友達がお店をはじめた。
ずーっとお世話になってた人だし、いいときも悪いときもよく知っている。
やりたい仕事ができなくなってからは飲んだくれたり、ガバガバ飲むような仕事をはじめて、顔もただれていって。
心配もしたし呆れもして、いつの間にか離れていた。
働いていたお店でカモられて、いつからかお金を払わないと会えないお客さんにされちゃってたからだ。
お店を出す報告は受けていたけれど、なかなか踏ん切りがつかずやっとお祝いにいってきた。
彼女が得意な料理が手書きのマジックで書かれている店。
どれも食べたことのあるメニュー。
いつも後輩や友達を家に呼んでは自慢の料理を作っていた彼女らしい。
定食を頼んだらとん汁の量が多くて、もうお酒もおつまみも食べられない。
利益度外視のサービス精神にお店の経営は大丈夫か?って心配になるけどそんなことはちっとも気にならず、満足しておいしいと誰かに言ってもらえばゴキゲンなのだ。
いつか食べ物やさんがやりたいんだー。
なんて言ってたのは、もう何年前だろう。
あまり働くのが得意じゃない彼女は、少し働いてはパチンコやスロットに通い、一日中働く私の日給以上を稼いだりして、私の勤労意欲を添いだものだ。
歳は離れているが、誰にでもタメ口の彼女は馴染みやすく、あまり細かく気を回さないことでヒヤヒヤするような行動も人柄でどうにかしていた。
頼まれれば嫌とは言えない性格で、いつも困り果てた人の相談を受けては面倒に巻き込まれていた。
「ストレスというものがどんなものなのか教えて。」と真顔で言う彼女だったけれど、ここ2年くらいはそんな彼女ですら悩みの多い日々だったと思う。
こうして立派に自分のお店で料理をする彼女をみると、ちょっと涙がでちゃうくらいうれしい。
散々お世話になったのに何ひとつ手伝ってあげられなかったことを申し訳なくも思う。
店を出てからも真新しい看板に心でおめでとうを言って、がらにもなく涙ぐんでしまった。
ぐーたらでサボり症の彼女がやっと手にいれたお店に幸あれ!