auスマートプレミアム会員は、対象劇場なら2月16日までいつでも1100円で観れるというので、観てきました。


 この映画は、瀬尾まいこさん原作の「夜明けのすべて」を映画化したものです。

 私はこの本を読んだことはありません。

 予備知識は、あらすじのみで観に行ってきました。私と同じパニック障害を患っている人が登場するというので、気になったのでね。


 

 PMS(月経前症候群)のせいで月に1度イライラが抑えられなくなる藤沢さん(上白石萌音さん)。

「いったい私は周りにどういう人間だと思われたいのだろうか」という問いかけがあり、藤沢さんの気持ちが理解でき、近さを感じました。


 はじめての職場では、自分の病気を伝えることができずPMSで失態を重ねてしまい、2ヶ月で仕事を辞めてしまう。5年後、栗田金属会社で山添くん(松村北斗さん)と出会うのだ。山添くんは転職してきたばかり。パニック障害を患ってしまい、仕方なく転職してきたのだ。そのことを藤沢さんは知らない。山添くんの些細な行動がPMSによってイライラしてしまう藤沢さん。アットホームの会社の人達が間に入ってくれて事なきを得るのだ。


 藤沢さんはいつも人に対して気を配りすぎるぐらい、気を配る性格だけど、PMSによってどうにもならないイライラがやってきてしまうのだ。

 山添くんがなぜやる気のないような態度でいるのかわからなかったが、会社でパニック症状の過呼吸を起こすことで、今までの態度は、パニック障害を抱えていることで、様々なことをあきらめ、生きがいも気力も失っていて、そういう態度になっているのだとわかるのだ。


 山添くんは、藤沢さんが苦手だった。藤沢の病気がどういうものかわからず、自分の辛さの方が上だと思ってしまうのだ。自分の病気と同じにしないでくれ。簡単にいうなよと。でも、PMSのことを調べて、どう助けられるかを考えてくれるのだ。3回に1回は助けられると言ってくれるようになるのだ。

 第一印象は当てにならない、印象が変わるのだ。

 

 藤沢さんはお節介な性格でもある。

 でも、病気を抱えている人にとって藤沢さんの存在はとても有難いだろうなと思った。

 病気を誰かに知られるのは、恥ずかしさがあり、心配をかけたくないから黙ってやり過ごそうとしてしまうものだ。でも、気にかけてくれる存在は有難いのだ。また、気にかける人がいるということは、自分にもできることがある存在となれて、有難いのである。


 また、病気がそうさせているとわかれば、周りは理解を示し、温かい空間を作ってくれるのだと思った。完全に理解はできなくても,病気がそうさせているのだとわかれば、相手は自分が問題で事が起きたのではないということわかり、温かい眼差しで見れるのではないかと思った。


 少しお節介だけど、辛さを持ち合わせている藤沢さんの存在は、山添くんにとってもお節介しやすいのだと思った。お互いが助け合えることで、生きる力になったのだと思った。


 山添くんは、やりがいのない仕事と思っていたが、移動式プラネタリウムのナレーション作りで、ある人に出会い、ここでの仕事の楽しさを知り、段々と顔の表情もよくなっていくのだ。藤沢さんのお節介のおかげでもあり、藤沢さんが抱えた病気によってもある。

 藤沢さんのお節介は、山添くんに伝染していくのだ。最後のエンディングで、周りに気遣いしている山添くんがステキだ。


 最後まで、映像があるので、誰もが席を立たず、明るくなってから動きだすので安心です。

 映画を観ているとエンディングで動く方がちらほらら。暗い中で、つまずく人を何度も見かけます。なかなか動かない人がいた時は、慌ててスタッフを呼んでしまったことも。

 躓いた方は恥ずかしさもあったかもしれませんが、シニア世代だったので、骨折したのかと思ってしまいましたよ。大事に至らなかった様で良かったですが。

 真っ暗闇の移動は危険ですから、充分に気をつけて下さいね。長い映画だと、トイレに行きたくなって私も退席したい時があるので、移動したくなる気持ちわかります。トイレ混み合いますからね。


 この映画は、とても静かである。

 映画を通して、プラネタリウムの中にいる感覚になれる。

 人は皆、アルファルドという星なのかもしれないと思った。アルファルドは孤独であっても、誰かの手助けとなる星で、人は皆孤独だけど、誰かの役に立つ人になれるのだと気付かされる。


 恋愛感がない、ただの同僚である距離感が、お互いの良い距離感でいられたのかもしれない。


 夜がやってくれば、朝がやってくる。

 毎日が同じようで、何一つ同じ朝を迎えているわけではない。

 夜明け前は、一番真っ暗い時である。でも、空を見上げれば無数の星に出会うことができ、綺麗な世界を知ることもできる。

 悲しみや辛さを知っているからこそ、優しい世界が作れるのだ。悲しみや辛さは自分だけの特別ではないのだ。

 病名は違って分かり合えないこともあるかも知れないけど、決して自分が特別ではない。


 悲しみ、辛さ、苦しみの世界は、生きていれば誰もが経験する。大人になればなるほど体験する。だから、誰かに話し、誰かが受け止めてくれ、誰かを癒せる自分に変われるのだ。

 全ての事柄は、マイナスだけではない、プラスがあるということ。無理にプラスを考えなくてもいい。いつか、プラスに変わるのだと知れる機会がやってくる。


 地球と太陽の関係、星の話は、別世界ではなく、人間世界の比喩表現なのかな、なんて映画を観ながら思った。


 誰もが優しい世界に居たいだろう。

 自分だけが特別だと思うのではなく、誰もが何かしら抱えている。そっと見守る人、そっと手を差し伸べる人、ちょっとお節介な人、ブレーキをかけてくれる人、お互いが思いやる優しい世界が居心地が良いのだと教えてくれる映画であった。