映画「僕らの世界が交わるまで」を観てきた時に、「パリ・ブレスト 夢をかなえたスイーツ」の予告が流れて、上映するのを楽しみにしていた。

 
 《あらすじ》公式サイトから


 育児放棄の母親の下、過酷な環境で過ごしている少年ヤジッドにとって唯一の楽しみは、フォスターファミリー(里親)の家で、団欒しながら食べる手作りのスイーツ。いつしか自らが最高のパティシエになることを夢みるようになっていた。やがて、児童養護施設で暮らしはじめたヤジッドは、敷居の高いパリの高級レストランに、機転を効かせた作戦で、見習いとして雇ってもらうチャンスを10代で掴み取る。毎日180キロ離れた田舎町エペルネからパリへ長距離通勤し、時に野宿をしながらも必死に学び続け、活躍の場を広げていく。偉大なパティシエたちに従事し、厳しくも愛のある先輩や心を許せる親友に囲まれ、夢に向かって充実した日々を過ごすヤジッド。ところがそんな彼に嫉妬する同僚の策略で、突然仕事を失うことに。失意のどん底から持ち前の情熱でパティスリー世界選手権への切符をようやく手に入れるが…。


 《感想》

 映画を観る前に、ニュースをみた。


 「この映画は、ほとんど実話です。あまりに過酷すぎるエピソードは、少しやわらげましたけどね。やっぱり、観客の皆さんには“夢”を与えたので」とイシュムラエンさんは語っていた。

 

 この映画は、自身も制作に加わる形で、4年の歳月をかけて完成させたもの。

 菓子監修だけでなく、共同プロデューサーとして、準備期間から撮影中も全ての〈出演シーン〉を監修した、スイーツたちが登場する。


 この映画のスイーツは、すべて本物だ。

 通常、映画の撮影では、食品サンプルのような合成樹脂で作られたお菓子を使うことが多いそうだが、作り立ての、キラキラしていて、美しい、一番おいしい状態を映像におさめてほしかったし、みんなにも届けたかったから、テイクのつど、新しいものを作ったという。

 題名にもなっている「パリ・ブレスト」は、イシュムラエンさんが得意とするフランスの伝統的なスイーツで、大切なシーンのために40個近くも作ったという。「僕の真実の物語。人任せにはできない。出演者についても、主要な役を演じる俳優たちとは、全員、じっくり話をした上で、この人ならと思える人を選んだ」という話を読んだ。


 どんなスイーツが観れるのか、ワクワクしながら観ました。観た後は、帰りにケーキ屋さんに寄りたくなりました。


 でもね、ケーキ屋に寄る時間がなくって、直帰で家に帰ってしまったので、「スイーツが食べたい」気分はスイーツを口にするまで、しばらく続きそうです。


 パリ・ブレストとは、パリとブレスト間で行われた自転車レースを基に作られた、自転車の車輪を形にして、シュー生地とプラリネ風味のクリームを組み合わせた、フランス伝統のお菓子。

 シュー生地好きなので、食べたいですね。

 家の近くで作っているところはないかと思わず探してしまいました。


 彼の人生は、確かに壮絶で、母は愛してると伝えてはくれるが、観ていると、母親自身ができないことを補うためにいるだけの存在。息子が大切にしているものでもお構いなしで自分優先だ。

 里親に対しても、感謝よりも自分優先の母親だった。

 ただ、育児放棄が幸いなのか、里親先に恵まれ、里親の家の息子さんからお菓子作りを教わり、一家団欒で食べる手作りスイーツが唯一の楽しみとなり、自分もパティシエになることが夢となった。

 児童養護施設に入り、14歳でパリの高級レストランの見習いとして雇ってもらうことに成功する。修行のために180キロの距離を通い続けた。

 児童養護施設でも、彼の味方になってくれる人に出会う。彼の才能を信じて、後押ししてくれる。

 職場では、才能を嫉妬されて、嫌がらせを受け、仕事を失ってしまうこともあり、世界チャンピオンまでの道のりは過酷ではあったけど、応援してくれる人たちに出会うこともできた。努力と才能と根性で、人に恵まれたところもあったように感じる。

 並大抵の努力では、パティシエにはなれないだろうから、努力家であり、天才であると感じる。手先の器用さって、持って生まれたものだし、感性も持って生まれたものがあるからこそだと感じる。

 料理って、同じ材料を使っているのに、違うものが出来上がるぐらい、センスが必要と感じる。

 映画の中でも、お客様に認められるものが作れないなら容赦なく首にする。厳しい世界だなと感じる。


 イシュムラエンさんは、「菓子作りが好きとか、世界一になりたいとかは、本当のところ、問題ではなかったです。当時の僕が置かれていた状況は、選択の余地がなかった。とにかく、足を一歩ずつ前に進めなければいけない。そうすればいつか女神が微笑んでくれる。そう信じていました。パティシエを目指したのは里親の息子がパティシエで、僕に菓子作りを教えてくれたから。これで成功することができれば、思うように生きていける。行きたい国にも自由に行けるようになる。お菓子作りが、僕を苦しい境遇から救ってくれた。それが真実です」と記事に書いてあった。


 星空の下で寝起きした時代もあって、普通の人ではできない。


 主人公のヤジッド役をしたリアド・ベライシュさんは、役作りのために、パティシエとしての研修を受け、役作り以上の一人前の菓子作りの腕前になったようだ。イシュムラエンさんからも直々に教わったりもしたようだ。


 リアドさんの役作りがさらにリアルさを感じさせてくれたと思う。

 俳優さんって、すごいなと思わせてくれる映画でもあった。


 パティシエの辻口さんとの対談の中で、イシュムラエンさんは「多くの若者が自分の生まれ育った環境を理由にして諦めてしまうことがよくあります。しかし、本当に大切なのはお金ではありません。重要なのは、学び、習得し、修行すること、そして教養を身につけることです。」「苦しい逆境があるからこそ、それを乗り越えたときに素晴らしい成果を生むことができます。」「逆境に負けずに前に進むことが大切」と言っています。


 「もう一度人生があったとしても、まったく同じ子ども時代を選びたい」と言っている。

 「家族がいなかったからこそ、限界がなかった。制限もなかった。辛い経験したからこそ素晴らしい人生が送れる」と話をしている。

 

 幸せは、辛いことや失敗などマイナスなことがあるから感じられるもの。努力したことが幸せにつながるよね。

 認められたい思いが原動力だったようだが、プラスの認められたい思いの人だったからこそ。健全な心でいられたからこそだと思う。


 

 22歳でパティスリー世界選手権大会で世界一に輝いたイシュムラエンさんは、現在33歳。まだ、若い。いつか、日本にもお店を持ちたいと考えているようなので、楽しみにしたいですね。



 この映画観に行って良かったです。