息子が言った。
「もうすぐ土用のウマの日だからうなぎ食べた〜い。」
私「・・・ウシじゃなくて?」
息子、ひゃひゃひゃっ。と笑い、
「あ〜。そうか。ウシか。」
大丈夫なのか?
中3男子。
予約はしておらず並ぶのも気が進まないので、開店と同時に入店できるように早めの時間に行った。
店舗入口前の小さな池には、紋様の美しい鯉が2匹、漂っていた。
これって食用?観賞用?
私がボソッと「この鯉さん、食べる用かな。」とつぶやくと、それを聞いてか聞かずか、突如として鯉さんたち、やたらバチャバチャし始めた。
「え。俺たちって食べる用なん?まじで?まじで?食べられちゃうん?」
と慌てふためいているようにも見えた。
どうやら私の不用意な発言は、彼らの心を深くかき乱してしまったようだ。
大変申し訳ない。
席に着いてメニューを確認すると、鯉のアライという項目はなかった。
よかった。彼らは観賞用だったんだ。
しかし、なんでも食い物に見えるのは私の悪い癖。
あとで「鯉のお刺身はメニューになかったよ。」と伝えて安心させてやらねば。
せっかくなので極上うな重を注文。
この店では、うなぎ料理は時価。という書き方をしてあるが、この量で1人前4000円は良心的な価格だと思う。
都心部なら1.5倍は取られる。
こっちは極上うな丼。
器が違うだけで中身は一緒。
楽しそうに色んな話をしてくれる息子。
息子「あのさあ。テイラー・スウィフトさんの彼氏がゴリゴリのアメフト選手だったから、なんかオレ、安心したんだよね。」
私「なんであなたが安心するの…?」
息子「だってさあ。あんなスターが、めっちゃイケメンの俳優さんとかじゃなくて、ゴリゴリのアメフト選手を選ぶんだ!と思ったら安心するじゃん。」
私「ああ〜。そっかそっか。」
私「テイラー・スウィフトさんは、今まで幾多のイケメンと付き合ってきたから、そろそろそういう系統に飽きてきたんじゃないかなあ。」
息子「え?そうなの?」
私「だって31人目でしょ?彼氏。」
息子「えっ!そうなの?13人じゃなくて?」
私「ワイドショー的な番組で、31人目だって言ってたよ。」
息子「そうなんだ〜。」
私「私の彼氏もラグビーの選手だったよ。」(ちょいちょい爆弾発言をぶち込んでくるおばさん。)
息子「えっっ!!!そうなのっ?」
私「うふふ♡」
息子「ほら。あれ。高校時代はトム・クルーズそっくりの先輩と付き合ってたんだよね?」
私「あ〜。あれは付き合ってない。好きだっただけ。ほんといい顔してた。彼は。顔はトムだった。でも頭はパーだった。」
(なんてこと言いやがる。)
息子「連れて歩くにはいいよね。」
私「そうそう。しゃべらんければね。」
(なんてこと言いやがる。)
私「本当に惜しい人材だったよ。彼は。」
(どこから目線なん?)
そう。高校時代、私はひとつ上の学年の男子生徒に恋をした。
そして毎日同じ電車で通学していた。
私達は必ず隣り同士で吊革に掴まり、学校までの40分間を共にしたのだった。
(ストーカーか?)
しかし彼は、顔はまさにトム・クルーズだったし、身長なんてトムよりだいぶ高かったし、見た目はガチ完全なるウルトラどストライクだったが、頭はパーだった。
(何度も言うな。)
相当なアホであるこの私から見ても、彼は常軌を逸するほどのアホだったのだ。
もし万が一、まかり間違って結婚などということになれば、生まれてくるのはアホでしかない。
つまりアホ×アホで、アホな子しか出てこない。
(だから何度も同じこと言うな。)
彼と付き合わなくて正解だったのだよ。
グッジョブ!!わたし!
(何がや。)
そんな追憶に浸りながら極上うなぎを美味しく平らげた。
息子「トム・クルーズさんもかっこいいけど、オレはドウェイン・ジョンソンさんが好き。ああいうふうになりたい!」
私「ドウェインもいいし、ジェイソン・ステイサムもいいよね。」
息子「どっちもハゲだね。」
私「もはやハゲは褒め言葉だね。髪の毛ないから余計にかっこいいんだもんね。」
息子「だよね。」
そういうわけで、今後は私のことを日本のテイラースウィフトと呼んでください。(ほざいてろよ。)
取り急ぎ、関係各所にお詫び申し上げます。
ごきげんよう゚・*:.。☆*:゚・♡