黒沢君

いやー、ひさしぶりの上の句、スペクターですか。いきなりやたらドデカイものでふってきましたね。
この気持ちわかります?大物中の大物、スペクターをふられたほうの僕の気持ちが? 
なにしろ師匠の大瀧詠一さんの十八番のジャンルですからね。

ポップス界の巨星、フィル・スペクターは前から奇行で有名。拳銃をいつも携帯していて、ジョン・レノンのアルバム「ロックン・ロール」制作中にスタジオでぶっ放したとかいう噂をきいたこともあります。これじゃまるで「天才バガボン」のおまわりさんだ。いくら才能があっても「これでいいのだ」と許すわけにはいかないでしょう。

フィル・スペクターのプロデュース作品というと、ロネッツやクリスタルズの名前を挙げる人が多いようですが、黒沢君の一番好きなスペクター作品はどれですか?
とてもむずかしい質問ですが、もし1曲だけスペクターの曲で好きなのを選べといわれたら、僕はまちがいなくライチャス・ブラザースの「You've Lost That Loving Feeling」を上げます。

その構成のすばらしさ、スケールの大きさ、そしてなんといっても詞がすばらしい。
消失して行く愛をクールに描写したシリアスな内容。1964年、まだまだ夢々ポップスが多い中にあって、いちだんと異彩を放っていました。
80年代になって、ホール&オーツがカバーしたというのも、その詞がロック目線の鑑賞に堪えうるものだったといういい証拠だと思います。

詞のことまでふれておいて今さらなんですが、今日はなんとその「You've Lost That Loving Feeling」のバッキング・トラックをYouTubeで見つけてしまいました。僕も初めて耳にしたもの。これが実にすばらしい。
ヴォーカルがないのに最後まで聴けてしまいます。
音からもストーリーが聞こえてきて心の深いところに響いてきます。スペクターおそるべし。





どこかビーチ・ボーイズのペット・サウンズにも似た佇まいですね。
ちなみに邦題は「ふられた気持ち」。おあとがよろしいようで。