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あぁそうか、近年のバラード歌唱のアップデートを語る時に
・2024年ツアーでの『誰かの願いが叶うころ』
・2025年THE F1RST TAKEでの『First Love』
・2026年CDTVでの『Flavor of Life - Ballad Version -』
の3つを挙げるならそれに
・2024年の『光(Re-Recording)』と『Simple And Clean (Re-Recording)』
の2つも加えておかないといけないか。元曲がバラードでなかったもんだから失念していたわ。寧ろ、元曲がバラードでないからこそ近年のヒカルの「バラード観」がよりわかりやすく出ているとも言えるかもしれない珠玉のトラックたちだわね。
特に『Sinmple And Clean(Re-Recording)』に関しては、『光(Re-Recording)』がアルバム『SCIENCE FICTION』に収録されてる一方で配信での単曲リリースなのでフィジカルも存在しないしね。ここまでのクォリティのトラックが忘れ去られかねない現状は大変遺憾であるのよさ。
特にアルバム『BADモード』より後はこういったEPや単曲でのリリースによる音源が多く、これどれくらいリスナーに届いているのだろうかと不安になってくる。サブスク1億回再生の『君に夢中』に『Rule(君に夢中)[Live 2023]』という多国籍語版別バージョンがあることは知られているだろうか? サブスクで『Gold 〜また逢う日まで〜』を検索しても単曲配信かSFアルバム収録版ばかりがヒットしてEP版が見当たらないんだけど大丈夫か?(自分の分に関してはライブラリから行くので問題ないんだけどね。つまり、音源が消えてしまってるのではないということ)とか、サブスクの検索の一覧性や網羅性の薄弱さに触れると、どうにも懸念が消えない。
宇多田ヒカルの場合、ちゃんと公式が各サブスクに『Hikaru Utada Complete Collection』というプレイリストをアップしてくれてるので、新しく興味を持ってくれたリスナーはこちらにアクセスしてくれればいいから安心…って言ってみようもしたハナっから『Gold 〜また逢う日まで〜』のEPが見当たらないではないかっ!(笑) うわこれじゃコンプリートではないなぁ。せめて公式からリリースされてサブスク解禁されてる音源に関しては網羅してくれないとね。なお自分の場合コンプ・プレイリストにはiCloudミュージックライブラリを駆使してCDのみアナログのみ音源も入れてあるので大丈夫なのは既述の通り。(えっへん)
てことで、「埋もれてるヒカルの名曲をアクセスしやすいようにする」ための提案を色々考えてたのだけど、何よりもまずこの公式プレイリストの充実が先だわね。重複を気にせず全音源を時系列順に並べるだけじゃダメなのかしら? これ、あたまから順番に聴いていく人は勉強の為だから重複気にしないし、普段使いの人は大抵シャッフルだろうからこれまた重複してもそこまで問題ない(気になるならスキップすればいいだけ)と思うんだけど、如何なもんでしょーかね??
さて、もし仮に『パッパパラダイス feat. 甲本ヒロト』が甲本ヒロト作詞のパートを含むとすると、これはなかなかに珍しいケースになる。というのも、ヒカルの場合、自分がゲストとしてお邪魔する際に自分が歌うパートを作詞する事はあるのだけど(「Lonely One」とか「T」とか「Home」とか)、誰かをゲストとして迎える場合にそのゲストさんに作詞させたのは『Blow My Whistle feat. Foxy Brown』と『忘却 feat. KOHH』と『Too Proud feat. Jevon』の3曲しかなく(た、たぶんね…)、それらはご覧の通りいずれもラップ部分なのだ。
曲の中にゲストを迎えてラップを披露して貰うというのは「曲中曲」みたいなもので、そこだけ独立していると捉えられる。つまり、デュエットなんかで2人で一緒に歌うというよりは、どちらかといえばギタリストを迎えてギターソロを弾いて貰う方が近い。であるからこそ、ゲストを迎えずにライブで『Too Proud』をパフォーマンスする際には、ヒカルはJevonのラップをなぞるような事は一切せず、いちから日本語でラップ部分を作詞し直して披露した。それくらいにラップってのはパフォーマーのパーソナリティに深く結びついているので、ヒカルは自分の作詞作曲した曲の中であってもラップ部分ならゲストさんに任せる。しかし歌となるとどうなるか?
今回、流石にヒロトはラップを披露する事はないと思う。音程のない歌い方をする事はあるかもしれないけれど、しかし、基本的にはメロディのある歌を歌ってくれてるんじゃないかと思われる。となると、そのメロディはどちらが作曲したものになるのか? そこが注目点になるわけだ。
この、「宇多田ヒカルが主に作曲した楽曲に誰か他人のメロディが入り込む」という事態が、もし実現するならそれは極めて珍しい。『甘いワナ〜Paint It, Blackでザ・ローリング・ストーンズを、『Never Let Go』でスティングを引用したような例を除いては。主従が逆のパターンならTHE BACK HORNの「あなたが待ってる」なんかがあるのだけどね。山田将司と歌った『One Night Magic』も椎名林檎と歌った『二時間だけのバカンス』も、どちらも作詞作曲は宇多田ヒカル単独であり、2人ともヒカルの用意した歌を歌った形となっていた。ヒカルはラップではなく歌となるとゲストさんにも作詞作曲させないできたのだ。ここをヒロトが初めて!?突き崩してきたのだろうか。
Apple Musicの『パッパパラダイス - Single』の曲目を見ると現在、
① パッパパラダイス(feat. 甲本ヒロト)
② パッパパラダイス
③ パッパパラダイス(instrumental)
という風になっている。アナログ盤でA面になるのみならず、配信でもリーダートラックとなるのにそれが単なる「歌い分けただけのカラオケ」になっているなんてことがあるだろうか? 何か一捻り二捻り仕掛けてきているんじゃないか? 何より、発表から3週間以上空けているのが気にかかる。発売日までに予約を取り付けるには遅いし(生産が間に合わない)、インパクトを出す為には時間が空き過ぎる。やはり2人にとってかなりの自信作になっているとみるのが妥当なのではないか。こうやってリスナーとファンがあれやこれやと期待に胸を膨らませる時間があってもそれを全部受け止められるような、ね。ほんに聴けるのが楽しみやわ。
しかし、これで宇多田ヒカルの次なるオリジナル・スタジオ・フル・アルバムの選曲はますます混迷を極める(!?)事になりそうだ。
前も述べた通り、『パッパパラダイス』を収録するんなら歌詞のテーマの一貫性を鑑みてもチャーリー・プースとの『Home』は一緒に並べて欲しい所だし、『Mine or Yours』は言わずもがなだ。そこに、この『パッパパラダイス feat. 甲本ヒロト』の存在である。これ、ヒカルが1人で歌ってるバージョンとどっちを収録すればいいの!?
この件でまず参考になるのは『HEART STATION』アルバムだ。同盤最大のヒット曲『Flavor of Life - Ballad Version -』は、その名の通りオリジナルが先にあっての別バージョンなのでCDシングル盤でも2曲目収録でカップリング扱いだったのだが、アルバムに収録される際には堂々の4曲目で、オリジナルの方はボーナス・トラック扱いとしてアルバムの最後に置かれる事になった。
これを参考にするなら、『パッパパラダイス』に関しても“売れた方”がアルバム本編入りになる、みたいな予想をする事も出来る。要は今後のリスナーの反応次第なのだた。
アルバム『BADモード』も参考になるかな。『Face My Fears』はJapanese Versionが本編9曲目に収録され、English VersionとA. G. Cook Remixはボーナス・トラックとして13曲目と14曲目に収録された。YouTubeの再生回数をみるとJapanese Versionが2600万回再生で全バージョン中最も多い。もっともこれは、発表のタイミングやスクリレックスのチャンネルにあるとかの要素も強いので参考記録ではあるけれど。
その『BADモード』アルバムは、他にも『Find Love』は日本語バージョン『キレイな人(Find Love)』の方がボーナス・トラック扱いになっていて『Face My Fears』とは逆だったり、『Beautiful World (Da Capo Version)』も収録されてたりしていて本編10曲に対してボーナス4曲となかなかカオスな状況になっていた。それも鑑みると、最早アルバム本編とボーナスというよりは前編後編とか第1部第2部という趣すらある。
まぁつまり、『パッパパラダイス』は両方収録されるんじゃないのってことなのだが、同じソニーのアーティストである米津玄師との『JANE DOE』は兎も角、ワーナー所属のチャーリーとの『Home』はおいそれとは収録しにくく(無理ではない)、それならば例えばヒカルがひとりで歌うバージョンを新しく録音して収録するなんて手もある、かな。ヒカルも作詞に参加してるんだから…というならなりくんとの「Lonely One』やThe Back Hornとの「あなたを待ってる」はどうなんだとかなってくるからややこしいんだよね…。
ともあれ、このまま行くと次のオリジナル・スタジオ・フル・アルバムは、本編だボーナストラックだと区別するのも面倒な更なるカオスになる可能性が高い。最早いっそ今までのコラボソングを集めて「宇多田ヒカル歴代コラボ・アルバム」でも作っちゃう!?(笑)
『パッパパラダイス』はまずちびまる子ちゃんのエンディング・テーマとして世に出、次に綾鷹の新しいCMソングとなり、更には甲本ヒロトとのコラボソングにまで相成った。宇多田ヒカルの楽曲でここまで多面的な見方をする事になった曲も珍しい。
しかしそれでもやっぱり、いや、だからこそと言うべきか、歌詞にはヒカルさんならではの言葉が沢山詰まっている。アニメのエンディングを意識した1番の歌詞に比べて2番の歌詞はまさにヒカルさんが言いたい事、こどもたちに伝えたい事が歌われている。
例えば最初の
『皆に好かれよう としないでいいんだよ』
の一節は『Deep River』の
『全てを受け入れるなんてしなくていいよ』
『どこでも受け入れられようとしないでいいよ』
といった歌詞を思い起こさせる。19歳で歌われた頃はどこか自分に言い聞かせている風だったが、43歳の今は豊富な人生経験に裏打ちされてしみじみと「ほんとそうなんだよ」とこどもたちに対して呟いてるような雰囲気だ。次に
『人気者には人気者の苦労や寂しさもあるんだ』
って歌われた時には、ヒカルさんも随分率直に言うようになったねぇと溜息を吐きかけたのだがほんの僅かの間を置いて
『ってよ』
と付け足された時には笑ったね。そこで伝聞の体にするんか!(笑) いやまぁ自分の事なんでしょって聴いてる皆は思うんだけど敢えてそこをはぐらかしてきたと。まぁ、とはいえ「自分だとは断定はしない」程度かな。余談だけどこの『ってよ』は是非ヒロトに歌ってみて欲しいわねぇ。
更に『小さな体に大きな瞳』は我が子への眼差しなのか、はたまた若い頃の(今でもだけど!)自分の事なのか。『ぬいぐるみのバースデイパーティ』って、Kuma Changの事ならあんたの誕生日と同じ日だよね?とツッコミを入れたくなるな。やっぱこの2番の歌詞は自分の事ばかり歌ってる?? これまた余談だけど、ぬいぐるみのパーティと聴いて、『Goodbye Happiness』のMVのパペット祭りが頭に浮かんだ。やっぱり姉妹曲だわあんたら。
そいで2番が終わったらやがて
『押しては引く波の音』
が出てくるよね。「寄せては引く」ではないので、これは河岸や海岸じゃあないんだろうな。どちらかというと船出して船上で波と戦ってるというか。いずれにせよ「海」「大海原の真ん中」のイメージだね。そういえば上述の『Deep River』にも
『やがてみんな海にたどり着き』
『潮風に向かい鳥たちが今飛び立った』
といった海と関連づけられた歌詞があったな。鳥なんで昼間に飛び立つ方向が潮風が向かい風になんで陸から海に向かってってことになるか。いやそれは別にいいんだけど、非常に壮大な感情を込められた歌だというのは共通してるね。全人類に向けて歌っているというか。
…という風に、過去曲を連想させながらも今の43歳のヒカルの視点から率直に素直に綴られた歌詞が幾つもみられるのが『パッパパラダイス』なのでした。ここにどうヒロトが絡んでくるのか、歌手としても、詩人としても、見ものだな!
季節外れの台風6号の影響が吹き荒れる中、皆様如何お過ごしでしょうか。(たまには日記っぽいことを書く)
前回の内容は、もともと取り上げるつもりだったネタに甲本ヒロト情報を捩じ込んで書いた為、少しわかりにくかったかな。要は、『パッパパラダイス』はドゥーワップ・コーラスを取っ掛かりにして、同時代に流行った50年代ロックンロール・サウンドや、それらから影響を受けた60年代の音作りを盛り込んでいるので、楽曲全体が半世紀くらい前の英米のポピュラー・ミュージックの歴史を振り返っているかのような構成になっていて、そこにこの時代の音が好きな甲本ヒロトが飛び込んでくるんだからそりゃ楽しい事になってるだろうな!…ってな話だったのさ。
ヒカルがCDTVでパッパラを歌った時に「バックのコーラスは50年代なのにあんたのアドリブ90年代」みたいなツッコミを入れた気がするが、ヒカルとしては別に自身の趣味嗜好が変わったとかではないだろう。今でもアリーヤをはじめとしたあの頃のシンガーの影響は大きい…という話は26年前の昨日今日明日に放送された「トレビアン・ボヘミアン」のアリーヤゲスト回を参照して貰えればわかりやすいかな。
https://x.com/hikkicom/status/2061928342580765169
まぁそれはそれとして。この、普段のヒカルの趣味嗜好と『パッパパラダイス』のレトロなサウンドとの距離感は、そのまんま今回の歌詞のテーマである「自由」と普段の歌詞世界観との距離感に符合している。この曲の為にApple Musicの「Doo Wop Essentials」のプレイ・リストをチェックしたヒカルはまずその歌い方の自由さに驚いてたよね。
それは同時代のロックンロールにも言える事でね。例えばリトル・リチャードの実質的デビュー曲「トゥッティ・フルッティ」を聴くたびに私も「あんちゃんホンマに自由やな〜」としみじみ思う。音程云々やら歌詞の侘び寂びやらを吹っ飛ばして好き勝手に叫び歌うスタイルは、なるほど甲本ヒロトのルーツの一つになってるだろうなと容易に想像がつく。彼からそんな話聞いた事ないけどね。まじで私の勝手な想像。
そういう、普段の宇多田ヒカルからは距離のあるテーマとサウンドがまずありきの甲本ヒロトとのコラボレーションだってのを踏まえれば、この一見異色に見える組み合わせも非常に必然性の高いものだという事実がみえてくる。それが実際の音にどう反映されているのか、一刻も早く聴きたくて仕方がないですよ。とはいえリーク音源なんて出てきても一切聴きませんけどね! ちゃんと公式の望む解禁日に触れて、遠慮なく驚きたいと思います。
しかしこうなってくると、宇多田公式が「いつ何を発表するか」に関してどこまで練ってきているかが気になってくるね。
自分は『パッパパラダイス』のアナログ盤が発売されるというので、てっきりそのB面が注目になるものだと考えて、インスト・バージョンがくるかなアカペラ・ミックスがくるかなと期待を胸に抱いて予想してきてたのだけも、なんとサプライズがA面の方だったとはね! こんなに心地好く欺かれた事も大変珍しい! 余りにナイスな演出だった!
今後、『パッパパラダイス feat. 甲本ヒロト』の音源やMVをどういう順番でどのように明かしていくかも楽しみにさせて貰いたくなってくる。発売まで3週間余りのタイミングでのフィーチャード・アーティストの公開。楽曲が既知。こうなってくると、ただ既存のヴォーカルを2人で分け合うだけだと、現時点で色々と想像できてしまうのだけど果たして実際のトラックはどうなっている事やら?? 勿論、楽曲の素晴らしさ故シンプルな“カバー・バージョン”でも十分嬉しいけどね??
過去にヒカルが、自分1人で歌った歌を後々に2人以上で歌い直したケースはあっただろうか。それに関しては、非常に興味深いケースは存在する。2018年発表の『Too Proud』だ。
オリジナルの『Too Proud』は“(feat. Jevon)”だった。日本語主体のヒカルの歌と、Jevonの英語ラップの組み合わせ。これがリミックスの『Too Proud (L1 Remix)』となると、Suboi, EK & XZTの3人による多国籍語のラップをフィーチャーすることになる。一方、ライブになるとヒカルが1人で歌うことになり、ラップ・パートは新しく日本語に改変された。ビートたけしのやつね。2人で歌ったものがリミックスでは4人で歌うことになり、ライブでは1人で歌ったのだ『Too Proud』は。
このプロセスを思い返すと、今回の“feat. 甲本ヒロト”は、オリジナルの『パッパパラダイス』をヒロトとヒカルが歌い分けるというよりは、新しく歌詞を書き下ろしてヒロトがそのパートを歌う、というカタチに落ち着いている気はする。ただ、今回はリミックスを謳ってはいないので、バックの演奏はそのままなのかもしれない。ここらへんは今後発売までに楽曲表記が変わるかどうかでわかっていくかな。
もうひとつ、「ヒカルが、自分1人で歌った歌を後々に2人以上で歌い直したケース」に近いものに『Mine or Yours (Yaeji Remix)』がある。これはYaeji名義のリミックスなので制作の主導権の違いはあるかもしれないが、「ヒカルが歌っていた既存のメロディをYaejiが歌い直す」+「新たなメロディをYaejiが歌って付け足す」という今までにはなかなか無かったリミックスのスタイルを見せてくれた。今回の『パッパパラダイス feat. 甲本ヒロト』がこれに近い形式になっている可能性もあるわね。
いずれにせよ、少し控えめにではあるものの、この“feat. 甲本ヒロト”は宇多田ヒカルにとっての「前代未聞」なケースになっていそうな予感はある。だってねぇ、あのヒロトを起用しといてただのカラオケに留まるなんてこと、ありそうにないでしょ! …ああでも、あの人が歌ってくれたらただのカラオケでも随分聴き応えありそうだけどね⭐︎
ドゥーワップのロックンロールとの親和性は、例えば後世のパンクとゴシック/ニューウェイヴの関係性なんかにも近い。一聴すると音楽的には遠そうだけど、同時代性とか人間関係とかそういうのを確認すると見えてくるものがあったりね。
そういうのは省略して耳で確認できる一例を挙げると、例えば『パッパパラダイス』の1:17〜辺り。
『皆に好かれようとしないでいいんだよ』
のパート、右側のピアノがエイトビートでコードを刻んでいるが、ここらへんの奏法はロックンロールにもドゥーワップにも共通のものだ。1950年代、初期のロックンロールってファッツ・ドミノやリトル・リチャードのようにピアノメインのサウンドも結構あったのよ。
更にその後、1:33〜の『小さな身体に大きな瞳』辺りの4拍子のリズムはハモンドオルガンによるもので(音が小さくて確信は持てないのだけど)、この辺りは60年代ロックの風味を醸し出している。
そして何より、2:46で一瞬だけ出てくるエレキ・ギターの音色よね! 日本人からすると「グループサウンズっぽい」とか「ベンチャーズ?」とかの感想になるかと思われる1960年代風のサウンドは『パッパパラダイス』の中ではただこの一箇所のみに登場する。贅沢。テレビではどうするんだろう?と思ってたけど誰も弾く真似してなかっね。潔い。この音色からこの曲のハイライト『沈みたくない太陽』のパートへと遷移するのだからかなり重要な役割で今からライブが心配ではある。この為だけにギター持ち替えないといけないからね。ここでリアルなロックの歴史の果てしなさと暮れなずむ夕陽の壮大さがシンクロするアレンジ、わたくし大層気に入っておりますですよ。(体操着に入っておりますと誤変換されて笑った)
まぁ兎に角、そういった小技の連発を拘り混じりに次々と繰り出す『パッパパラダイス』は、ドゥーワップを取っ掛かりにしてロックンロールの歴史を振り返ってるかのような構成になっているので、昔のロック大好き人間である甲本ヒロトはめっちゃノリノリでこの曲に取り組んでくれただろうなと推測します。そういう意味では、このコラボレーションは奇を衒ったり話題性を重視したりといった動機ではなく、純粋に、シンプルに音楽的相性を理由に立ち上がったものだと言い切れるわけでありますな。
…ってこんだけ書いといて大胆にパンク・アレンジしたパッパパラダイスが激走してたらどうしよう…(笑)。パンクな曲調ってヒカルさんも好きだからね。ライブでプラシーボのカバーを歌ったことあるくらいだし。それに、どんな曲でもパンク化ってできるからな。海援隊の「贈る言葉」ですらパンクになって大ヒットしたわけで。随分昔の話だけど。
ほいでこれ音源解禁はいつになるのやら? ショートバージョンが先行公開されたりしないの? ちょっとでも聴かせてほしいものでありますっ。
甲本ヒロトの居たザ・ブルーハーツは、この日記で何度も繰り返してきた通り、日本語パンクの定義を完全に書き換えたバンドだ。売上枚数や公演規模などをWikipediaで見てもなかなかピンと来ないだろうが、彼らの登場以前以後で、パンクにどう日本語を載せるかの方法論が激変した。元々英語圏の音楽をどうやって日本語化するかはあらゆるジャンルの邦楽にとって課題なのだが、ことパンク・ロックに関しては彼らがひとつの突出した「答え」を示してみせたのだ。今や若い層は彼らからの影響だなんて自覚のないままに彼らの手法を下敷きにしてる子たちが沢山居るんだろうな…。
西洋音楽の日本語化について、この日記でもうひとつ繰り返してきたのは「西洋音楽に日本語の歌詞を載せていくと、ロックもポップスもソウルもラップも何もかもがやがてフォーク化する」という話。GLAYなんかが典型例だが、単純に日本語の持つ音韻のリズムにいちばん近い様式を持つのがフォーク・ミュージックなだけですね。極めていくと収斂進化がそこに行き着いちゃう。
…という理解だったかはさておき、2005年に英語歌詞のUTADAから日本語歌詞の宇多田ヒカルに活動を戻すに際してヒカルが聴いていたのがさだまさしだった件は未だに印象深い。しまいには「HEY!HEY!HEY!」で共演を果たしてしまったが、日本語の歌詞を久々に書くに当たってフォーク・ミュージシャンの代表格の一人である彼の作詞作法を参考にしたくなった気持ちはよくわかった。
さて。それらの事実を思い出すと、甲本ヒロトをフィーチャーするのに彼に作詞させないなんて事があり得るのか?というのがまず気にかかる。恐らく、ヒカルは英国由来のパンクロックに日本語歌詞を見事に載せた、載せ続けた作詞家・甲本ヒロトの能力を高く買っている筈。それを活かさないなんてことがあるかなぁ?
ニュースによると、今回のコラボレーションは宇多田ヒカル側からのオファーだったそうな。いつものパターンからいくと沖田英宣ディレクターが仕掛け人かと思いたくなる所だが(なりくんも千葉ちゃんも沖田さんが提案したからね)、こと『パッパパラダイス』に誰かゲストをとなった時に甲本ヒロトの名を出すとなるとヒカル本人だった可能性も捨て切れない。そもそも自分からゲストを呼ぼうって言いそうにないのが気に掛かるけど。
というのも、この『パッパパラダイス』、根っこに非常にロックンロールの影が濃いのだ。ていうか、ドゥーワップというジャンル/サウンド自体が1950年代にロックンロールの流行と同時期に勃興したものだからね。パッと聴きアカペラで声を重ねるドゥーワップとギタージャカジャカドラムドカドカのロックンロールのどこが似てるねん?となるけどこれが結構共通点多いのよ。まぁそこの話はまた今度にするとして。
となると、ヒカルは「ロックンロール・フレイバーを歌って貰えるとしたら誰か?」というアプローチから甲本ヒロトに行き着いたんではないかなと。故人でもいいなら多分忌野清志郎だったと思うんだけど、生きて現役で歌ってる中でならヒロトになるかな〜? 別にTHE BACK HORNの山田くんでもよかった気はするけど既に共演経験はあるしな。ヒロトなら多分、70年代バンクに留まらず、50年代アメリカのチャック・ベリーやリトル・リチャード、更にエルヴィス・プレスリー、60年代英国のローリング・ストーンズにキンクス、ザ・フーなんかにも精通してるだろう。たぶん。よく知らないけど彼のスタイルからしたらそこらへんの時代もしっかり知ってる気がするのさ。
てことで、『パッパパラダイス feat.甲本ヒロト』の最大の注目点は、甲本ヒロトが新たに作詞をしているかどうか、になるだろう。当然日本語で。なので、新しいパッパパラダイスは、例えば「英語部分をヒカルが歌って日本語部分をヒロトが歌う」みたいなバランスに再構成されてるんじゃないかな? ただ、『沈みたくない太陽』はそのままヒロトに歌ってて欲しいなーと幼少の頃ザ・ブルーハーツを楽しく聴いていた身としては思うのでしたとさ。どちらかというと真島昌利っぽいメロウさだけどねここ。さぁどうなっているのやら!?
怒涛の5月が終わった途端、6月の頭からこんなの青天の霹靂過ぎるだろ! ここはいつでも晴れの予報っつっても大波涛と稲妻雷鳴だらけだって!
てことで、昨日から今日未明にかけての流れをおさらいしとくか。
昨日2026年5月31日の日曜日、ちびまる子ちゃんの放送が終わった午後6時半に
PAPPAPARADISE&?? ???
という名のショート動画ポストが公式から各SNS(X、Instagram、YouTube)に投稿された。動画内容は、パッパパラダイスをバックにバイクに2人乗りするヒカルさんの笑顔。前の座席の人の顔は見えず背中のみ。当然、
「”?? ???”って誰やねん!」
「羨ましい! そこ代われ!」
という反応が出て、もしやこれは新しいコラボなのかと期待が高まった。なおパッパパラダイスにもうひとつ動画が存在することは、公式から(韓国のSpotifyでだっけ?)示唆されていたのでそれについては想定内。
そして早くも2026年6月1日月曜日、日付が変わった直後の午前0時過ぎにその「&?? ???」の部分が開陳されて、
「パッパパラダイス feat.甲本ヒロト」
という驚くべきコラボの正体が発表された。いや、これ僅か6時間の間に予想できた人居た? あたしゃ思いも寄らなかった!
しかし、甲本ヒロトであるなら「お前そこ代われ!」と言ってた人も「ヒロトならしゃあないか…」となりそうな、そんな強力且つ納得の人選である。
現クロマニヨンズのフロントマンであり、元ザ・ブルーハーツで元ザ・ハイロウズ。メジャーデビューから数えると40年間歌い続けてきた生ける伝説。彼なら確かに宇多田ヒカルを背に乗せてバイクを走らせてもサマになるか。なお撮影場所がKK線ならノーベルタンデムでも別に構わない。最早あそこは私道だものね。それを分かった上で敢えてツッコミを入れるもまたよしですが。皆さん真似しないでね的な。B&C歌った人だしな。
いやまぁ、なりくんみたいに無名でもその歌唱力で納得させてくれる例もあるのでコラボ相手の有名無名は実際はどうでもいいのだが、こうやって大々的にプロモーションするとなると一般リスナーは勿論、ラジオのDJさんとかサブスクのキュレーターさんとか、そういったメディアの方々のアテンションも稼ぐ必要があり、そういう点では話題性抜群だろう。
若い人にはピンと来ないかもしれないが、まぁブルーハーツの「リンダリンダ」とか鳴らせば「聴いたことある!」って子も多いかと思う。若い世代に沢山カバーされてるし、甲本ヒロト(こうもと・ひろと)の名前は知らなくとも音は耳にしたことがあるだろうから少し予習すれば問題なかろう。
って、だけどブルーハーツもハイロウズもクロマニヨンズもサブスクはおろかダウンロードすらやってないんだよね。それで問題なくやってけてるのは、私みたいなボンクラリスナーですら「なんだよ今度のクロマニヨンズの新曲いいじゃねーかよこれはCD買うしかねーな」とか思わされたことがあるくらい還暦を迎えて久しい現在でもそのエネルギーが衰えていない事への自信があるからだろうね。なのでサブスクで予習ってのは難しいんだけどYouTubeとかには色々あるからそちらでどーぞ。
てことで、今回この『パッパパラダイス feat.甲本ヒロト』はサブスクでも配信されるということだから、サブスクで甲本ヒロトの歌声を聴ける貴重な機会にもなるだろうね。いや、まだ普通に歌って参加してるかどうかわかんないけどな! 元々破天荒な人なので何してくるのかわからんよね。ハーモニカだけとか普通にあり得る。
しかし、「平成和製R&Bの代名詞」と「平成以降の和製パンクを定義づけた人」が令和の今デュエットするなんて夢にも思わんかったな。海外のミュージシャンでいえばシド・ヴィシャスとメアリーJ.ブライジが一緒にやるようなもんでしょ。「想像がつかない」ってなるけれど今回は曲が判明してるからね! 次回はそこらへんの話から、かな?