予告編を観たとき、ヤクザが中学生に歌を教えてもらうなんて、どんな設定だと思った。面白そうだけど、どうしようかなと思っていたら、なかなか良い時間に上映しているではありませんか。
 ならば、と観てきました。

 私は一度も原作漫画を読んでいないので、情報は予告のみ。
 知らない私でも、楽しむことができました。

 毎年恒例の組長の誕生日会は、カラオケ。最下位は、組長の趣味で始めた入れ墨を掘られるのだ。入れ墨は趣味なので、上手くはない。えぐられて強烈に痛く、しかも嫌いなキャラクターや恐怖と思っているものを描いてくれるらしい。絵心はないので、嫌いなキャラクターを描かれても、そのキャラクターとは似ても似つかないものであるため、まだマシらしいのだ。確かに、前回最下位だった兄貴の手に掘られたキャラクターは似ても似つかないものだった。 
 今年も誕生日会が近いてきた。
 いつもは兄貴と慕っている人が最下位になってくれていたので助かっていたのに、音楽教室に通い始めたのである。音楽教室の名前が可愛らしいので、兄貴が通うとなるとクスッと笑える。


 狂児は、これで次は自分が入れ墨されるのかと思っていたところ、合唱コンクールの歌声が聴こえてきて、心を奪われたのだ。

 たまたま、先生がトロフィーを忘れてしまい、岡聡実くんは、「先生よりここの場所知っているから」と探しに行ったおかげ⁈で、狂児と出会い「カラオケ行こ」と誘われてしまうのだ。
 初対面で、「カラオケ行こ」って。現実におきたら、めちゃくちゃ怖いって。
 
 カラオケ屋の中で、なぜ、歌を教えてほしいかを説明される。ヤクザを言い換えて、ブラック企業で働いていると説明するのは笑える。勝負する曲は、X Japanの「紅」。

 感想聞かせて、と言われ、怖いながらも正直に言ってしまう。

 その後もダメ出しをし、ある時、ヤクザ仲間にも指導して欲しいと集まっているところに呼び出されるのだ。

 怖いながらも、正直なダメ出しをし、狂児がちゃんと守ってくれるのだ。
 

 狂児の音域にあった歌を勧めたりして、狂児と聡実は師弟関係であるが、狂児も良い兄貴って感じ。
 ところどころでクスッと笑えたり、聡実くんになったつもりで、緊張感が走ってきたりする映画だ。

 お父さんの悪知恵で狂児となってしまったが、お母さんが考えた漢字の京ニだったら、ヤクザに入ることは無かったんだろうか?
 狂児と聡実が通うカラオケ屋は、以前狂児が働いていた場所。ここで、組長に出会い、ヤクザにスカウトされたというが、名前でスカウトされたんだろうか?


 映画を見る部で、聡実と栗山の会話がなんとも良い。相談の内容と観ている映画がどこかマッチしている感じで面白い。

 巻き戻しできないデッキ。中学生という人生を巻き戻すことができない、意味もあるのかななんて思った。映画を見る部は三年が卒業すれば終わりだ。だから、巻き戻ししなくても良かったのかもしれないけど、巻き戻すデッキに変えることができて、また、次につなげられる未来を感じた。幽霊部員が多い部活だったが、栗山にとってはかけがえのない時だったのだろう。そして、聡実にとっても、良い逃げ場だった。


 何気なく、何度か耳にする機会はあったが、この映画で何度も聴き、紅の歌詞の意味、心情を知ることができた。


 聡実の両親の愛も、クスッと笑えたりする。

 夫婦愛もクスッと笑える。

 お父さんの息子に買ってくる傘のセンスもなかなか。嫌なら一緒に買いに行かなきゃほしい物を得られない。中学生の思春期で、親との買い物は避けたくなったりするだろうから、諦めるしかないよね。


 変声期を迎えて、歌が上手く歌えなくなってしまって、狂児に綺麗な声が出せないから、歌えないというと、「綺麗なものしかあかんかったら、この街ごと全滅や」と答えるシーン。

 

 いま、ゴミを無くそう無くそうと頑張っていたが、そうか、全部拾わなくても大丈夫なんだ、なんて肩の力を抜いてくれた。


 エンディングは、リトグリの紅だった。


 その後、まだ、続きがある。

 あの時、カラオケ最下位が誰だったのか?

 そして、狂児は、聡実のアドバイスをきちんと聞いており、実直な性格だったことをラストまで感じとることができた。