疲労に関する研究は、急速に進んでいるようだ。

 

疲労の分子機構の解明による健康の維持と増進を目的とする 医学研究拠点の形成

 平成 24 年度~平成 28 年度 文部科学省 「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」

 研究成果報告書

 

では、次のような報告があるが、私にはとても難解だが、以下私なりの理解。

疲労の本態は eukaryotic initiation factor 2α (eIF2α)のリン酸化と、これによる脳からの 休息の命令。そして回復とはこの過程が逆向きになること。さらに疲労、およびその回復の程度は、測定可能でる。

 その一つとして  唾液中 HHV-6、HHV-7 による疲 労診断法は生理的疲労であれば上昇し、病的疲労であれば低下傾向にあるという特徴がでた。慢性疲労性症候群やうつ病の診断にも役立つ可能性がある。

 

 

以下本文の要旨

Ⅰ. 疲労の分子機構の解明 *

 疲労の分子機構は不明な点が多く、疲労研究 の遅れの大きな原因となっていた。さらに、メカニ ズムが不明であるために、疲労という現象の独立 性を疑う研究者も多く、ハンス=セリエによって提 唱されたストレス応答と混同されることも多かっ た。

 

 本研究では、疲労の本態が外的・内的ストレッ サーに応答した eukaryotic initiation factor 2α (eIF2α)のリン酸化を中心としたシグナル伝達によ る炎症性サイトカイン誘導と、これによる脳からの 休息の命令であることを見出した。

 

   ここまででもう何のことか私もわからないが、一応調べてみた。

wikiによるとeukaryotic initiation factor 2α(真核生物開始因子2 、eIF2 )とは真核生物の開始因子で、ほとんどの真核生物の翻訳開始に必要である。翻訳とは細胞核内のRNAへのDNAの転写過程の後に、細胞質またはER中のリボソームがタンパク質を合成するプロセスのことで プロセス全体を遺伝子発現という 。  

 

(以下 再び要旨)

eIF2αリン酸化はタンパク質合成の 抑制やアポトーシス誘導によって細胞機能低下 を生じるシグナルである。疲労の際の eIF2αリン 酸化は全身の臓器で生じ、疲労による臓器の機 能低下の原因となることが示唆された。eIF2αリン酸化は、このシグナルに関連する末梢血中 の ATF3 mRNA 発現量で測定可能で、疲労の客観的測定に利用できた。

 続いて、疲労回復に関わる分子機構も解明した。疲労回復は疲労とは逆にリン酸化した eIF2α (eIF2α-P)の脱リン酸化機構によるものであった。疲労回復力は eIF2α脱リン酸化酵素 GADD34 によって判定可能で、末梢血中の GADD34 mRNA 量で測定することができた。

 疲労の原因である eIF2αリン酸化シグナルは、体内に潜伏感染しているヒトヘルペスウイ ルス(HHV)-6 および HHV-7 の唾液中への再活性化を誘導した。これは後述する様に疲労の 客観的測定に利用できた。また、唾液中で増加した HHV-6 は口腔内マイクロバイオームを変 化させ、後述する様に嗅覚神経系を介して大脳辺縁系に障害を与え、ストレス脆弱性を誘導する。

 

ストレス応答 はこれとは逆に、ステロイド産生による免疫抑制 とカテコラミンによる心身の活性化が主体となる ため、疲労とストレス応答は互いを相補すること で心身のホメオスタシスを維持する機構であるこ とが判った。

 

Ⅱ 疲労バイオマーカの確立と客観的測定法の課題。

(要旨)

これまで、体内に潜伏感染してい るヒトヘルペスウイルス(HHV-)6 と HHV-7 が疲労によって 唾液中に再活性化することが判明している。

   今回、疲労の分 子機構の解明により、これらのウイルスの再活性化に関わ る遺伝子の発現は eIF2αリン酸化と関連する upstream open reading frame 制御機構によって生じることが判明し、 唾液中 HHV-6、HHV-7 による疲労測 定の有用性が確認された。

 この測定法は労働、 運動、訓練などの多様な生理的疲労が測定 可能であった。

また、休息などの疲労回復に よって唾液中 HHV-6、HHV-7 が減少するこ とも確認された。

 

 その一方で、慢性疲労症候群(CFS)やうつ 病といった、病的疲労を呈する患者では 唾液中 HHV-6、HHV-7 は反応しなかった。 病的疲労は脳生理的疲労とは異なり、労働 や運動の負荷がないにも関わらず、神経の 機能異常によって強い疲労を感じる疾患で あり、回復が難しい。

、唾液中 HHV-6、HHV-7 による疲 労診断法は生理的疲労であれば上昇し、病的疲労であれば低下傾向にあるため、客観的に かつ早期に生理的疲労と病的疲労の鑑別が可能となる。