話題の映画「ラブリー・ボーン」の作者の最新作です。
父の死後、二十年間ほとんど家の外に出たことのない八十八歳の母。
四十七歳の娘・ヘレンは、ずっと面倒を見てきた母の息の根を止めてしまう。
意識が朦朧としている母を病院に連れて行かなくてはならないと思ったが、母は大便を失禁していた。
そんな姿を人前にさらすのを何よりも嫌う母のため、ヘレンは誰の力も借りずに一人で母を洗ってあげようと思っていた。
なのに、ヘレンは母の口にタオルを押しつけ殺してしまったのだ。
母は呆気なく死んでしまった・・・。
若い頃は下着のモデルをしていたという美しい母も、結婚してから心を病み、ヒステリックな女に変わっていた。
母の機嫌を損ねないように父と娘は細心の注意を払って生きてきた。
変わり者の母のために、ヘレンの人生も屈折したものになってしまった。
母の看病に疲れた父は自らの命を絶ってしまった。
ヘレンにも二人の娘がいて、二人とも独立している。
夫・ジェイクとは離婚しており、彼にはもう別の恋人がいる。
母を手にかけてしまったヘレンは動揺するが、仲良しのナタリーには打ち明けられない。
ナタリーは大きな家に住み、新しい恋人がいる。
ヘレンが連絡したのはジェイク。
ジェイクは遠くからだが、すぐに駆けつけると言ってくれる。
ジェイクの到着を待ちきれず表に出たヘレンは、ナタリーの息子・ハミッシュと関係を持ってしまう。
母を手に掛けてから24時間の間の、ヘレンの不可解な行動と彼女が選んだ最悪の結末までのお話。
これを読んで思ったのは、育った環境や親の性格がどんなに子供に影響するかということ。
けしてヘレン自身は変わり者でも何でもないのに、彼女の娘たちはごく普通に育っているのに、ヘレンは自身の母親の悪い影響をもろに受けていて、それが彼女の心に暗い影を落としている。
母を殺してしまったことで、ヘレンも壊れてしまった。
「ラブリー・ボーン」同様、いきなり救われないところから物語は始まり、どうして?なんで?と思いながらもヒロインは救われないまま破滅への道を辿っていく。
こういうお話を読むと、あ~私は子供に悪い影響を与える母になっていないかな?と考えずにおれませんでした。