DREAM THEATER新譜について
ドリームシアターの2011年前作アルバムが耳にしっくり来なかったのは、単にドラマーがポートノイからマンジーニに替わったから、だけではなさそうだ。
というのも、前作「A Dramatic Turn of Events」は、ほとんどの楽曲をペトルッチ、ルーデス、マイアングで制作している(一部ラブリエも参加)。
2009年リリースの「Black Clouds & Silver Linings」に関しては、“Wither”を除き、全楽曲において上記のメンバーに加え、マイク・ポートノイの名も連なっていた。
さらにその前作「Systematic Chaos」は、ジョン・ペトルッチ&マイク・ポートノイによる共同プロデュースによって、バンド史上最高のチャートを記録した。
事実、“Forsaken”や“The Dark Eternal Night”等、彼らの代表的ともいえる楽曲を生み出したのもこの「Systematic Chaos」である。
当然、前作「A Dramatic Turn of Events」はファンの評価が高く、楽曲の完成度も申し分なく高い水準のものであった。
しかし、私の耳にはどうも馴染まない、という印象を抱かずにはいられなかった。
そのため、私は前作をYoutubeで視聴したに止まり、アルバム全体を購入する気にはなれなかったのである。
視聴した際に私が感じた違和感。
それは「単調さ」と「バンド自身の違和感」だったと思う。
前者に関して言えば、いつもの彼ららしくない、意表をついた展開を控えた曲調に感じられてしまったのである。
それに輪をかけるように、新加入のマイク・マンジーニのパフォーマンスが、「主張しすぎない優等生的」なドラミングであったことが、私の興奮を冷ましてしまった(そこには当然、ポートノイ脱退に落胆する私の個人的感情が大いに影響を与えていた事は否定しない)。
後者の、「バンド自身の違和感」というのは、マイク・ポートノイ脱退がバンドにもたらした「後遺症」とも言えるだろう。
常に楽曲制作に関わってきたマイク・ポートノイがいなくなってしまったこと、ドラマーを新たに迎える事のプレッシャー、(恐らく)初めてとなるペトルッチ、ルーデス、マイアング3名によるアルバムプロデュース、そしてマンジーニの試運転的なパフォーマンス。
誤解を招いたかもしれないが、私はマンジーニのドラムセンスは高く評価しているし、過去に見た彼のソロの映像は私の胸を熱くさせたのを今でも克明に覚えている。
ただ、Dream Theaterという確立され過ぎている程のアイデンティティを前に、従来のファンの反応を窺う間もなくアルバムリリースへと移行し、マンジーニにとって怒涛のスケジューリングであったに違いない。
そのような状況のなかで、彼本来の本領を発揮しつつポートノイの穴を埋め、更には世界中のファンを納得・魅了させるというのは、さすがの彼にも困難を極めたであろう。
それゆえの、試運転。
ならば仕方ないと言ってしまえばそれまでだが、ある程度謙虚にならざるを得ない状況であったことは、容易に想像がつくのである。
話が逸れてしまったが、彼ら自身の違和感は、今まで当たり前にあったポートノイの「音」を失い、それでも尚Dream Theaterとしてのアイデンティティを強固にするための、様々な葛藤そのものだと思う。
その葛藤や不安が、視聴した私の耳には強く感じられてしまい、当時そのアルバムを受け入れる事ができなかったというわけである。
そんな中、1年以上にも及ぶワールドツアーから帰った彼らが、3ヵ月後の9月18日に新作アルバムを日本先行リリースする事が決まった。
タイトルを見て私は確信した。
彼らは自身が感じている葛藤やプレッシャーをバネにし、今の彼らだからこそ出来る「音」を追求することに集中しているに違いない。
新作のアルバムは、「DREAM THEATER」。
彼らがこれまで冠する事のなかったバンド名を、オリジナルアルバムのタイトルに掲げたのである。
改めてDream Theaterとしてのアイデンティティを問われている今だからこそ、このタイトルを掲げ、ファンに伝えたいのだろう。
昔の彼らも、今の彼らも、そして未来永劫彼らは永久にDREAM THEATERなのだと。
私は正直このタイトルを知ったとき、期待する反面、一抹の不安を覚えた。
あえてバンド名をアルバムタイトルにするということは、「今こうなってしまった僕らが、今のドリーム・シアターなのだから、受け入れなさい」と、ある種高圧的な印象を受けてしまったからである。
「ドリーム・シアターは変わってしまうのか…」そう感じずにはいられなかった。
しかし、ジョン・ペトルッチの、「新作は、壮大な
作品に仕上がっているよ」との力強いコメントを聞き、私は期待をしながら新作のリリースを待つ事にした。
様々な環境の変化を経験した彼ら。
ポートノイ脱退宣言から3年が経過する2013年9月、彼らの創り出す音を今一度噛みしめてみたい。
お前、誰や?
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