[正論(52)~「エア御用人」たちの笑える論理①~]のつづき
■財務省の御用人たち
財務省の目的達成のために、都合のいい人たちがいる。「エア御用人」というもいうべき人で、おそらく財務省と手を組んでいるわけでもなく、前述した財政赤字で金利が上昇すると言う人たちだ。
この種の人は、金融関係者が多い。
金融機関のサラリーマンであれば、所属する金融機関の立場が大いに関係している。金融機関は、外為資金の運用・取り扱い、国債入札や財務省オペの対象、財務省の事実上の内部組織である国税庁、国税局と税務上のトラブルを避けたい等の点において、財務省には弱い立場である。だから、財務省の歓心を得たいというより、睨まれないように財務省を「よいしょ」しがちだ。
さらに、金融関係者にとって、財政破綻は営業トークにもなっていることも無視できない。公式に言われることはないが、「増税しないと財政破綻になって、ハイパーインフレ・金利上昇で国債暴落」というのは、預金・国債を売って別の金融商品を売り込むときの密かな商売用語だ。実際、筆者の親族や周りでこう言われた人がいる。
実は、こうした人たちは、「量的緩和をするとハイパーインフレ・金利上昇で国債暴落」するとも言っていた。そして、経常収支赤字でも、ハイパーインフレ・国債暴落なのだ。営業トークと考えれば、「ハイパーインフレ・金利上昇で国債暴落」が重要なので、その原因は何でもいいのだ。
■予想が外れた言い訳
もっとも、現実は彼らの予測した金利上昇は起こらず、大きく違っている。論より証拠で、彼らがデタラメを言ってきたのが露呈してしまった。
そうしたら、今度は「国債市場が死んでいる」と言っているようだ。予測が外れて、金利上昇がないことを、日銀の買い入れで価格形成機能がゆがんでいると言い換えているのだ。その典型は、19日にロイターが発信した記事等に見られる。
長期金利がそう簡単に上昇しないのは、理論通りだ。2013年5月16日付け本コラム「長期金利上昇懸念の「から騒ぎ」」で書いた通りである。予測を外しまくった金融関係者が、いまだに言い訳じみたことを話しているのには呆れるばかりだ。
長期金利について急騰すると言ったり、低金利のままで問題と言ったり、言うことが支離滅裂なのはかなり笑える。
量的緩和の経過時間とともに、どのように長期金利が動いていくかがまったく理解できていない人が多いのだ。以下は、これまで本コラムに書いたことだが、まとめておこう。
まず、名目金利はすぐには上昇しない。むしろ下がることもある。しかし、実体経済が上向くにつれて、上昇していく。おおよその目安は名目経済成長率と同じくらいだ。もちろん実体経済の動きを先取りするときもあるので、多少のオーバーシュートもある。ただし、一般的には名目金利の上昇は名目経済成長にやや遅れることが多い。名目経済成長を確信した設備投資が経済成長に遅れるからだ。
したがって、実質金利(=名目金利-予想インフレ率)は、当面低下する。これは、名目金利より早く予想インフレ率が上昇するからだ。それこそが実体経済を刺激する原動力だ。しかし、経済が上向きになるにつれて、実質金利も上昇していく。これは名目金利の上昇が起こるからだ。[DIAMOND online]