韓国ドラマとは関係ありません。(笑)


仁科透は娘とオランダに向かっている。

旅先で妻が死んだのだ。

クモ膜下出血だった。

妻はホテルの一室で倒れた。

妻は倒れたときにオランダ人の男と一緒にいた・・・。

仁科の胸にある猜疑心が生まれる。


仁科と妻・布由子は将来の夢があった。

一人娘も結婚し家を離れ、二人きりの老後、ヴァイオリニストの布由子のヴァイオリンに合わせてピアノを弾こうと。

布由子が提案した曲はエルガーの「愛の挨拶」。

仁科は週に一回、大人のためのピアノ教室に通っていた。

妻が亡くなった今、もうピアノを習う必要も無くなったと思った。

しかし自然にピアノ教室に足が向いた。

これで最後のレッスン・・・そんな気持ちで訪れたのだった。


ピアノ教室は仁科の他に若い派遣社員の真部由貴、ITライターの立花俊、四十代後半の薬品会社勤務の植草幸雄のちょっとクセのある三人がいた。

講師の青柳美佐に事情を話すと、レッスンの後みんなで飲みに行くことになった。

その帰り道、危うく見知らぬ男にさらわれそうになっていた一人の少女をみんなで救出する。

少女の名前はザベー。

ビルマ(ミャンマー)人夫婦の娘だった。

ザベーの父親は入国管理官(入管)に捕らえられ収監中であり、母親が一人昼も夜も働いて生計を立てているため、幼いザベーは面倒を見てくれる人の無い金曜日の夜は母親の仕事先に連れられて来るのだが、活発な五歳の少女は母親の目を盗んでは夜の町に出て行ってしまうという。それで危険な目に遭ったのだ。

ザベーと同じ年頃の娘を失った過去を持つ青柳美佐の提案で、金曜日の夜だけ音楽教室で彼女を預かることにする。

教室の四人は交代でザベーを母親の勤務する店から教室までの迎えをすることになった。

間も無くザベーの父親、トゥンナインウーは仮放免の身にはなるが、裁判で政治難民の認定がされなければ、ビルマに強制送還され、命も危ういことを知る。

誰もビルマの歴史や現在の政治情勢などには疎い者ばかりだが、家族がただ一緒に暮らすという日本ではごく当たり前で、今はそれさえ崩壊していこうとしている中で、それさえままならない一つの家族と触れ合ったことで、それぞれが何かを見出していく。


一人で家にいると妻のことを思い出しては涙したり、男の影を感じて嫉妬心に苛まれて妻の部屋をあさってしまったりの仁科だったが、ついに妻のデジカメにオランダ人ピアニストと肩を組んだ写真を見つけてしまう。

妻の親友で音楽学校時代の同級生である加納初子を訪ねた仁科は、そこで意外な事実を知らされる。

仁科が見たオランダ人ピアニストはホモであり、布由子とは友人関係以上の何でもないこと・・・・それ以上に驚いたのは、布由子の頭の中にいつ破裂してもおかしくない大きさの動脈瘤が発見されていたことだった。

布由子の家系は脳梗塞や脳溢血で亡くなったり障害を負ったりする人が多かったため、布由子も念のためと脳ドックを受けていた。

何も無いと安心するために受けたはずの脳ドックで動脈瘤が見つかってしまった。

予防のための手術を受ける手段もあるが、脳の中を触る手術はリスクを伴うことも多い。

失敗すれば半身不随になるか、最悪の場合命を落とす。

布由子は仁科と一緒に「愛の挨拶」を合奏する日を楽しみにしていた。

だからヴァイオリンが弾けなくなる訳には、どうしてもいかなかった。

しかし手術をしないとなると、いつ破裂するかわからない動脈瘤。

破裂しない場合もあるにはあるが、絶対とは言い切れない。

布由子は誰にも話さずに親友にだけ打ち明けて、たとえ自分の身に何が起ころうと仁科が「ちゃんとたどり着けるように」カセットテープにメッセージを吹き込んだものと、初子と合奏した「愛の挨拶」、布由子が独奏したものと初子に弾いてもらったピアノパートの四本のカセットテープを遺していた。

仁科は奇しくも二人の結婚記念日に開かれる発表会で布由子との合奏を実現させるため、ピアノの猛特訓をする。

そして途中つまずきながらも、妻の演奏するカセットテープに合わせて「愛の挨拶」を演奏するのだった。



私もビルマと言えば「ビルマの竪琴」、「ビルマの竪琴」と言えば中井貴一、ビルマは今はミャンマーという国、あとアウンサンスーチーさん・・・って何した人だっけ?みたいな、それくらいの知識しかありません。知識って言いませんね。(笑)

この本を読んで、少しだけ知識が増えたような気がしました。あくまでも気が・・・。

正直、ビルマのくだりはよくわかんなかった・・・orz

でも音楽教室の人たちの助けもあって、トゥンナインウーの難民申請が通った裁判のところはホッとしたけど、一方で検察官の強引なやり方にもウンザリしました。

たぶん日本を守っているのは検察官の方だと思うんだけどね。


青柳美佐がピアニストをやめるきっかけになった娘の死。

ピアノ講師に生き甲斐を見出した、難病の少年が弾くピアノの話は良かったな。

上手くなるために習うピアノじゃなく、いつか動かなくなる手のリハビリのために習うピアノ。

いつか弾けなくなるピアノを必死に練習して「オーバー・ザ・レインボー」を弾き上げた少年の笑顔。

上達するのが目的なはずの習い事の概念を覆してくれたな。


仁科の妻・布由子が人知れず抱えた大きな悩み。

もしかしたら大丈夫かもしれないけど、いつ爆発するかわからない爆弾をいつもいつも抱えて生きてた期間、どんなに孤独で怖かったかな・・・と。

何も知らずに妻の不貞を疑ってしまった仁科がどれほど後悔したかな・・・と。

うまく言えないけど、いろいろ様々考えさせられた一冊でした。

「愛の挨拶」、綺麗な曲ですよね。


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