私が初めて観たヤンさんの舞台は「ブラック・ジャック 危険な賭け」「火の鳥」でした。
ちょうどBSで宝塚特集をやっていて、そのときロンドン公演の舞台もやってくれたので「花扇抄」「扉のこちら」「ミリオン・ドリームズ」も観ることができました。
「ブラック・ジャック」は宝塚らしからぬ、白と黒に統一された衣装とセット。
トップスターが顔に大きな傷を付けて登場する・・・という、それまでの宝塚への概念を一蹴してしまう演出に驚きました。
と同時に、こんなにブラック・ジャックがはまる女性もいるのだなと驚いたのも覚えています。
ヤンさん(安寿ミラさん)は、小柄ながらダイナミックなダンスで大浦みずきさん退団後も「ダンスの花組」を支えたトップスターでした。
コスチュームプレイよりもスーツ姿を好むところがあり、実際スーツ姿のよく似合う方だったと思います。
クールな印象の強いスターさんでしたが、ユーモアのセンスも素晴らしく、とくに真矢みきさんとの「ヤンミキコンビ」で随分楽しませていただきました。
そんなヤンさんが退団を発表したのが1994年。
退団後は芸能活動をしない、ということだったので「もうヤンさんを見ることは無いのか」と残念に思ったものです。
宝塚大劇場での退団公演真っ最中の1995年1月17日未明、阪神淡路大震災が発生。
未曾有の大災害に見舞われた大劇場は、建物の損傷こそ無かったものの、作動したスプリンクラーで水浸しになり、公演続行は不可能な状態になりました。
宝塚の公演は、多くはその後東京宝塚劇場の公演まで続くので、そこが最後の舞台となるのですが、宝塚の生徒さんたちにとって、本拠地である宝塚大劇場での公演は退団者にとっては特別なものです。
当時の雪組・月組のトップスターで次期公演を控えていた、一路真輝さんや天海祐希さんが「自分たちの公演を短縮しても構わないから」とヤンさんのサヨナラ公演続行を歌劇団側に申し出たという話も聞いています。
ヤンさんのサヨナラ公演「哀しみのコルドバ」「メガ・ヴィジョン」は、歌手の細川たかしさんの好意で、細川さんが公演していた「劇場・飛天」で続行されることになりました。
そして同年5月には、復活した宝塚大劇場で「さよならショー」も開くことができたのです。
周囲の温かさ、ファンの愛情に強くうたれたヤンさんは、女優として第二の人生を踏み出すことに決めました。
現在は女優として数多くの舞台で活躍する傍ら、振り付け家としても頑張っておられます。
活躍の場が舞台中心なので、テレビでしか宝塚でさえ楽しめない私などにとっては、ヤンさんの姿を拝見することは滅多にありません。
でもヤンさんが女優さんである限り、どこで何をやっておられるか情報を得ることはできます。
いつか生ヤンさんを見られる可能性だって残ってますし。(笑)
私はヤンさんのショー「ハイパー・ステージ」が大好きです。
ご本人も気に入っていたのでしょうね。さよならショーの中で「ハイパ・ステージ」のオープニングの部分を再現されていました。
本当にカッコイイ男役でした。