つらつら、うだうだと…
仕事が終わって一旦自宅に帰り、
着替えてから彼の家へ行った
相変わらず忙しい様で『ちゃんとした花見にも行けそうにないから、せめて晩飯くらいは一緒に行こう』と
私も転職して以降、なんだかんだと慌ただしく
おまけに不規則な勤務体系なもので『悪いなぁ』と思っていたところ
『ここからそんなに離れてないんだけど、昔住んでたところがあってね…その近所にあっさり美味しい中華屋があるのよ…そこに行こう』
通りから一本入ったところで、
彼は何の予告もなく私の右手を握る
お手手つないで夜道を行くアラフィフふたり
昼間に出かけても手は繋がない…繋げない…誰が見ているかわからないから…
そして私はいつも彼より半歩下がって歩いている
暗い通りに人影はない
彼と私の靴音だけが低く響いている
夕食を終えて『ちょっとだけ廻り道して行こっか』
いやいや、ここがどこだか全くわからないんですけど
少し歩くと小さな公園
街灯に浮かびあがった満開のソメイヨシノ
『はぁ、よかった…まだ咲いてた』
そう云って彼は顔をくしゃくしゃにして笑った
私も笑顔を返すと、
彼は指を絡める様に手を握り直した
途中でもと来た道に入り、そのまま通りに出たのだが
彼は繋いだ手を放さなかった
『放していいよ』の意味で何度かくいくいと手を引っ張ったのだけど、
『このままでいいの…気にしなくてもいいから』と微笑むだけだった
駅へと続く通りは飲食店やコンヴィニエンスストアがあるせいかとても明るい
前方から若いカップルらしきふたりが来る
最初に気付くのは女性で『へぇ?』という顔をする
その後で男性が気付き『あら~』という顔をする
すれ違った後で何を云われてもいいけれど、
そう思ってるのは私だけなのか
せめて彼の仕事仲間や音楽活動を応援している女性達には見つかりません様に
あれこれ考えていると不意に言葉がかけられた
『心配要らないよ…今更でしょう?』
!
何やねん
アンタ、エスパーか! ←悔しいw