お土産にもらった小さめの苺タルトを手にもってかぶりついた。タルトの土台部分が思ったよりも硬くて力を入れたらバラバラに砕けた。パラパラとこぼれるし手はべとべとになるし、ガッカリするし。
その顛末を記録しようとメモ帳に書き留めていたところなかなかうまく書けない。何度も書き直して「苺タルト」と繰り返し書いているうちに「苺」という字が苺に見えなくなり、「タルト」がなにか別のもののような感じがしてきた。これが『ゲシュタルト崩壊』なのか~と思った。
が、そうではない、これは『苺タルト崩壊』だ。と思ったとたん正気に返って「苺タルト」という文字が「苺タルト」に見えるようになったというしょーもない話。
ちなみにロラン地方では秋になるとゲシュの実が濃い紫色に熟れて甘い香りが庭に漂うそうだ。ゲシュ草はノワリナ科の多年草で、ロラン地方では庭や道端に普通に自生するので、季節になるとゲシュの実を使った料理が食卓を飾る。ジビエには甘いゲシュのソースを合わせるのが伝統料理ということだが、近年は地元の人にもあまり人気がないらしい。
実を収穫してから一日軽く日にあてて甘みを増してから料理に使われる。細かい毛のようなものが見えるが口には触らないのでそのまま食べても問題ない。砂糖で煮てジャムにしたり、フレッシュなジュースにして飲んだりもする。
家庭では庭で摘んだゲシュの実でタルトが作られることが多い。畑の収穫が終わった後、料理を持ち寄って庭でパーティを開く。よく晴れた秋の空の下で食事をし、お茶を楽しむ。そのときに出されるのがゲシュの実を使ったタルトで、一年の実りを感謝しつつ甘いお菓子を楽しむのが伝統的なスタイルだという。
これがつまりゲシュタルトで、食べるときに崩れると縁起が悪い、来年の収穫に支障が出るということで、食べやすいサイズで崩れないような固さで作るのが主婦の腕ということになっている。
このように『ゲシュタルト崩壊』とはもともと来年の収穫が悪くなる縁起の悪い出来事という意味である。これをもとに学者たちがこじつけや余分な意味を付け加えて、現在使われている『ゲシュタルト崩壊』という言葉の意味が生まれたと言われている。
もちろん嘘だけど。