「お餅はお好きですか?」
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前回までの「餅。」
そして食事もあらかた済み、まだ食べたり無かった私は
あるものを注文することにした。
そう、それは今を煌く生もの「レバ刺し」
この時期にこのタイミングでこれを頼むとはいかがなものか。
いや、だってメニューには何も書いていなかったのでいいではないか。
しかし、案の定店員のお姉さんから
「申し訳ありません。そちらの商品はただいま自粛しております。」と返答があった。
「だったらシールでも貼っておきなさいよ。」と言いたい気持ちもミジンコほどあったが
お姉さんの笑顔があまりに素敵だったのでその思いは胸の奥深くにおさめた。
なぜか引っ込みがつかなくなった私はそのお姉さんに
「何かお勧めのものはありますか?」とたずねた。
少し悩んだ挙句お姉さんは素敵な笑顔とともにこう答えた。
「私はお餅が好きなんですけどいかがですか。」
一瞬時が止まった。私はそのとき「え?」と聞き返した。
だってここは豚の専門店みたいなところ。そこをあえて「餅」でくるとは…。
私以上に慌てふためいたのが後輩の新八さん(仮名)だった。
「いや、KOHさんはお餅が…」
そうである。私はお餅が大嫌いである。
お餅が嫌いなためにお正月は外に出ないにも等しいのである。
なぜお餅が嫌いかと言われたら「腹にたまるから」である。
それと幼少期に人が馬鹿みたいに大量に餅を食しているところを
目の当たりにしたからである。
私は人が同じものを一度に大量に食していたら
その食べ物が嫌いになる。スイカもそのひとつだ。
しかし私も大人だ。仮に変態だとしても変体という名の紳士だ。
ここはお姉さんの厚意を粉砕していけないと思い、新八さん(仮名)の言葉を遮った。
「いや、新八さん(仮名)私はお餅が大好きだ。」
あきらかに無理している感は否めないがここはお姉さんの厚意を粉砕しないため
それと落ち込んでいる後輩を元気付けるために身体を張ろう。
「じゃああなたのお勧めを二人前頂こう。」
「え?ご無理なさらなくても…」
「いや、いいんだ。持ってきてください。」
少し陰りが見えたお姉さんの顔に笑顔が戻った。
「はい、わかりました☆」
それから5分ほどであろうか、その後に例のものがテーブルに届いた。
「お待たせしました、お餅の…」
生憎だがここからよく覚えていない。
だって目の前に大嫌いなお餅がたくさんあるんですもの。
それでも出されたものは完食するのが礼儀。
お姉さんに「では見ていてください。」と一言断ると
全ての餅をその場でいっぺんに口に入れた。
苦しかった。正直泣きそうになった。
今、この年になって給食のときに食べるまで席を離れることを許されなかった
友の気持ちが理解できた。
それでも私は“謎の男気”を完遂するために謎の笑みを浮かべ涙ながらにすべて飲み込んだ。
やった、やったよ。俺やったよ、パトラッシュ。
なぜかやりきった感に浸っていた私にお姉さんがお絞りをくれた。
これが新八さん(仮名)クラスだとこれしきで完全に惚れてしまうレベルだが
数々の戦場を掻い潜ってきた私には生温かった。
興奮冷めやらぬ状況が続いたがここで新八さん(仮名)が暴挙に出た。
「同じものを二つとお餅のみってできますか?」と言いやがった。ドMのくせに。
なんだ、おまえ。なんでドヤ顔なんだ?何「空気読みました」みたいな顔してんだ?
すごく私を心配そうに見守るお姉さんは戸惑っていた。
「お餅のみは厨房に聞いてみないとわかりません…。」
そりゃそうだろう。だってメニューに無いもの。
…おっと、ここでお迎えがきたようです。
続きは来世で。
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