オーダーを頂いた古材風の特大ベンチがやっと完成した。
特大なだけに時間もかかったけど納得の出来映えに。
苦労して作った物が出来上がると一つの懐かしい思いでがよみがえります。
私が高校生だった頃、なんの目標もなく将来なにをやりたいのかも分からないただ時間を持て余す退屈な日々を送っていました。
ある日、バイトの先輩がグループ展をやるのだけれど、このままだと時間が足りなくて間に合わないかもしれないから手伝って欲しいと言われ、有り余る時間を持て余していた私は即OKした。
手伝いとはひたすら雑誌を1cm角に切り抜いていくという作業。
何に使うのだろう?
時間が空いた時は先輩の手伝いをさせてもらい
ひたすら雑誌を切り抜いた。
切り抜きも山盛りになってきた頃、今度は大まかな色で分けていく作業をする。
数日の作業の後は先輩にしか出来ない作品作りに入るので私は完成を楽しみにする事に。
なんとか展示会前に完成したようで作品を見せてもらってビックリ!
雑誌の1cm角の切り抜きが色別に構成されてマリリンモンローの顔が浮かび上がっていた。
何日も細かい作業を繰り返し、ようやく出来上がった作品を優しく見ながら
『途中で何度も諦めようと思ったけど、この出来上がった時の感動があるからやめれないんだよね』
そう言った先輩の言葉を今も思い出します。
私も工房内にある特大ベンチを眺め幸せなひとときを過ごす。
我が子を見る様に顔が自然に笑顔に。
しかしその幸せは長く続かなかった。
フッと頭の中を駆け巡る悪い予感。
これどうやって作業場から出そう!?
工房とお店の間には壁があり唯一の出入りは扉が一枚あるだけ。
急いで扉の幅を計るとベンチより小さい。
えっ!出ない!!
納品する為の車の手配をしてしまっているので今からベンチを解体して工房の外に出して組み立てる時間はない。
しかたがないので扉をはずし外枠を壊す事にした。
何故、ベンチが完成したのに工房を破壊してるのだろう?
『これがあるから物作りはやめれないんだよね』
と小さくつぶやく家具屋でした。