以下が、私たちの見解と会社への質問、そして会社からの回答です。

<見解・質問>
I.    第3世代人事管理システムの導入について
3.    第3段落で「移行に際して月額給与が下がることがないように措置したので、第3世代人事管理システムの導入は合理的である。」について
①    第2世代人事管理システムにおいても、第3世代人事管理システムにおいても、基本給と等級給の合計金額が所定の労働時間に対する賃金ですが、第3世代人事管理システムではこの合計額が大幅に減額されました。つまり、所定の労働時間に対する賃金が大幅に減額されたのであり、これは明らかに不利益変更であります。
②    基本給だけを考えた場合でも、基本給は学歴、勤続、年齢などによって増加する(減額されない)給与であり、これを大幅に減額することは明らかに不利益変更であると考えます。
③    貴社は、第3世代HBにおいて『第2世代人事管理システムにおいては「等級給」に残業代が含まれていた(p6、1.2新システム総論)』と説明しています。それならば何故第3世代人事管理システムの導入に際して基本給を大幅に減額したのか説明して下さい。
④    「移行に際して月額給与が下がることがないように措置した」とのことですが、移行に際して、どのような考えで、どのように基本給および等級給の金額、みなし残業時間(年540時間)を決定したのか、その過程を具体例も含めて説明して下さい。また、みなし残業時間に関してはその時間数を決定する際に参考にした資料、その妥当性の根拠となるデータ(対象従業員の労働時間の実態がわかるもの)を提示し説明して下さい。

<会社からの回答>
1.3 第3世代人事管理システムが合理的であること
● 第2世代人事管理システムの賃金では、主幹(大卒12年目)以上の場合、基本給および等級給にみなし残業時間が含まれていた。第3世代人事管理システムの中で(P6 1.2(3) 活性感の得られる考課制度の導入)、等級給にのみ残業代を含むとの記述があるが、これは誤記であり、基本給も残業代を含んでいた。次回改訂時にこの誤記を訂正する。
●第2世代から第3世代への人事管理システム移行に際しての具体的な方法については平成23年8月30日付「企-11005」に示してある。
●540時間の根拠は、36協定(通常30時間/月が6ヶ月、繁忙期60時間/月が6ヶ月)となっていることである。
●第3世代人事管理システムでは以下の5項目を検討し、シミュレーションを行った。
(1) 標準モデルの計算での人件費総額を向こう5年間ほぼ横ばいとすること
(2) 賞与の占める割合を多くすること
(3) 若年層の年収をあげるとともに、シニア層の年収を抑えること
(4) シニア層は年次による昇給ではなく、等級アップによる昇給をめざすこと
(5) 残業代は既得権ではなく、予め見込まれる権利ではないこと
● 【年俸制の対象となる社員】36協定は、労働基準法36条に基づき、法定労働時間(1日8時間)を超えて延長できる労働時間の上限を労使間で締結したものであり、会社が命じる時間外労働時間数ではない。
● 【年俸制の対象となる社員】会社は、所定労働時間(1日7時間)外で法定労働時間内の1時間も残業として扱っているので、所定労働時間を8時間としている企業よりは、労働時間単価が高いといえる。
●【年俸制の対象となる社員】第2世代から第3世代への人事管理システムの変更は、成果主義の考え方に従って、基本給、等級給の比率を変更したものであり、月額給の減額とならないようにした。

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<私の見解>
 まず、「移行に際して月額給与が下がることがないように措置したので、第3世代人事管理システムの導入は合理的である。」という会社の主張に対して、それは「不利益変更じゃないですか。」とこちら側が言っています。しかし、会社として総合職従業員の労働条件に関して不利益変更をしたのかの否か、見解が全く示されていません。不利益変更で無いならば、合理的である必要はありません。また、「不利益変更であるが、従業員の同意を得た」と主張するのであれば、変更の合理性を主張する必要はありません。合理性を主張する必要があるのは、従業員の同意を得ることなく就業規則を変更して労働条件の不利益変更を行った場合です。一体、会社側がどの場合を主張しているのか理解できません。しかし、いずれにしても「名目が変わっても金額が減ってないから合理的である」とは、私は考えません。一体全体どういう理屈に合っているのかわかりません。皆さんはどうですか?
 
 人事管理システム(給与システム)を変更する際の説明で、従業員への説明で、故意であれ過失であれ重大な誤説明をしたのなら、気付いたときにすぐに訂正するのが社会人の常識ではないですか?次回改訂時に訂正するって、いつですか?何年後の話ですか?従業員に対する何たる不誠実な態度ですか。
 更に、誤説明をしておきながら、それを訂正もせずに、「黙示的同意を得ている」だけはしっかり主張するのは、全く納得できません。正しく説明し直して、同意を得る必要があるでしょう。
 更に、更に、就業規則を周知する立場にある管理本部長や企画管理部長(執行役員)が、こんなこと(みなし残業代が何に含まれていたか)を間違えるなんて、本当に周知したのか疑問ですね。従業員が知らなくても何ら不思議ではありません。


「企-11005」は当然読んでいます。それが具体的でないから、「具体例を示して下さい」と言っているのに、この回答は何なんですか。第2世代人事管理システムのときは、給与明細にも残業代が幾らか記載されていませんでした。また、給与規程では、基本給と等級給の合計額を基準にして時間外労働の基準単価を算出するとしている一方で、会社は基本給と等級給が既に残業代を含んでいたと主張しているので、全く理解できません。だから具体例として、例えば私の場合で、第2世代人事管理システムのとき残業代の金額、それが就業規則の何条の何項に基づくのか、また算出根拠や計算式を示し、その残業代が第3世代への移行の際に、幾ら分がどこに付け替えられたのか明確に説明して頂きたい、ということです。また、団交で伺います。

540時間の根拠は、従業員の労働時間に関する実態を全く把握することも考慮することも無く、単に36協定で締結できる上限の時間(厚労省の基準)ということですか。私は、従業員の労働時間を管理する責務を果たす意志も無いのに36協定を締結するのは、従業員を馬鹿にした全く不誠実な行為であり、単なる労基署対策として考えます。

シュミレーションの検討項目について
(1)について
今後5年間の人件費では、各社員の時間外労働時間およびそれに伴う残業代をどのように想定してシミュレーションしたのか、示して頂きたいですね。
(2)について
だからと言って、同意を得ることなく基本給を下げることは違法であると確信しています。
(3)について
同意を得ることなく、シニア層だけの年収を抑えるのは、所謂狙い撃ちで、裁判では争点になると思います。
(4)について
等級アップに関しては、シニア層の昇給抑止のための恣意的な考課がされないことが前提ですね。実態はどうでしょうか。
(5)について
残業代をキチンと払っている会社が言うことです。

所定労働時間と法定労働時間の1時間差を挙げて労働時間単価が高いと主張しております。しかし、単価が高くても、各社員の残業時間を適正に把握しなければ、残業代を支払うことはできません。