んでもいないと言うのだ。
不思議な物語だったけれど、とても印象に残るお話でした。
どのお話も情緒豊かでじんわり来るお話でした。