

私がオステオパシーの説明をすると「整体ですか?」とよく聞かれます。日本では、まだほとんどオステオパシーという言葉が知られていないため「体を整えるという意味では、整体とも言えます。」と答えています。
実際オステオパシーの治療方法には、整体やカイロプラクティックなどでよく行なわれる背骨をバキバキする方法もあります、というよりはこのテクニックは元来は数あるオステオパシーの治療方法の中の一つだったものを、他の手技療法の人達が取り入れたもののようです。(他の方法のほうがより効果的だと考えているため、私はこのバキバキする方法は、使用しておりません。)
ちなみにオステオパシーが発表されたのが1874年、カイロプラクティックは1895年で、1892年には最初のオステオパシー医科大学であるアメリカン・スクール・オブ・オステオパシー(ASO)が開校していました。
当院に痛み、痺れなど様々な体の症状で来られる方の中には、整体やカイロプラクティックにも通ったが、良くならなかったという方もいます。
そういう方の体の特徴は、例えば首でいえば頸椎の関節は何度もスラスト(よくある関節をバキッと鳴らす矯正方法です。)を受けているため非常に緩くなっています。
しかしそれ以外の組織、例えば頸部の筋膜、頭蓋骨から肩や背中などにつながる僧帽筋、頭板状筋、頭最長筋などの大きな筋肉の問題、あるいは頸椎前面の前縦靭帯、頸長筋、頭長筋などの問題が取り除かれていません。
そのため、関節、筋肉、靭帯、筋膜などの各組織のバランスが悪くなっており、このような状態では場合によっては痛み、痺れなどの症状をかえって悪化させてしまうケースもあります。
オステオパシーは整体やカイロプラクティックのように背骨の関節だけに重点を置くのではなく、そこにある全ての組織の状態をチェックして原因を探していきます。
ですから、問題のある箇所を正確に特定することができるのです。ところで、整体(整体師)は柔道整復師や鍼灸あんまマッサージ師のような
国家資格ではありませんし、整体師という資格もそれぞれの学校が独自に発行しているものなので、私には整体や整体師という言葉の定義が解らず困ってしまいます。
ではオステオパシーはどうかというと、やはり日本では国家資格にはなっていませんが、WHO(世界保健機関)においては代替医療として正式に認められています。
日本ではカイロプラクティックはそれなりに普及しており、アメリカの学校を卒業したというカイロプラクターもそれほど珍しくありません。
しかし現在日本にアメリカのオステオパシー医科大学を卒業したオステオパスは一人しかいません。(私の恩師の一人、森田博也DO)それはアメリカではカイロプラクターになるのに比べて、オステオパスになるのは格段に難しいからです。
上記を見てもわかるように、アメリカでカイロプラクターになるには高校を卒業してから、一般の短期大学の2年間も含めて最短で5年でなることが出来ますが、オステオパスになるにはレジデントも含めると11年もの年月がかかります。
そのためアメリカでは、オステオパスは完全な医師として認められているのです。
残念ながら、日本では国家資格になっていないため私が卒業した3年制の専門学校が、国内ではもっともしっかりしたオステオパシーの教育機関となっています。
オステオパシーの施術の基本は、解剖学と生理学に基づき、さらに触診の能力を高める努力を続けることにより、初めて可能となります。
オステオパシーを学ぶ学生がよく行う触診の訓練の例を以下に挙げます。
・開いた本の上に髪の毛を1本置き、その上にページを重ねてどこに髪の毛があるかを指先の感覚だけで見つける。そして、その枚数を1ページづつ増やしていく。
・タオルに10円玉をのせて、目を閉じた状態でタオルの端を引きタオルのどこに10円玉がのっているかを当てる。
・脊柱模型にバスタオルなどを巻き付け、タオルごしに骨の詳細な形を感じとることが出来るようにする。などがあります。
また知識という面では、特に解剖学に関しては徹底的に叩き込まれます。
筋肉、靭帯の名称や付着部分、神経支配、血管やリンパ管の走行などなど、本当に膨大な量の知識が必要です。
私が解剖学を学んだ早川先生(元東京慈恵会医科大学解剖学第一准教授)は頭蓋骨にある神経や血管が通る針の先のような孔の名称やそこを通る神経、血管の名称、機能まで全て覚えるように言いました。(残念ながら、かなり忘れてしまいましたが・・・。)
また私が学んだ学校では必ずアメリカでの解剖実習が義務づけられており、私もハワイで1度、ウエストバージニアで1度、合計11日間、実際にメスを使って、検体の解剖を行いました。
知識と実践を兼ね備えていなければならないということで、オステオパシーはScience(科学)であり、Art(技、芸術)であるとアメリカのオステオパスは言います。(日本では、このArtという言葉を芸術と訳している場合が多いようですが、私としては「技」の意味の方がしっくりときます。
例えば英語では格闘技のことを「Martial Arts」と呼びます。)また創始者のA・T・スティルは、自分が触れている患者の体の内部の完璧な映像を頭の中に描けるようにならなければいけないと言いました。
ですから私達オステオパスは、この解剖学の知識、生理学の知識、そして触診の能力を高めるように、努力し続けなければいけないわけです。
なお私がここに書いたことは、「今までに整体 or カイロプラクティックの施術を受けていた」と言われた方の触診をした、私の主観で書いているため、「私のところは違う!」と思われる整体師やカイロプラクターの方もいるかもしれません。そこのところは、どうかご了承ください。
頭蓋骨マッサージでは、一般的な整体などでは触れられることのない頭蓋領域に対する施術も行なうということです。
一般的には頭蓋骨や顔の形は変わらないと思われていますが、実際には生きている人の骨というのは、非常に弾力性があり特に頭蓋骨のような
薄い骨は、頭蓋骨表面につながる多くの筋肉の引っ張り、あるいは表面の膜の異常などの要因で、簡単に歪んでしまいます。
そういった歪みが起きると、例えば顔の形の非対称だけでなく、斜視、顎関節症、顔面神経麻痺他さまざまな症状が現れる原因となります。
また子供の多動症(ADHD)や自閉症、学習障害なども頭部の筋膜、腱膜、縫合など膜の緊張が影響していると考えられています。
実際にアメリカのオステオパスであるベリル・アーバックルは幼児の病理解剖を数百回行い、頭部の膜の状態が予想以上に深刻な機能障害の原因と
なっていたことを認めています。
また現在、90歳を過ぎて現役で小児専門の頭蓋治療を行なっているアメリカのビオラ・フライマンDOのところには、世界中から様々な問題を抱えた子供達が訪れ、大きな成果をあげています。
私も施術の際には、必ず頭蓋の状態をチェックして調整をおこないます。
頭部の症状として一番多いのは、やはり頭痛です。
当院に頭痛の症状で来られる方の多くは、以前に病院に行きMRI、CTなどの画像検査をおこなった経験があります。
しかし病院では、頭部の画像による診断で「特に異常なし」と言われ、鎮痛薬を出されるだけで、結局その後も辛い症状を抱えたまま生活しているというケースが大半です。
実際のところ脳自体には知覚神経が存在しないため、たとえ指で押しても痛みは感じませんし、脳を包んでいる硬膜には知覚受容器が存在しますがくも膜下、硬膜下や硬膜外の出血他なんらかの物理的な圧迫がなければ、痛みは感じません。
結局、ほとんどの頭痛の原因は頭蓋骨表面の、筋肉、筋膜、腱膜、骨膜、頭蓋骨を繋いでいる縫合の問題、さらにそれらによる頭蓋骨のゆがみや緊張、それに伴う頭部の血液、リンパの循環不全いうことになり、そういった問題を取り除いてあげれば、頭痛も解消するということです。
以下に頭蓋施術で効果があると言われているものを挙げます。
・頭痛
・自律神経失調
・顎関節症
・慢性疲労症候群
・花粉症
・鼻炎
・中耳炎
・不眠症
・めまい
・メニエール病
・頭や顔の歪み
・小顔
・統合失調症
・うつ病
・摂食障害
・パニック障害
・てんかん
・不安神経症
・適応障害
・自閉症
・発達障害
・アスペルガー症候群
・多動症
・チック
・斜視
・言語の遅れ
など、まだまだ様々な症状が改善します。
頭痛、花粉症、鼻炎などは私の経験では比較的早く改善が見られますが
(ときには1回の施術で症状が消えます)それら以外に関しては、改善
までの期間は個人差が大きいのではないかと考えています。
余談ですが頭蓋領域の施術をおこなうと、結果的に頭の形も良くなりますし、
顔も小さくなりますので、女性の方達には今までに行った高額な小顔のエステよりも効果があると、非常に喜んでいただけます。
頭蓋領域の解剖学を理解していない施術者がおこなうと、逆に問題を起こしてしまう可能性のほうが大きいと思います。
実際に当院にも過去に2名、小顔エステ後から体調不良となった方が来院しました。
一人は1回の施術で改善しましたが、もう一人の方の場合は、症状が無くなるまでに、10回ほどの施術が必要でした。
解剖学の知識に乏しい施術者がおこなう小顔矯正が、どれほど危険なものかを、利用者の皆さんは是非理解していただきたいと思います。