原始の地球に酸素はなかった。
 他の惑星でも大気の多くは二酸化炭素である。

 火星の大気
 二酸化炭素 95.32%
 窒素 2.7%
 アルゴン 1.6%
 酸素 0.13%
 一酸化炭素 0.07%
 水蒸気 0.03%

 金星の大気
 二酸化炭素 96.5%
 窒素 3.5%
 二酸化硫黄 0.015%
 水蒸気 0.002%
 一酸化炭素 0.0017%
 アルゴン 0.007%

 原始の地球も、そう変わりない組成だったと考える方が妥当である。


 現在の地球の大気組成はこれらと大きく異なっている。
 窒素 78.084%
 酸素 20.946%
 アルゴン 0.9342%
 二酸化炭素 0.0381%
 水蒸気 約1%

 組成で見ると勘違いがあるかもしれない。
 パーセントということは、割合であり、分圧である。
 例えば、酸素35%、窒素65%になったとしよう。
 中生代にそういう組成だったと推定されているからありえない数字ではない。
 これは「酸素が増えた場合」と「窒素が減った場合」に起こりうる。
 窒素が減らずに酸素が増えると大気の量が増えるため気圧は上がり、窒素が減っただけなら気圧が下がることになる。
 もちろん、窒素が減って酸素が増えた場合に、同じ気圧ということもあるだろう。
 気圧が分らないと量は分らないのだ。


 火星の気圧は7hPa程度。
 金星の気圧は約93,000hPa。
 地球は1013hPa(1気圧として)。
 まったく違う。
 金星の引力は地球の9割ほどだが、大気圧は90倍にもなっている。
 火星の引力は地球の4割弱で、大気圧は0.7%でしかない。
 火星が重力が弱いとしても、差がありすぎる。
 火星が金星の42%程度の重力であるため、重力の二乗に反比例したとして、17%程度の大気圧となってもおかしくない。
 90気圧の17%とすると、1.5気圧にもなる。
 他の要因によるはずなので、重力のせいだけで説明してはいけない。

 原始大気は水素・ヘリウムだったと推定されている。
 まだ灼熱だった頃である。
 惑星が冷えてくると、内部から二酸化炭素などが放出され、大気となった。
 地球では100気圧もの大気だったという。
 それが水が存在したことで固定された。(後述)

 もしかすると、金星には液体の水が生じず、火星には生じたのかもしれない。
 また、火星は太陽から遠すぎた。
 二酸化炭素が凍るのだ。
 液体を経ずに、固体から気体、気体から固体になることを昇華という。
 火星では季節があり、大気が昇華し、大気の量(25%)が変わるくらいなのである。


 原始の地球でも、二酸化炭素が多かった。
 微生物により酸素が生まれるとしても、それ以外に大気中の二酸化炭素を減らす働きが必要である。
 まず起こったのは雨や海などの水による吸収だろう。
 二酸化炭素は水に溶けやすい。
 圧力が高いほど多くの二酸化炭素が水に溶ける。
 原始地球の大気は今よりずっと多く、気圧は高かったはずである。

 それだけでは水に含まれただけである。
 固定されたことにはならない。
 溶け込んだ二酸化炭素は海水に含まれたカルシウムなどと反応し、石灰となって沈殿することで固定されたのである。
 貝やサンゴなどのように生物も二酸化炭素を固定した。
 それに加え、微生物(植物性)は二酸化炭素と水から酸素を作り出し、海に酸素を溶け込ませ鉄を沈殿させ、溶けきれなくなった酸素は大気に放出されていった。
 大気中の酸素はオゾン層ともなり、地表へ降る紫外線を少なくした。
 生物が陸に上がれたのはオゾン層ができたからである。

 とはいえ、いまよりずっと酸素は少ない。
 多くなるのはシダ類などが地上に繁茂するようになった石炭紀あたり(濃度35%程度)である。

 窒素も固定される。
 動植物や微生物、あるいは自然現象によっても固定されるのである。

 植物は窒素も使い、あるいは固定し、炭酸同化作用(光合成)で二酸化炭素を取り込み、酸素を放出する。
 しかし、それは光があった場合にだ。
 光がなければ酸素を吸収し、二酸化炭素を放出するのである。

 ともあれ、植物が多いほど二酸化炭素は減り、酸素が増えることに間違いはない。


 現在の状態から酸素濃度が変わったらどうだろうか。
 酸素が減れば呼吸が苦しくなる。
 多くなれば呼吸が楽になるかというと、そうとばかりも言っていられない。
 過呼吸と同じことである。
 更に活性酸素による弊害も生まれるかもしれない。
 また、物が燃えやすくなることもあるだろう。
 太古に比べ、文明社会は酸素濃度も変動してもらっては困るのである。

 二酸化炭素で地球温暖化というが、実際は仮説なのだ。
 メカニズムは判っていない。
 地球の気温で見れば、今より高かった時期もあれば低かった時期もある。
 一定温度である方が不自然というものだ。
 気温に伴い、海水面も今より高かったこともあれば、低かったこともある。

 昨年末のハーバード大とブリストン大の研究チームの発表によると、12万5千年前は、少なくとも6.6メートル海水面は高く、8メートル以上だった可能性も67%あるという。
 もちろん、文明による地球温暖化などではない。
 地球はそういう変動をしているのである。


 寒冷化は文明にとって大打撃となる。
 これまでの文明は全て、温暖な地域で発生しているのだ。
 エジプト文明からローマ文明、それからヨーロッパ文明へと、北に向かっているのは、温暖な地域が北に向かっている、つまり温暖化の賜物である。
 それだけに、寒冷化の方が憂慮された時期もあるのだ。

 1910年頃から1940年頃まで気温は上昇していった。
 上がり方は1970年頃から現在までと同程度の上昇率である。
 ところが、1940年以降は下がり始めたのだ。
 上がっていたのが急に下がったのだから、地球寒冷化、間氷期が終わり氷河期が到来すると言われた。
 温暖化より深刻だったことだろう。


 温暖化の問題は、今後どの程度上昇するのか、だ。
 これが様々である。
 温暖化で気候も変動するが、分りやすく深刻なのは海水面の上昇である。

 なお、ツバル共和国が海に沈むというのは、別の問題だ。
 あの国は必ず沈む運命にあった。
 それは海底火山の仕組みがそうだからだ。

 大陸とは異なり、海底から噴出す火山はプレートから噴出すのではなく、その下に源がある。
 従って、時間と共に移動し、地下からのエネルギーが消失すると、沈下を始める。
 活発に噴火している時期、それが移動すると噴火しなくなり、沈下を始める。
 沈下により、サンゴ礁ができるのだ。
 更に沈下が進むと、海面下になっていく。
 分りやすいのはハワイ諸島だろう。
 綺麗に並んで、沈んでいくのが分る。


 地球のバランスは、奇跡的に取れているといってもいい。
 大陸が移動するのだから、海流は変化して当然だ。
 地軸(回転軸)も移動するのだから、極と赤道の位置も変わる。
 日本が北極(あるいは南極)になるかもしれないし、赤道直下になるかもしれない。
 地球温暖化より数段ドラスティックだ。
 しかも日本沈没よりありうる。
 過去に起きていることなのだから。

 とはいえ、まずは温暖化対策だという人もいるだろう。
 しかし、メカニズムも分らなければ、本当に温暖化し続けるのかも分らない。
 二酸化炭素濃度は、自然に大きく変動している。
 この200万年くらいは極端である。
 二酸化炭素濃度と気温のグラフは綺麗に一致するのは確かである。
 温暖化と油断させておいて、氷河期の到来だってありうるのだ。

 現代文明で重要なのは、現在と同じ環境を維持することだろう。
 二酸化炭素も酸素も多すぎても少なすぎても困る。
 温暖化しても寒冷化しても困る。
 しかし、人間の手でどうなるものでもないだろう。
 人間が二酸化炭素放出量を減らしたとして、だから地球がどうなるのか、それも分らないのだから。