【新ジャンル】老人と少年【小話】
あるところに少年がいた
少年はみすぼらしく汚れた服を身にまとい
磨り減った靴を愛用していた
久しく食事はしていないのであろう、観光客が道に落とした食べ物を追いかけるように口に入れている
少年が一歩進むたびに、その磨り減った靴は力なく少年についていくだけであった
観光客や町の人びとは彼を避けながら歩いていた
そのときある老人が声をかけた
老人は隣町から仕事を探しに訪れていた
彼もまた傷んだ服を身につけ、靴底はほとんどなくなりかけていた
手に握る杖はごみ置き場から見つけたものであり、ややもすれば折れそうである
少年の姿を見た彼はとても居た堪れない気持ちになった
「やぁ少年よ、私は君を見ていると、若き日の自分を見ているような気分になるよ」
少年は観光客の食べ残しを探す目を休ませずに答えた
「そうですか?私はあなたを見ても、老いた日の自分を見ているような気分にはならないのです」
少年の食べ物を探す目は、その先を見ていた