死後の世界に行くと「とりつくしま係」というのがある。
この世に未練のある人は、とりつくしまを探しているらしい。
だから、魂を持たない「モノ」にとりつくことができるのだ。
とりついたからと言って、言葉も発せないし手も出せない。
ただただ、そのモノが見える範囲にあるものを見て聞いているだけなのだ。
物語の主人公たちは様々な年齢で、様々な事情で亡くなった様々な人々。
愛する家族のもとへ、好きだった人のもとへ戻ろうと、その人たちの身近なモノにとりつくしまを求める。
わざと消耗するモノを選んで消えていく人もいれば、せっかく戻っても孫に手放されたモノになっていたり、妻の次の人生を見送る立場になってしまったり。
亡くなった人にとって「永遠」になってしまった時は、遺された人々には「通過点」になっていく。
仕方ないけど無常だね。
たとえこの世に未練があっても「とりつくしま」などない方が幸せなのかもしれない。