【色彩公演-青- 『キミノイタミナミニカエル』】
前作から8ヶ月後、2013年2月に打たれたお芝居です。
すんごく阿呆くさい理由で青色が好きになった、という過去を持つ主宰が、その青を探して書き連ねた、かくれんぼのお話。
「クラムくんはかくれんぼが大好きでした。隠れることよりも、見つけることが得意でした。
アオイちゃんは隠れるのが苦手で、いつも最初に見つかってしまいます。
この日も、みんなでかくれんぼをしていました。クラムくんがオニで、アオイちゃん、カイちゃん、ハクちゃんが隠れていました。モノくんはそれを、家の中から窓越しに見ていました。
突然の雨。
アオイちゃんは、すぐに見つけてくれるだろうと、隠れたまま待っていました。モノくんはもう、窓の前にはいませんでした。
みんな行ってしまったのに、アオイちゃんは待っています。
さあ、アオイちゃんはどこにいるのでしょう。」
小さい頃、あの高い空や、雨粒や、広い海は、絵に描けば何かと青色で塗り上げていました。
見つける、というより、そこに青を見出すのは、今よりも簡単な、もっと無意識的な行為だった、気がします。
海の水を掬い上げてみると。
宇宙のことを考えてみると。
この芝居の脚本を書く前に、いろんな人にこんな質問をしました。
雨の色は何色に見える?
一番多かったのは、灰色で。
中には、水色、白など。
緑色という人もいました。
ああ、やはりイメージなのだなあ、と。
心理的な。状況的な。
アオイは、探しに来てくれるようにと、自分の膝に青痣をつくろうとします。
青痣だって、本当は青では無いのだけれど。
「しろだって、はいいろだって」
「ねえ、やめて。そんなことしなくても」
「だってもう誰も見つけてくれない!」
ハクは、白は、みんなのすぐ近くにいました。かくれんぼにも参加しているつもりで、ただ、数には入っていなかったのだけれど。
青を見失ったクラムに、ハクは伝えます。自分はキャンバスだと。自分に描かれた海の絵に、クラムの手で、色を塗ってほしいと。
長い年月を経て、かくれんぼが再開します。
「どうしたら終わり?」
「全員見つけたら、終わり。」
クラム、モノ、アオイ、カイは、青に染められた波の中で、再会します。
ハクがその姿を、嬉しそうに、寂しそうに見つめて。
白い水しぶきが、上がります。
この芝居で生まれた、強い思い出は、
絵描きの少女、ハクと、
アオイが歌う、かくれんぼの数え歌でした。
人差し指がさす かくれんぼのはじまり
不確かな色に 霞む青の背
見つからないように 見つけてもらうために
呼ぶ声に揺れる 仮面の緑
いつも同じ場所で 私はあの子を待つ
無数の時間と 黒い陰草
市中の鐘が鳴り 雨音に飲み込まれ
闇雲の中に 灰が降りつむ
来るはずのあの子は 私を忘れてゆく
遠ざかる記憶 霞む青の背
そう言えば前作も、そして次の-茶-の時も、お芝居の中には歌が出てきます。
この『キミノイタミナミニカエル』において、彼らが飛び込んだ海というのは、
実は、『朝を待つ』の中で、登場しているのかもしれません。
『キミノイタミナミニカエル』
出演
小山瑛子/アオイ
小暮佳那/ハク
土井今日子/カイ
栄徳亮/モノ
岡田真也/クラム