本木雅弘主演の映画「おくりびと」のモデルになった本です。
 
納棺という作業を生業とする筆者の体験談と、死者と死者を弔う人々と接して感じたこと、そこから考えた宗教への想念。
 
宗教書の話や親鸞の話など、ちょっと難しい話はアホな私には理解しがたい部分もあったけれど、終始考えたのは「なぜ人は人の死を忌み嫌うのか」ということでした。
 
生まれてくる命に神秘があるように、消えゆく命にも神秘がある。
 
昔の人々は、人が死んでどこへ行くのかを考え、天国やら地獄やらを考えたのかもしれないけれど、実際死んでみて死者がどうなったのかを報告してくれる人がいる訳ではない。
 
生まれてくる命がどこから来たのかわからないように、消えた命もまたどこへ行くのか、本当のところはわからない。
 
人間は体験しないと怖いままなんだそうです。
 
死んだことが無いから死が怖い。
 
死んだ人から体験談を聞けないし、死んで一体どうなるのかわからないから怖い。
 
生まれる前のことを想像するときは怖くないのに、死ぬのが怖いのは経験してないからなんでしょうね。
 
この本を読むと、人の身体はよくよく「入れ物」だと感じます。
 
魂はきっと別のところにある・・・。
 
けれど、魂なんてホントにあるのかどうか・・・それも想像でしかありません。
 
亡骸は生きた人が確かに入っていた「入れ物」。
 
腰が曲がり、膝が曲がった老人のご遺体が棺桶に入らないカタチであるように、人は生きた姿を残して死んでいく。
 
その人が生きた証がご遺体の姿なのだと思う。
 
これを読んで是非映画にしてみたい!と思ったモックンの気持ちがわかる気がしました。
 
そして感激した気持ちを映画にするというカタチで表現できることを羨ましくも感じました。
 
彼の深い思いがあり、筆者の荘厳な思いと様々な経験があり、それを汲み取り物語を書く優れた書き手があり、その空気感を壊さないまま映像化したスタッフがあっての「おくりびと」。
 
日本で認められ、世界で評価されたのは、そこに誰もが通る「死」というテーマを真摯に描いたところにあると思う。