以下に示す要求を会社側に提出しましたので、解説します。
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2、就業規則変更手続を伴う以下の事項の取扱いについて
(1)就業規則変更や労使協定締結の際は、各事業所単位で就業規則変更に伴う労働者代表選挙を実施し、過半数以上の支持を得た労働者代表と協議し、協定締結や意見書の添付を行なうこと。但し、労働条件に関わる事項については、当組合と十分協議し、その内容を検討し実施すること。
(2)以下の事項について、上記(1)項を早急に実施し、改善すること。
①36協定。
②労働基準法38条2項「事業場外みなし労働時間」に関する協定。
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1.就業規則の変更及び届出の手続き
   就業規則(給与規程を含む)の変更は、労働基準法に定められた手続きに則って行わなければ効力を発生しません。労働基準法90条が以下のように就業規則変更の手続きを規定しています。

労働基準法90条
使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。
○2  使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。


ここで「事業場」とありますが、これは「会社」をではなく、本社、支社、支店、営業所などの各職場を指します。所在地や業務内容で区別されます。三祐コンサルタンツの海外事業本部は、一つの事業場です。
   労働基準法90条で規定されているように、就業規則の変更は事業場毎に所轄の労働基準監督署に届出しなければなりません。つまり、海外事業本部の場合は豊島区を管轄する池袋労働基準監督署に届け出ることになります。また海外事業本部には「労働者の過半数で組織する労働組合(過半数組合)」がないので、「労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)」を民主的に選出して、その過半数代表者が意見を集約して意見書を作成し会社に提出することになります。ところが、会社は、第3世代人事管理システム導入に際して就業規則(給与規程)に月45時間(年540時間)の時間外労働手当を毎月定額で支払うこと、月45時間を超える時間外労働手当は別途支払うことを加筆変更する必要があるにも関わらず、全く行っておりません。海外事業本部に備え付けられている就業規則(給与規程)の最新版は平成22年4月1日版のままです。というよりも、海外事業本部で過半数代表者を選んだことがあるでしょうか?就業規則は池袋労働基準監督署に届出されているのでしょうか?甚だ疑問です。従業員が常時10人以上いる事業場は、労働基準監督署に就業規則を届け出ないと違法です(労働基準法89、90条)。
   まず、会社が池袋労働基準監督署に海外事業本部事業場の就業規則を提出しているのかを確かめる必要があります。そして、会社が法に則った就業規則変更手続きを実施するように要求します。

2.36協定の締結と届出の手続き
   36協定というのは、労働基準法36条に基づくことからきた通称で、正式には「時間外労働及び休日労働に関する協定」と言います。法定労働時間を超えて従業員に時間外労働/休日労働させる場合に必要な協定で、以下に示すように法定労働時間を規定する労働基準法32条に免罪を与える協定です。従って、36協定を締結することなく従業員に時間外労働/休日労働させると労働基準法32条違反となり「6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金」刑に処せられます。

労働基準法36条
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この項において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによって労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。


   就業規則は従業員10人以上の事業場のみに届出義務がありますが、36協定の場合は事業場に従業員が一人でもいれば、その人に残業をさせるためには36協定を締結し所轄の労働基準監督署に届出することが必要です。
   36協定に関する違法では、まず内容の問題として、昨年度、今年度共に4等級以上の総合職社員(主幹以上)が時間外労働及び休日労働の対象者に含まれていない、即ち会社が主幹以上の社員に時間外労働をさせれば違法ということです。勿論、年間540時間の超過勤務手当相当分に関しては何も書かれていません。次に、協定締結の手続きの問題ですが、36協定は各事業場で締結しなければなりません。海外事業本部の場合は、池袋労働基準監督署に届出しなければなりません。海外事業本部には過半数組合が存在しないので、全従業員で過半数代表者を民主的に選んで協定締結しなければなりません。しかし、会社が海外事業本部で私たちに開示している36協定では、以下が違法です。
① 届出先が、本社を管轄する名古屋北労働基準監督署である。
② 事業場の労働者数が、事業場ではなく全社の社員数になっている。
③ 業務の種類に国内事業本部の業務を書いている。
④ 少数組合(第1労働組合である三祐コンサルタンツ労働組合)の委員長が労働者代表として協定に署名締結している。
⑤ しかも、その委員長が勤務しているのは他の事業場(本社)である。
会社は、このような出鱈目な36協定を従業員に開示して、全事業場の36協定を本社で一括して名古屋北労働基準監督署に届け出たと説明しています。全くの嘘です。一括して届け出るには条件があり、少数組合しかない会社の場合は一括して届け出ることはできません。労働基準監督署を欺く悪質な違法行為です。

3.労働基準法38条2項「事業場外みなし労働時間」に関する協定
   事業場外みなし労働時間協定というのは、労働基準法38条の2で規定されている協定で、出張時のように、丸一日事業場に行かない場合の労働時間を想定してその日の労働時間とするものです。但し、携帯電話等で指示を受ける場合、グループ出張でその中に労働時間を管理することができる役員や管理職がいる場合は、事業場外みなし労働時間協定を適用することはできません。
   以下に示すように、協定締結手続きとしては36協定の場合と同じで、この協定の締結手続に関して会社が犯している違法行為も、36協定の場合と同じです。また昨年度、今年度共に4等級以上の総合職社員(主幹以上)は事業場外みなし労働時間協定の対象者に含まれていません。従って、私達が海外出張した場合に超過勤務手当相当分を支払うのは矛盾しています。

労働基準法38条の2
労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。
2 前項ただし書の場合において、当該業務に関し、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、その協定で定める時間を同項ただし書の当該業務の遂行に通常必要とされる時間とする。

 
  労働基準法38条の2に基づく事業場外みなし労働時間協定が36協定と大きく異なるのは、事業場外みなし労働時間協定の場合は『他事業場の同協定を一括して届け出ることができない』とうことです。法的に認められておりません。会社は、昨年度、今年度共に事業場外みなし労働時間協定を36協定と共に本社で全事業場の分を一括して名古屋北労働基準監督署に届け出たと説明していますが、明らかに嘘です。

以上説明したように、会社は社員と労働基準監督署に二枚舌を使って、時間外労働手当を支払わないようにするために、就業規則変更、労使協定締結及びそれらの届出で出鱈目な手続きを行い、悪質な違法行為を繰り返し行っています。