「フォーゲットミー、ノットブルー」 「甘夏」 「ふたりでいるのに無言で読書」 「オイスターベイビー」の四編・・・だけど、これも主人公が変わるだけで同じ登場人物がどの章にも出てくる・・・というような内容。
 
世田谷にあるプロテスタント系の私立女子校の高等部に入学した希代子は、登校途中で制服でない、青いワンピースの女の子を見る。
 
その女の子は中等部からではなく、高等部からこの学校に入学してきた奥沢朱里だった。
 
「みんな制服着てるから驚きました。入学式って好きな格好しちゃいけないんですね」という挨拶に一瞬静まりかえる教室。
 
声をかけてきたのは朱里の方だった。
 
希代子には中等部からの仲間がいるが、朱里はあまりそこに入りたがらないため、二人になることが増えた。
 
希代子は内心、朱里のことをKYだと思っている。
 
朱里は有名な写真家の娘で、彼女も各国を転々として来たと言う。
 
両親は昔離婚しており、父には現在モデルの恋人が居るという。
 
パリにもニューヨークにも無かったメロンパンを珍しがる朱里。
 
希代子と朱里は急速に仲良くなった。
 
希代子はいつか、朱里の自宅に招かれ、小説のような家庭をこの目で見たいと思っていた。
 
朱里は遅刻や欠席の常習犯だった。
 
学校に行かずに海を見に行ったりするのだと言う。
 
そのうちに朱里がクラスメイトの恭子の彼氏を奪ったという目撃談がささやかれる。
 
が、朱里に大意は無く、一時間ほどドライブをしただけだと屈託無く笑って見せる。
 
それを聞いて、なぜか恭子に勝ったような気持ちになる希代子だった。
 
やがて念願の朱里の家に行くことになった希代子は、そこで朱里が自分やクラスメイトの悪口を書いているノートを見つけてしまう。
 
そのノートを盗み出した希代子は、朱里がいない間にクラスメイトにノートを回し、最後にはカッターナイフで切り刻んで朱里の机の上に置いた。
 
一気にクラスメイトを敵に回してしまった朱里。
 
クラスメイトに朱里をシカトしようと提案までする希代子。
 
しかし、そんな希代子のたくらみは裏目に出てしまい、結局自分の首を絞める結果となってしまう・・・。
 
 
女の子同士、特に十代の女の子同士の友情というのは、実に脆い。
 
親友と呼び合う仲になるのも早いが、些細なことで傷つけ合い、自分も傷ついてしまう。
 
集団になると更にタチが悪くなる。
 
席を外せば自分の悪口を言われているのでは無いかと不安になったり、誰かを仲間ハズレにすることで優越感に浸ったり。
 
時に、人を貶めてしまうような過ちを犯すこともある。
 
この作品は、そんな未熟な女の子の心理描写がとても上手く描かれている。
 
その時期をとうに過ぎた私も、胸の痛む部分、共感する部分があった。