1992年の作品ですので「看護婦」という記述ですが(現在は看護師)、作品に従い、この記事では「看護婦」で統一させて頂きます。<(_ _)>
朝比奈佐和子は聖サクラメント大学病院七階西病棟に勤務する看護婦。
看護学校から同期の北城ゆかりとは仲の良い友達だ。
ゆかりには高校時代からの同級生の恋人がいて、二人で旅行に出かけることになり、その間の勤務を交代してあげていた。
3Kの職場(きつい・きたない・給料が安い)と言われる病院勤務は文字通りきつく、担当する患者さんの容態によってや手元にある仕事によっては時間通りに帰ることができず、眠る時間を取るだけでやっと、恋愛など二の次三の次・・・のような状況にあり、佐和子もゆかりの恋愛を羨ましく思いながらも、なかなかその余裕が無いままだった。
旅行から帰ってしょげ返っているゆかりから、事情を聞けたのもしばらく経ってから。
旅館でいざというときになって、彼の口から看護婦としては屈辱的な言葉を聞いてしまい、ケンカになったというのだ。
それがきっかけで恋人との間に距離ができてしまったゆかりは、恋人との別れを機に新しい人生を考え始める。
いつの頃からか、何かと佐和子を気遣い親切にしてくれる藤田医師の存在が気になり始める佐和子。
しかし藤田医師は、それ以上佐和子に積極的になれない。
なぜなら彼は田舎に戻らなければならなかった。
看護婦として大学病院で成長していく佐和子に、一緒に来てくれとは言えないでいるのだった。
久々の「純愛物語」!( ̄m ̄〃)ぷぷっ!
今どき珍しい・・・いや、今どきのお話じゃないからか?(笑)大のオトナが揃いも揃って恋の前ではタジタジになっていて、可愛いお話でした。
けれど、病院を舞台にしているだけに、命を扱っている場面ではいろいろと考えさせられました。
たとえば、藤田医師が直面した孤独な老人の死。
痴呆もあり、家族にも大事にしてもらえない孤独な老人が、ある日パンを食べたくなり、口いっぱいにあんパンをほおばって、喉に詰まらせてしまいました。
藤田医師はパンを掻き出し、処置に当たるのですが、ふと「このまま好きなあんパンを食べながら死ぬ方が、この老人は幸せなのではないか」と思ってしまったのです。
処置の手を止めてしまった藤田医師・・・老人はそのまま亡くなってしまいました。
しかし医師という立場上、どんなことがあっても助けるべきだったのではないかと呵責の念に襲われた藤田医師は、佐和子に電話して事情を話します。
そのとき、「あんパン、美味しかったでしょうね」という佐和子の言葉に藤田医師は救われた思いをするのです。
患者さんを生かすとか死なせるとかの選択を医者がするものではない、と言ってしまえばそれまでですが、助ける技術を持つがゆえの葛藤もやはりあるのだな~などと考えてしまいました。
他にも「ああ、これは」と思うエピソードがあったのですが、読んでから時間が経ってしまったので忘れました。(* ̄∇ ̄*)>