第55回日本推理作家協会賞(短編部門)受賞作の表題作を含む、4話の短編集。
空に舞い上がった一枚の絵。
描いた女と拾った少年は運命のような出会いをした。
家賃が安いだけしか取り柄のないようなアパートで地味に暮らす女。
受験勉強の為に、自宅に近いそのアパートの女のすぐ下の階を借りた少年。
女の部屋には「お父さん」「お母さん」「僕」「私」と奇妙な名前のついた朝顔の鉢植えがあった。
「十八の夏」。
妻に先立たれ、幼い息子を義父母の力を借りながら育てている高志。
ある書店で出会った明日香に心惹かれるようになる。
しかし金棒曳きの義母から聞かされた話では、彼女は未婚で子供を死産した過去があると。
彼女と同級生の義妹の話では、明日香は結婚直前に夫となる人に事故死されたということだった。
世間の目と過去の悲劇から「もう愛する者を失いたくない」と思う明日香と結婚するには
まず息子、太郎の理解と義父母の理解を得なければならない。
一緒に明日香の家で食事をした後で太郎が言った言葉は
「明日香ちゃんの家、便所みたいな臭いがしてた」
息子は明日香を気に入るのか・・・。
「ささやかな奇跡」
生まれる時に母の胎内から背丈、バイタリティ、情熱といった取り分を全てかっさらって
生まれて来た感のある兄を持つ洋二は、兄が残して行った自制心、遠慮、デリカシーを貰って
来てしまった・・・。
高校3年の時に「役者をめざす!」と宣言し、劇団に入り、雑用をこなしながらアルバイトをして
自宅は玄関を使わず、物干し台へハシゴを掛けて出入りしている一風変わり者の兄、涛一。
そんな破天荒な兄が恋をした。
彼女のためなら役者も辞めて、カタイ職業=公務員試験も受けようじゃないか!!!
兄が恋した相手は洋二の恩師の・・・・・娘が「お姉ちゃん」と呼ぶ美枝子さん。
涛一はてっきりトシの離れた姉妹と思っていたのだが・・・。
「兄貴の純情」
家庭で家族ぐるみで塾を営んでいる栂野家。
浩介は婿養子だ。
かつての教え子、相田史香と再会してから過去の記憶が蘇る。
史香の父が事故死した後、同じく妻に自殺された浜岡繁道と母、苗子が再婚し、やはり塾の教え子
だった浜岡崇と史香は義兄妹になった。
そしてすぐに繁道と苗子が変死するという悲劇に見舞われたのだった。
史香が再び浩介の前に現れたとき、崇もまた交通事故で亡くなった後だった。
5人の死の影にあるもの、史香の抱える大きな心の闇。
「イノセント・デイズ」
私はもう、文句なしに「兄貴の純情」が好きです。
作者の方も後書きに書いてますが、本当に書き手も楽しんでるのがわかります。
この兄貴のキャラも大好きですが、弟くんの地味ながらも「決断力は無いが判断力はある」キャラが
またいい味を出してます。
久しぶりに読みながら声を上げて笑いそうになりました。
語るなら「イノセント・デイズ」かな。
すごくどろどろしてて・・・悲しくて・・・何とも言えない内容。
「強くて綺麗な花を咲かすくせに毒のある花」夾竹桃・・・すぐにヒロシマを連想したんですよ。
作者がヒロシマの出身なんですね。
ヒロイン・史香は夾竹桃のような母親に似た自分を嫌うけれど、浩介はなぜ夾竹桃がヒロシマの花
になったのかを話して聞かせるのです。
被爆後75年は草木も生えないと言われたヒロシマに一番に咲いたのが夾竹桃。
その強さ、たくましさに人々は勇気づけられたのだと・・・。
読み応えのある短編集です。
「小説推理」に掲載とあり、「え!?推理小説だったの?」と思ってしまいました;;;
良いお話ばかりでした。
お勧めです。
空に舞い上がった一枚の絵。
描いた女と拾った少年は運命のような出会いをした。
家賃が安いだけしか取り柄のないようなアパートで地味に暮らす女。
受験勉強の為に、自宅に近いそのアパートの女のすぐ下の階を借りた少年。
女の部屋には「お父さん」「お母さん」「僕」「私」と奇妙な名前のついた朝顔の鉢植えがあった。
「十八の夏」。
妻に先立たれ、幼い息子を義父母の力を借りながら育てている高志。
ある書店で出会った明日香に心惹かれるようになる。
しかし金棒曳きの義母から聞かされた話では、彼女は未婚で子供を死産した過去があると。
彼女と同級生の義妹の話では、明日香は結婚直前に夫となる人に事故死されたということだった。
世間の目と過去の悲劇から「もう愛する者を失いたくない」と思う明日香と結婚するには
まず息子、太郎の理解と義父母の理解を得なければならない。
一緒に明日香の家で食事をした後で太郎が言った言葉は
「明日香ちゃんの家、便所みたいな臭いがしてた」
息子は明日香を気に入るのか・・・。
「ささやかな奇跡」
生まれる時に母の胎内から背丈、バイタリティ、情熱といった取り分を全てかっさらって
生まれて来た感のある兄を持つ洋二は、兄が残して行った自制心、遠慮、デリカシーを貰って
来てしまった・・・。
高校3年の時に「役者をめざす!」と宣言し、劇団に入り、雑用をこなしながらアルバイトをして
自宅は玄関を使わず、物干し台へハシゴを掛けて出入りしている一風変わり者の兄、涛一。
そんな破天荒な兄が恋をした。
彼女のためなら役者も辞めて、カタイ職業=公務員試験も受けようじゃないか!!!
兄が恋した相手は洋二の恩師の・・・・・娘が「お姉ちゃん」と呼ぶ美枝子さん。
涛一はてっきりトシの離れた姉妹と思っていたのだが・・・。
「兄貴の純情」
家庭で家族ぐるみで塾を営んでいる栂野家。
浩介は婿養子だ。
かつての教え子、相田史香と再会してから過去の記憶が蘇る。
史香の父が事故死した後、同じく妻に自殺された浜岡繁道と母、苗子が再婚し、やはり塾の教え子
だった浜岡崇と史香は義兄妹になった。
そしてすぐに繁道と苗子が変死するという悲劇に見舞われたのだった。
史香が再び浩介の前に現れたとき、崇もまた交通事故で亡くなった後だった。
5人の死の影にあるもの、史香の抱える大きな心の闇。
「イノセント・デイズ」
私はもう、文句なしに「兄貴の純情」が好きです。
作者の方も後書きに書いてますが、本当に書き手も楽しんでるのがわかります。
この兄貴のキャラも大好きですが、弟くんの地味ながらも「決断力は無いが判断力はある」キャラが
またいい味を出してます。
久しぶりに読みながら声を上げて笑いそうになりました。
語るなら「イノセント・デイズ」かな。
すごくどろどろしてて・・・悲しくて・・・何とも言えない内容。
「強くて綺麗な花を咲かすくせに毒のある花」夾竹桃・・・すぐにヒロシマを連想したんですよ。
作者がヒロシマの出身なんですね。
ヒロイン・史香は夾竹桃のような母親に似た自分を嫌うけれど、浩介はなぜ夾竹桃がヒロシマの花
になったのかを話して聞かせるのです。
被爆後75年は草木も生えないと言われたヒロシマに一番に咲いたのが夾竹桃。
その強さ、たくましさに人々は勇気づけられたのだと・・・。
読み応えのある短編集です。
「小説推理」に掲載とあり、「え!?推理小説だったの?」と思ってしまいました;;;
良いお話ばかりでした。
お勧めです。