四十年連れ添った妻がアルツハイマー病になった。

夫を忘れ、自分を忘れ、生活の全てを夫の手に頼らなければできなくなってしまった法子。

仕事人間だった夫・奥井は仕事を辞め、妻との生活に没頭する。

近くに家を新築して越してきた、高山美之は奥井の元部下で、子供も独立し、仕事からも離れ、老後を妻の緑子と新居で悠々自適に過ごすつもりだった。

奥井の生活を目の当たりにし、夫婦共々奥井の力になろうと決めていた。

そんな矢先、海外旅行先に先乗りしていた緑子が急逝。

高山は残った、買ったばかりのワゴン車を奥井に使って欲しいと差し出す。

奥井は、法子を連れて旅に出る。

そこは二人にとっては苦い思い出の場所。

奥井の先輩であり、かつて法子と同棲していた尾形が自殺した川のある温泉だった。

何もかも忘れたようでも温泉の名前を言えば、川の名前を思い出す法子。

法子にとって尾形という男は、ずっと彼女の心を縛り付けていたのだと思う。

そして二人でその場所を訪ねることで、ようやく尾形の呪縛から二人とも解放されたのだと思う。

老いても、心が壊れても、夫婦であることに喜びを感じられる二人は素敵だなぁと思いました。

きっと高山夫妻も緑子が生きていれば、充実したその先の未来があっただろうにと思うと気の毒です。

人生一歩先には何があるのかわからない・・・・ほんとにね。