次に以下の質問・見解に対する会社の回答です。

<質問・見解>
2.「説明会の時およびその後の一定の期間反対がなかったので、第3世代人事管理システムは周知徹底されており、個々の従業員から承諾を得ている。」について。

① 周知徹底する必要があるのは就業規則であり、第3世代人事管理システムハンドブック(以降、第3世代HB)を説明しただけで周知徹底したとは考えられません。

② そもそも、第3世代人事管理システムの導入に際して就業規則(給与規定)は何故か変更されていません。従って、当組合は、『会社は全く周知をしていない』と考えています。貴社が「第3世代人事管理システムの導入に際して就業規則(給与規定)の変更は必要がない。」と考えている場合は、その根拠を示し説明して下さい。

③ 当組合は、貴社に要求書を提出した2012年5月8日時点でも、第3世代人事管理システム導入後1年も経過していないので、それについて異議を申し立てるのに遅かったとは考えていません。

④ 貴社は個々の従業員から同意書を取っていません。従って、「個々の従業員から承諾を得ている」と主張する根拠はありません。

<回答>
「1.2 第3世代人事管理システムの周知について

 第3世代人事管理システムは、就業規則から委託を受けて私法上の効力を有するものであると考えています。そして、第3世代人事管理システムは、対象者全員に書面を交付し、さらに説明会を適宜開催し、対象者139名中124名の出席者を得ていますので、実質な周知は十分になされたものと理解しています。
 また、書面交付及び説明会を実施した後、異議を表明した方はいませんでしたので、当社としては、変更内容に黙示的に同意いただいたものと考えています。

 なお、今後さらにわかりやすい就業規則・給与規程なるよう、必要に応じて改定等検討していきたいと考えています。」

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 以上が、 会社からの回答であり、各項目に対してではありませんでした。以下は会社の回答に関する私の見解です。

  まず「第3世代人事管理システムハンドブック(第3世代HB)は、就業規則から委任を受けて私法上の効力を有するものであると考えています。」のくだりですが、要するに、第3世代HBは、就業規則の一部であるということを言いたいのであると思われます。第3世代HBの中では、給料を規定しています。一方、労働基準法89条では、賃金(臨時の賃金を除く)の決定、計算方法、昇給等に関する事項を就業規則の絶対的必要記載事項として定めています。従って、第3世代HBが就業規則の一部でなければ、就業規則に絶対的必要記載事項を記載していないことになります。私たちは、以下の理由で、第3世代HBが就業規則の一部であるとは考えていません。

 就業規則第29条は給与規程を別規程としています。しかし、給与規程では、第10条(等級給)「等級給とは、別途定める人事管理システムに基づき特定の等級を付与された従業員・・・。」と、要するに『等級を定めるのに人事管理システムを用いる』と記載されているのみです。また、給与規程や第3世代HBが就業規則の一部と主張するのであれば、就業規則の本則と同様に、労働基準法90条に則って、各事業場において労働者の過半数代表者の意見を聞き(多数組合が無い場合)、所轄の労働基準監督署に届け出されていなければなりません。

 次に周知です。まず説明会についてですが、東京事業場では2011年7月11日に
第3世代人事管理システムの説明会がありました。そして、8月に第3世代人事管理システムが導入された後、10月に追加説明会(7月11日に欠席した社員の為)が開かれました。周知を徹底してから導入しなければならないにも拘わらず、導入後に追加説明会を開いたということは、順序が逆で「十分に周知することなく、第3世代人事管理システム導入した」いうことです。

 次は『黙示的な同意』です。これは経営者がよく主張することです。社長の味方をする法律事務所のHPを幾つか調べてみましたが、単に数か月間異議を述べなかったからといって黙示的な同意を得たという主張が認められるのは難しく、
特に給与削減のような重大な不利益変更の場合はハードルが高いようです。学説でも、黙示的な同意の認定には慎重な意見が多いです。(参考URL: http://pub.ne.jp/roumucouncil/?entry_id=3803190