賃貸管理の業務を行っていると、営業、工事、建物設備、裁判などなど実に様々な仕事にかかわり、多くの体験ができます。
その中でも、今年の冬に、あの東京拘置所に入ることがありました(もちろん、被告としてではありません)。貴重な体験でしたのでご紹介させていただきます。
あるマンションで家賃が入金されなくなり、督促の電話を契約者に入れましたが、音信不通となってしまいました。部屋を訪問しますが、いつ訪ねても不在です。
仕方がなく、部屋の玄関扉に貼り紙をして、帰宅したら連絡をいただけるようにしましたが、結局2週間以上契約者はマンションに戻りませんでした。
この契約者は、お身内が一人しかいないこともあり、連帯保証人の代わりに保証会社を利用しており、緊急連絡人にご家族になっていただいておりました。そのため、そのご家族に連絡を取りましたが、ご家族も契約者と連絡が取れなくなっているとのことでした。
仕方なく、今度は契約者の勤務先に問い合わせたところ、勤務先にもしばらく姿を見せていないとのことでした。
部屋には契約者の家財が残されたまま一ヶ月以上が経過してしまいました。訴訟の手続きを取る場合には、本人不在のまま、公示送達による明け渡し訴訟を行う必要があり、解決までに膨大な時間がかかります。保証会社を利用しているとはいえ避けたい状況でした。
そんな中、契約者勤務先のある人から、実は契約者がある警察署に拘留されているとの情報をいただきました。そこで、早速警察署に確認を取りましたが、家族以外には何も教えられないとのこと。
そこで、契約者唯一の身内の方に警察署に連絡を入れていただき、本人が東京拘置所に移送されたとの情報が得られました。
必死の思いで、これまで事態を収拾させようと対応してきた営業担当と2人で、東京拘置所まで契約者に会いに行くことにしました。
しかし、このとき、既に契約者と連絡が取れなくなってから2ヶ月近くが経過していました。警察の話では、既に拘置所から別の場所に移送されていることも予想されるとのことでした。
東京拘置所に問い合わせると、何も教えられない。とにかく、拘置所に来て面会申請を出すように言われました。契約者がいれば面会でき、いなければ、その場で不在が伝えられるとのことでした。
意を決して東京拘置所を訪ねました。映画やテレビで見るX形をした異様な姿をした巨大な建物の前に立つと緊張感が高まりましたが1階の受け付けに入り、申請書を提出しました。
係の方の説明によると、本人がいれば面会できるものの、仮に本人がいても、裁判所に裁判に行っている場合は会うことはできないとのことでした。
受付の長椅子で待つこと30分、私達の名前が呼ばれ、8階の面会室まで進むよう案内がありました。
長い通路を進みました。それは、拘置所のX形の右下にあたる部分と実感できました。やっとエレベーターホールに到着すると別の係の方がおり、鞄、携帯、金属類など筆記具以外の荷物をロッカーにしまうように指示されました。そのあと、空港にあるのと同じ金属探知機を通過するように言われ、エレベーターで8階に上がりました。
8階の待合室でしばらく待つと、3番の個室に入るよう指示がありました。個室の中はドラマで見るあの面会室です。私達が椅子に腰を掛けると、間も無くして、ガラスの向こうの扉が開き、警備員と一緒に契約者が現れました。
ガラス越しに契約者の顔を見たときには、軽い衝撃を受けました。昔に生き別れた家族と再開するときには、このような気持ちになるのかもしれないと感じました。
契約者は拘置所の中でかなり憔悴した様子でした。話を聞くと、ある刑事事件を起こし、それが原因で連絡できずに部屋を開けることになったとのことでした。
私達の質問や依頼にも実に協力的で、その後の書類のやり取りも、自分が拘置所にいてもできることを教えていただきました。
また、国選弁護人がいることも教えていただき、その後、解約合意書への押印、国選弁護人の協力による残された家財の処理を行い全て手続きを終えることができました。
処理を終えた後、弊社の顧問弁護士にこの話をしたところ、 拘置所に行く管理会社は普通はおらず、管理会社の業務を超えていると指摘を受けました。
オーナー様には大変なご心配をお掛けすることになり、このようなことは無いに越したことはありません。しかし、何事も経験と考えるなら起きてしまったことは、未然に事故を防ぐためにも、今回の経験を役立てられればと思います。
ちなみに、東京拘置所の中は清潔なうえ近代的で照度も高く、面会室のガラスには、ドラマで見る小さい穴がたくさんあいている丸い枠はありませんでした。こちらと向こうとは完全に遮断され、契約者とは、壁に内臓されたマイクを通して話をしました。
マンションの部屋は今では次の方が契約をいただき、拘置所を訪れたのは、遠い過去のように感じられます。
三浦