『カク先生危機一髪』 『アイ・ラブ・ミー』 『笑わないロボット』 『北京飯店にようこそ』
 
『垣根の垣根の曲がり角』 『ちぎれたボタン』 『スリーバント、転がる』 
 
『あなた明日の朝お話があります』 『オレを持ち上げる大きな手』
 
長いタイトルがズラリと九編。
 
しかしこれは、全部独立した短編であって全て繋がりのある長編でもある。
 
 
あまり患者のいない整形外科の胡散臭い院長・カク。
 
ソースはスーパー製、豚肉は賞味期限ギリギリ、知ってる者はけして食べないお好み焼き屋のヤス。
 
町内一ぶきっちょな男なのに、バイク屋を開業し、文字通り自転車操業をしているオサム。
 
「なんかちょーだい」が口癖の、メシより何よりケンカが好きで、ケンカでメシを食っている、町の必殺喧嘩人・ケンカ屋キョースケ。
 
病院の前に立っていて、入院患者のお見舞いに来た年寄りが病院内で迷子になっただけでアルツハイマーだと強制入院させ、風邪をひいただけで注射五本・・・など無茶をやる事務長の、鼻の斜め下に大きなデンボ(デキモノ)がある、デンボの田辺。
 
赤いフェラーリ512TRを乗り回す寺の住職。
 
中華料理店「北京」の息子で、病に倒れた父のピンチヒッターを務めている、あだ名はその名もペキン。
 
どこに引っ越しても監視カメラを取り付けて用心しまくる、天然被害妄想男。
 
オレ様第一だったが、家族が増えるごとに自分の順位が下がっていくテージ。
 
・・・などなど、揃いも揃ってろくでなしの皆さんだけど、どの章もすべて『オレはオレが好き。オレ、オレ、オレ、オレ最高!』のような自画自賛、自己絶賛の言葉で始まる。
 
町内オレ様天国(地獄?)のような、大阪のどこかの町。
 
話の内容は、あまり記憶に残らなかったけど(←いいのか?)、大阪弁のテンポの良さと大阪人の飾らないくせに見え透いてもいない人情深いやりとり、「ボケ!バカ!アホ!死んでまえ!」のような言葉が日常でポンポン飛び交っているのに、なんとなく安らげてしまうような・・・住みたくないけど、知り合いたくもないけど(爆)、ご近所にこんな連中が揃っていたら楽しいだろうな・・・と思わせてくれた、罪のない楽しい一冊でした。
 
 
 
一見、三行半に見える本のタイトルは、デンボの田辺の奥さんの置き手紙。
 
真夜中に帰って来て、この一文を読んだ田辺のうろたえっぷりは、かなり笑えました。