冬がコンクリート住宅のアルミサッシの窓枠に張り付いている。そんな季節に聴く(効く)音楽はブラームスと、だいたい相場は決まっている。

そして、文学愛好家はヴェルレーヌの詩の断片を得意げに諳んじて見せたりする。

Le grand sommeil noir descend sur ma vie 闇の深い眠りが僕の生に降りる。

 

でも僕は意見を断固異にする。

 

いま聴くべき音楽はメランコリックな諦念の音楽などではない、スキゾフレニックな音楽だ。つまり物分かりのよい落ち着いたセピア色のブラームスではなく、断然シューマンを聴くべきだと言いたい。

じっとできず、落ち着きを決定的に欠いた言わばガキの音楽は、絶望と希望、愛と憎しみ、喜びと悲しみ、不幸と幸福のあいだを信じられない速度で移動する。固定された世界などどこにもないことを、音楽的エクスタシーや、せわしない転調で示しているのだ。

今日はルービンシュタインとガルネリSQのシューマンのピアノ5重奏を聴いた。

 

冬と冬の時代に聴くべきはシューマンをおいてほかにない、と思ったが、もちろんベートーヴェンも聴きましょ。