国立医療センターに到着後、出てきた先生は
「移植外科」
の先生だった。
救急車で到着したらとりあえずは、総合診療部とか救急センターの先生が出てきてくれるものと思っていた。
いきなり移植外科が出てきたことの意味…
なんとなく予想できた。
優しそうな男性2名、若い先生と中年の先生に招かれて、小さな打ち合わせ室に入る。
最初に言われたことは、小児医療センターとあまり変わらなかった。
「MRIなどの画像を見させて頂いて、シンくんの肝臓は今ほとんど機能していません。門脈の血液が逆流して、肝臓全体もかなり大きく膨れ上がっています。いつ大出血して命に関わる事態になるかわからない、かなり危険な状態です」
そこまではわかっていた。だけどそれで終わってしまうなら、国立医療センターに来た意味はない。
「いろいろと治療の可能性を考えましたが、どれもかなり難しい。そこで今私たちが考えているのは、肝臓移植という選択肢です」
なんとなく予想していた。いきなり移植外科の先生が出てきた意味。それは、事前にいろんな科の先生達が検討してくれた結果、
「移植以外にはもう選択肢がない」
という結論になったということだろうと…。
『移植、是非やってください。私の肝臓で良かったら、半分でも全部でもあげます。私は死んでもいい、どうか息子を助けてください…』
そう言ったつもりだった、でも、涙も鼻水も、拭っても拭ってもキリがないくらい溢れてくる。
声が震えて詰まる。
うまく話せているだろうか?
「お母さんのお気持ちはわかります。しかし、移植はそんなに簡単に決められるものではなく、超えるべきたくさんのステップがあります。
移植は、他に本当に治療法がなくなった時の、最後の手段です。」
そして、
「子どもの肝移植ハンドブック」
という冊子を手渡され、
肝臓移植について
生体肝移植について
脳死肝移植について
ドナーの条件
レシピエントの条件
ドナー、レシピエント双方のリスク
などについて、細かく教えてもらった…
私は出産して3ヶ月だから、肝臓に脂肪がついていて、ドナーに適さない可能性もあるらしい。
しかし、夫は元々健康診断の数値は悪く、中性脂肪・コレステロール・尿酸値が高く脂肪肝気味という典型的な不健康中年
かたや私は、出産直後というハンデはあるものの、ものすごく酒に強く、というか酒びたりで
妊娠前は、ハタチそこそこから週に6日は飲んでいた
それでも、健康診断や献血の度に測る血液検査の結果、肝機能が悪かったことは一度もない。
きっと私の肝臓はスーパー丈夫なはず!!!
何より、家族がこれ以上大変な目にあうのは耐えられない。
自分が痛い思いをする方が100倍マシだ。
ドナーになるなら私しかいない。
先生があれこれ説明してくれる最中にも、私はもうその事で頭がいっぱいだった。
いつ急変するかわからない息子…
一刻も早く生体肝移植を!!
それしか考えられなかった。