施設から深夜、人目を盗んで奈緒(松雪泰子さん)に電話をかけてきた怜南(=継美<芦田愛菜さん)。
 
「もう一度、継美を誘拐して。お母さんに会いたいよ」
 
泣きじゃくる怜南に「ごめんなさい」としか言えない奈緒。
 
怜南誘拐の容疑で執行猶予中の奈緒には、怜南に会うことすら許されていないのだ。
 
その後、怜南のもとに、昔から仁美(尾野真千子さん)と怜南親子をよく知るカツコおばさんから荷物が届く。
 
怜南はその底に数枚の現金があるのを見て、ある計画を思いつくのだった。
 
一方、入院中の葉菜(田中裕子さん)は、怜南のために水色の手提げバッグを編んでいた。
 
死期が近いことを知る葉菜は、編みきれなかったときの続きを奈緒に託す。
 
葉菜が思い出す過去は、奈緒を連れて逃げ回ったころ。
 
あの頃が一番楽しかったのだと。
 
主治医の珠美(市川実和子さん)に、もう2,3日しか余命が無いと聞かされていた奈緒は、葉菜を家に連れて帰る決心をする。
 
自宅に帰ってきた葉菜に奈緒はつがいの小鳥を用意している。
 
葉菜がいつもお店で眺めていた小鳥だ。
 
そんな二人のもとへ思いがけず怜南がやってくる。
 
一人で何もかも調べて、一人で乗り物を乗り継いで、奈緒を訪ねて来たのだ。
 
駿輔(山本耕史さん)は、ある疑いを持って、葉菜と親しい老人の話を聞く。
 
その老人(高橋昌也さん)は、元刑事で葉菜の事件を担当していた。
 
駿輔には、温厚な葉菜が夫を殺して火をつけて逃げた・・・などとはとても考えられない。
 
老人も思いは同じようだが、葉菜は自分の罪を認め素直に刑に服したのだと言う。
 
駿輔にはある仮説があった。
 
葉菜には、自分を犠牲にしてでも「守り通さねばならないもの」があったのではないかと。
 
施設を無断で出てきた継美は、すでに捜索願が出されていた。
 
一晩だけ奈緒は自分のもとに泊まらせ、翌日には室蘭に連れて行くことにする。
 
継美が訪れたことを知った、籐子(高畑淳子さん)、芽衣(酒井若菜さん)、果歩(倉科カナさん)が訪ねて来る。
 
ひととき、和やかな時間を過ごした彼女たちは、みんなで笑顔の集合写真を撮る。
 
葉菜を訪ねた駿輔は、葉菜に過去の事件の真相を探るが、葉菜は「それは男の人の幻想です」とだけ告げる。
 
奈緒のもとからの帰り道、芽衣が産気づく。
 
葉菜は「気分が良いから」と言って、継美と奈緒の髪を切りそろえてあげるのだった。
 
葉菜は大事に持っていた母の写真を奈緒に手渡す。
 
「こうやって続いていくのね・・・」
 
奈緒は感慨深げに写真を眺める。
 
「私、あの子と離れられるかな・・・」
 
不安を打ち明けた奈緒に、葉菜は「30年かかって、あなたに会えたわ」と言う。
 
葉菜に髪を触ってもらっているうちに、かつて母に髪を切ってもらっていた頃を思い出す奈緒。
 
ずっと思い出せなかった母の顔をようやく思い出すことのできた奈緒だった。
 
寝る直前まで編み物をしていた葉菜だが、布団に入り静かに眠りに就く。
 
「奈緒は私のためにやってくれたのね。もう忘れなさい」
 
遠い昔、長い逃避行に出るときに葉菜が幼い奈緒に言ったセリフだ。
 
「全部お母さんがしたこと。思い出しちゃダメよ」
 
葉菜が自分の人生の全てを賭けて守り抜いたもの、天国まで持って行こうとしているもの・・・それは、たった一人の娘だったのだ。
 
奈緒は、一睡もせずに一通の長い手紙をしたためていた。
 
翌朝、なかなか起きて来ない葉菜を継美が起こしに行くが、葉菜はすでにこの世の人では無くなっていた。
 
芽衣に男児が誕生・・・その喜びを伝えようと電話した籐子は、葉菜の死を知り愕然とする。
 
保育器の中で小さな手足を懸命に動かし、生きようとする赤ん坊。
 
命はこうして受け継がれて行くのだ・・・と籐子は言う。
 
芽衣は母になって良かったと心から思うのだった。
 
そんな芽衣のもとへ、婚約者が訪れ彼女に指輪を渡すのだった。
 
葉菜のことを籐子に託して、奈緒は継美を連れて室蘭に行く。
 
継美を施設に戻すためだ。
 
でもこれは、奈緒と継美にとって永遠の別れではない。
 
いつか正々堂々と会えるその日まで、少しだけお別れするだけ。
 
いつか、そう・・・継美が成人する15年後に、きっと会おうと、奈緒は二十歳の継美に宛てて手紙を書いていた。
 
奈緒が葉菜に30年かけて再会できたように、継美と奈緒もきっとまた会える・・・それまでの辛抱だと。
 
駿輔は「聖母」というタイトルで、室蘭幼児誘拐事件の記事を書くが、ゴミ箱に放り込む。
 
やがて・・・時が経ったとき、喫茶店で楽しそうに会話する、奈緒と成長した継美らしき娘の姿があった。
 
 
 
日にちが経ってしまい、すっかり遅くなったレビューで申し訳ありません。
 
自分の中で煮詰まっていた気持ちを整理しつつ、最終回を思い返しながら書きました。
 
このドラマ、私が勝手に採点させて頂くと、前回までが80点、最終回で65点といったところだと思います。
 
低い評価では無いです。
 
他の春ドラマはことごとく捨て去っての健闘ですから。
 
ただ、あまりにも綺麗にまとめてしまったのが、気持ち悪かったですね。
 
このドラマ、脚本を書かれたのが男性だと知り、驚いたのが前回。
 
男性にしては母性というものを細かく表現しているなぁと思い、感心しました。
 
しかしラストは、やはり大人目線で都合よく終わらせた感が否めませんでした。
 
子役の芦田愛菜ちゃんの大人顔負けの名演技は素晴らしかったけれど、最後あまりにも聞き分けが良すぎました。
 
小さな子供が、あんな抽象的で漠然とした奈緒の言葉を受け入れたことに驚きました。
 
そこは幼い頃から大人の顔色を見ながら生きてきた分、大人の気持ちのわかる子なのだと言ってしまえばそこまでですが。
 
15年後、奈緒らしき人とと継美らしき人が再会しているシーンがあります。
 
あれは仁美と怜南ではないかという意見があるのもちらほら聞きましたが、流れとして奈緒と継美と考える方が素直でしょうね。
 
仁美に一切触れない最終回も不自然な気がしました。
 
確かに悪い母親です。
 
しかし、怜南を慈しんで育てたシーンをほぼ1話分くらい取って描いたのは何だったのだろう?と疑問に思いました。
 
最後、逮捕されて服役して、娘からも捨てられてしまった仁美に、かつて母性が存在していたのなら、葉菜を恨み続けても許すことのできた奈緒のように、いつか怜南も仁美を許すときが来るのでは無いでしょうか?
 
仁美の存在を無かったもののようにしてしまうラストなら、仁美が優しい母だった頃の長いエピソードはいらないし、最初から子供を愛せない冷酷な母親という設定でも良かったのではないかと思いました。
 
短い間にあれほど、母と子として強い絆を作れたことは奇跡です。
 
実の母をすっかり忘れ、捨て去るだけの強い絆。
 
なんかテーマがぼやけた気がした部分でした。
 
そもそも誘拐という設定に無理があったので、無理やりなラストも仕方ないのかもしれません。
 
どちらかと言うと、葉菜の人生の方がよほど「Mother」というタイトルに相応しいような気がしてなりません。
 
奈緒の生き方には共感できるようで共感しきれない。
 
共感してしまったとしたら、ドラマの作り手の罠にはまったのだと私は思います。
 
結局、なぜ籐子が奈緒を引き取り、我が子が生まれたあともずっと大切に育てていたのかは最後まで謎のままでした。
 
最初の方の思わせぶりなセリフが、丸投げ状態になったのは残念です。
 
籐子が子供に対して持っている強い思いがどこから来ているのかが全く説明不足。
 
また、籐子がシングル・マザーであることにも何か意味があるのかと思ってましたが、それもスルー。
 
芽衣の婚約者が子供が生まれた途端に戻って来たのも強引です。
 
べつにそのエピソードはいらなかったんじゃないかと思います。
 
芽衣があの婚約者と結婚して幸せになれると思えるような下地が何も無かったので、なんで!?と思いましたし、喜べませんでした。
 
今後、芽衣が苦労しそうな気配だけは感じましたけど。
 
奈緒にはぜひ、結婚して自分の子供を持って欲しかったです。
 
継美が二十歳になるまで母親で居続ける気持ちも理解しがたく、その前に仁美の存在も気になります。
 
あの「私を死刑にしてください」という言葉がウソでなければ、奈緒より先に怜南を迎えに行ったのではないかとも思います。
 
娘を守った葉菜と娘を虐待した仁美の違いってことでしょうか?
 
いろいろなクエスチョンとすっきりしない気分を残したラスト、やっぱり65点以上の採点はできません。
 
駿輔が書いた「聖母」とは、実は葉菜のことだったのかもしれません。
 
本当の意味での聖母は葉菜だったように思うからです。
 
田中裕子さん、最後まで素敵でした。
 
松雪さんも素敵だったけど、やっぱり誘拐以外の方法を考えて欲しかったです。
 
いろいろ書きましたが、良いドラマだったと思います。
 
欲を言えば、駿輔と奈緒のLOVEが欲しかったな。(笑)