『人間の境界』という題名に惹かれてこの映画を観たいと思いました。




 《イントロダクション》公式サイトから抜粋


 友人のカメラマングループと国境の写真を撮影するなど難民をめぐる問題を追っていた彼女は、政府が国境を閉鎖したことで情報が遮断された2021年に「国境に行くことができなくても、私は映画を作ることができる。政府が隠そうとしたものを、映画で明かそう」と本作の制作を決意したと語る。政府や右派勢力からの攻撃を避けるためスケジュールや撮影場所は極秘裏のうちに、24日間という驚異の猛スピードで撮影を敢行。隠蔽されかけた国境の真実を、大量のインタビューや資料に基づき、心を揺さぶる人間ドラマとして映像化を果たした執念の一作。実際に難民だった過去や支援活動家の経験を持つ俳優をキャスティングしたことで、ドキュメンタリーと見紛うほどの圧倒的なリアリズムが産み出されている。2023年ヴェネチア映画祭コンペティション部門でお披露目されると、その複雑かつスリリングで息をもつかせない展開が、モノクロームの圧巻の映像美とともに絶賛を集め、審査員特別賞を受賞。ロッテルダム国際映画祭の観客賞をはじめ、これまでに18の賞を受賞、20のノミネートを果たし(2024年3月7日現在)世界各国の映画祭で高い評価を獲得している。


ポーランド政府は2021年9月、EU諸国への亡命を求める人々で溢れるベラルーシとの国境付近に非常事態宣言を発令。(2021/9/3ロイター通信)。ベラルーシから移送される難民を受け入れ拒否したうえ強制的に送り返し、ジャーナリスト、医師、人道支援団体らの立ち入りをも禁止した。
入国を拒絶された難民たちは国境で立ち往生し、極寒の森をさまよい、死の恐怖にさらされた…。




 《あらすじ》公式サイトから

「ペラルーシを経由してポーランド国境を渡れば、安全にヨーロッパに入ることができる」という情報を信じて祖国を脱出した、幼い子どもを連れたシリア人家族。しかし、亡命を求め国境の森までたどり着いた彼らを待ち受けていたのは、武装した国境警備隊だった…。


 《感想》

 2021年に起きたことで、つい最近の出来事をフィクションの形で作り上げたが、描かれる出来事は入念な調査や取材に基づいているというのだ。


「これから観ていただく皆さんには、是非心をオープンにして感じて欲しいです。作品の持つメッセージ、そして簡単ではない現実を受け入れてもらいつつも、そこに希望は失われていないことも感じて欲しい。この映画には、自分の生活を犠牲にしてまで他者を助けようとする人々が出てきます。そこから何かを感じてくれたら嬉しいです。」とホランド監督が話をしている記事を読みました。


 情報が溢れている世の中。新聞は子ども新聞しか取らなくなってしまったので、自分が必要とする情報だけを収集し、それで生きることにしてしまっている。他国を知る機会は自分が知ろうとしなければ手に入らない私だ。

 映画は白黒で、昔の出来事に思ってしまうが、2021年だったと思うと、同じ地球なのに、生まれた場所によって、人生がこんなにも違うのかと衝撃を受けた。

 

 シリア内戦は、最初は紛争ではなく 民主化を求めるデモ運動に過ぎなかったようだ。これが激化してしまったのは反政府軍が近隣国から様々な支援を受けることで武装蜂起を行い、自由シリア軍を結成したことが要因とされているようだ。 そして、拡大を続けた自由シリア軍はやがて内部でも意見がわかれ、ヌスラ戦線という過激派組織が独立したことによるものだそうだ。


 シリアで暮らせるようにできたら、1番良いのでは?なんて思うが、危険度レベル4で退避勧告が出ていて、支援をしに行ける状況ではないのだ。


「ペラルーシを経由してポーランド国境を渡れば、安全にヨーロッパに入ることができる」はどこの誰が出した情報なんだろうか?

 シリアで暮らすことは出来ず、希望をもってやってきたのに、話が違っていた。

 小さな子どもを連れて、子どもの未来のために、安全と言われていたから選んだのに、難民受け入れを拒否するポーランド政府により、ベラルーシから送り込まれてはまた戻されるという非情な仕打ちを何度も繰り返し受けることになってしまったのだ。その繰り返しの中で、難民の人たちは死んでいくのだった。


 難民も同じ人間で、生まれた国が違っていただけのことに過ぎない。難民が小さく生きなきゃいけないわけでなく、平和に生きたいと思ったから、仕方なく難民として生きただけなのだ。

 シリアにいても、ポーランドに移り住もうと試みても、どちらも過酷な人生だった。

 難民を受け入れられるほど、豊かな国はどこにあるんだろうか?なかなか難しい問題である。


 非常事態宣言のもと、ジャーナリストや医師、人道支援団体らの立ち入りも禁止されるなか、両国の国境地帯である森林に逃れた難民を救うべく支援活動をする人々もいたのは救われる。

 支援する側も命懸けではあったが。

 


 私はこの映画を観ることだけしかできない。

 感想を書くのに何日もかかってしまった。

 日本は平和なのに、私は毎日生きること、自分のことで精いっぱいだ。余裕なんてない。世界は広い。世の中は知らないことばかりの中で生きているのだろう。情報はどのように手に入れたらいいのだろうか?何を信じたらいいんだろうか?なんて思うのだ。正しい情報を確認するには目で確かめるしか知り得ないことが多いだろうなと思った。ただ、私のできることは、難民の方たちに人間として生きられること、幸せがくることを願うぐらいだけだった。

この映画を作った人たちに感謝をしたい。

観に行けて良かった。

今も続いている問題であること。興味がないですましてはいけない映画だと思いました。