野村圭は三十五歳、派遣社員。
賃貸マンションで一人暮らし。
ナルトスーパー・カードサービスの委託で、申し込み用紙の空欄を電話で確認する仕事に就いている。
ある日、顧客リストの中に姉と同姓同名の女性客を見つけ電話してみると、それは姉に間違いなく、十年ぶりに電話で会話をした。
昔・・・姉が実家を飛び出したとき、圭は大学三回生だった。
芳樹というボーイフレンドもいた。
しかし「ごめんね」と意味深な言葉を残して出ていった姉は、芳樹と同棲していたのだった。
それっきり大学を卒業後、圭も親元を離れ一人暮らしを始めた。
姉は、親とすら音信不通だった。
聞けば、芳樹とはあまり長続きせずに別れたらしい。
芳樹は所帯を持っていて子どももいて、たまに姉の早紀とメールや電話で今も話しているらしい。
圭は芳樹のことはもう忘れた、持ち出さないようにしようと思うが、心の中では忘れきれていない。
友人の紹介でお見合いをした佐々木は、自分からは何をしようと言わないし、電話もメールすらよこさない。
たぶん圭の方から電話もメールもしなくなったら、それで終わりだろうと思う。
それでも圭は佐々木に連絡をとってしまう。
うんざりしながらも。
ある日、姉のマンションを訪ねた圭は、実家に帰ってみようかと提案してみる。
姉は今も芳樹のブログを毎日見ているという。
見せてもらったブログを見て圭は驚く。
そのブログは圭が気に入って読んでいた人のものだ。
毎日覗いては「きっとパンダみたいな人なんだろうな」と想像していた・・・。
昔の日記を開いてみるとアップされた写真は間違いなく芳樹の横顔。
彼の奥さんの写真も顔まではわからないながらアップされていた。
姉妹は別々の場所で似たような孤独な人生を生きてきた。
今こそ実家に帰ろう・・・父と母のいる場所へ。
姉妹で同じ男の人を好きになるパターンって多いよね。
同じDNAを持ってるせいか、異性の好みも似ちゃうのかな。
ま、それは何となくわかる気がするんだ。
罪なのはむしろ、妹の彼だった男が姉の方と逃げちゃう展開でしょ。
男女が反対でも同じだけど、姉妹間の亀裂だけじゃ済まないよね。
幸せになればそれでいいじゃんって問題でもないような。
この物語は結局のところ姉妹ともども芳樹って男とはダメになってしまって、しかも二人とも芳樹に未練タラタラで。
一緒に傷を舐め合って慰めあったり励まし合ったりするのかな?
同じDNAを持った姉妹のどっちも幸せにできなかった芳樹って男は、結局とことんこの家族とは縁が無いと思って、二人とも新しい恋でも探した方がいいみたい。
また同じ男だったら悲惨だけど。(爆)
一度はバラバラになった家族。
もう一度一緒に暮らして、また新しい出発ができるといいね。