「天気雨」 「卵の夢」 「夢の空」 「水の年輪」 「不自由な心」
五作品の短編集。
どの作品もとても深くて、人の心の弱さや孤独、それらの感情を上手く操れない不器用な人間の生き様と愛と死、どれも「うーん」と思わず唸ってしまう秀作揃い。
ただ、どの作品にも「不倫」があり、家庭を持つ男性というのは、家庭を持っても更にまだ別の愛情を他の女性に注げるものなのか?と、ふとクマのように眠る夫を見やったり。(爆)
どこかに書いてたけど、女性は「恋愛」をしたい生き物らしい。
そう言われるとそうかもしれない。
とりあえず、やりゃーいい!!みたいな本能は女性には備わっていないように思う。
たぶん、男性の読者の方がすんなり読めて、共感できるんだろうな~と思いました。
どれも素晴らしいので、これと言ってどれを紹介しようか迷うのですが。
飛行機が怖い私としましては(笑)、飛行機の離陸から墜落炎上するまでの模様を乗客の一人として乗り込んだ男の回想を交えた実況で語る「夢の空」は、ストーリーと別なところでゾクゾクしましたし。ゞ( ̄∇ ̄;)おいおい
余命宣告をされた男が、家を捨て、家族を捨て、一人きりで余生を送ろうとする「水の年輪」も感慨深いものがありました。
このお話では、主人公は幼い息子を海で死なせてしまった過去があるんです。
妻との関係は冷え、家の中に居場所の無いような生活を余儀なくされていたとき、突然の余命宣告。
親の遺産も入り、先々金銭的な不自由を妻や娘にさせることもない。
彼は会社を辞め、家を出た。
妻は彼の病気を知っても驚かない。
出ていくことも拒まない。
娘には、まるで夫がエイズにでも感染しているかのような説明をしていた。
恨まれているのだ。
五年前に知り合い、ひととき愛し合った女性を訪ねたが、彼女は結婚して新婚旅行に出かけていた。
何もかも失って、自分の命も間もなく終わりを迎えようとしたとき、主人公が選んだ道とは・・・。
表題作の「不自由な心」は、訴えかけて来るものはすごく重くて切実で、ああ・・わかるって思いたいんだけれども、何せ主人公が不倫しまくりだから妙に腹が立ちました。(^^;)
不倫が原因で、奥さんが車で首都高を暴走。事故って半身不随に。
彼は「責任を感じて」なるべく家にいられるように、職場も配置換えをし、妻に尽くしている風ではあるけれど、その実、妻の世話はお手伝いの女性に任せ、適当に何人もの会社の女性と関係を持っていく。
妻の事故の原因になった女性は、生きるすべを宗教に求め、やがて来る世界滅亡から救われるわずかな選ばれし人の糧のために献金を主人公に請求してくる。
彼の中では番号でしか思い出してもらえない女性も何人もいて、今また別の女性とも。
お――――――――――――――――――――――――いっ!(ノ`´)ノミ┻┻
妹の夫は、部下でありながら、同じ会社の女性と不倫。
妹から相談された主人公は、義弟を理詰めで諭してみるのだが、逆ギレされてしまう。
「好きな女と結婚するためなら、会社なんか辞めてもいい!離婚して彼女とやり直して何が悪い!?」
ほらみろっ!ほらみろっ!!
言ってやれ~~!!
どっちも不倫男なのに、私も何応援してんだか。(A ̄_ ̄;)
ざっと読んだら「うんうん、わかる」って思う。
でも、よくよく考えたらムカっ腹が立つ。
そんなお話でしたが、40代の既婚男性諸氏には「わかるなぁ~っ」な、お話かも。