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時間の無駄日記

昔の記憶を思い出したら、また忘れないうちに書いたり
ゲームで誰にも自慢できないような小さいことをぼやいたり
勝手に世の中を果無んだりする日記です

何の役にも立ちません

あれは中学生の時だった。

前置きとして、うちの中学は普通に学ランだったけど、学校に着いてからは試験日以外は体育や部活動の有無に関わらずジャージ姿で過ごす校則だった。

それで、とある秋口のことだったと思う。
衣替えが終わって、草木も茶色付いてきていて、空は気持ちよく晴れていた。

その日もいつもと同じように、軟式テニス部の朝練をサボって普通の時間にゆっくりと起きて、朝の支度をしていた。
 冷たい風が吹き始めていて、少し寒さに震えながら短い通学路をとぼとぼと歩いていた。
その時、やけに胸のあたりが痒くて服の上から引っ掻いていたけど、髪の毛か何かが服に刺さって取れないんだろうと適当に想像していたのを覚えている。

学校に着いて、自分の教室に向かう。朝練の時間にかち合うと気まずいが、遅いと逆に戻ってくる部員たちと会う可能性があるので絶妙なタイミングを狙って突入した。

教室は帰宅部の生徒たちはまだ来てないし、部活中の生徒はまだ着替えや片付けで戻って来ていないため5~6人まばらにいるだけで、教室の電気も付いていなかったと思う。
特に誰とも挨拶は交わさず(自分は中二の後半ごろからクラスの人気者グループに潜り込んで便乗で頭角を現したので、その頃はまだただのコミュ障だった)、自分の席に着いて教科書類を出す。
その時もまだ胸元に違和感を覚えていて、家を出てからずっと痒いのは流石に何かおかしいと、ぼんやりと考え始めていた。

 一通り支度が済んで、教科書類の入ったカバンとは別の着替えが入ったカバンを机に乗せて、いざ着替えようとした時に事件は起こった。廊下には部活から帰って来た生徒たちが、バラバラと各々の教室に戻り始めていた。
自分がいざ着替えんとおもむろに首元から学ランのボタンを外したその時、服の中の何かがバタバタと暴れ始めたのだ。私は(ギリギリまで寝ていたい派なので)その時寝起きからまだ1時間も経っておらず、胸元で唐突に暴れ出した何某かに対し何が起こったのか、それどころか何が起こっているのかすらわからないパニック状態に陥った。

そしてその何某かは、胸元から飛び出ると何処かに向けて滑空していったのだ。そう、『滑空』していったのである。
結論から言うと、胸元から出て来たものはGだった。着衣前に学ランの裏に忍び込んでいたと考える他にないだろう。
体感的には数分にも及ぶ恐怖の時間だったが、実際には数秒にも満たない一瞬だったようで、周囲にいた人間は急に私が悲鳴を上げた、としか認識出来なかっただろうし、滑空していったGもいくら朝とはいえ電気の点いていない教室であったため、殆どの人物の視界に映ることなく飛び去ったことだろう。

最も、今風に言う陰キャラであった私の胸元からGが飛び出した、という光景をしっかりと目にしたとして、それは単純に見た側もトラウマものであっただろうし、誰かに言いふらすメリットもなければ話題性もなく、今日に至るまで私自身が他人からその話を聞いた覚えもないので、目撃者はいたとしても優しい思いやりで黙殺したということに他ならないのではないだろうか。仮定の優しいクラスメートに、この場を借りて多大な感謝を贈らせていただく。

ちなみにその後のGは、悲鳴を上げた私自身が周囲にその出現を周知させ、部活から帰って来た遊び盛りの運動部員たちが速やかに鎮圧したため大ごとにはならず、粛々とこの事件は処理されたのだった。