祖国・日本を少しでも良くして行く為に、国民一人ひとりが、
正しい知識を身につけ、地元の議員に意見を述べていきませう。
---------------------------------------------------------------
高橋洋一の俗論を撃つ!
経常収支赤字と財政赤字を弄ぶ「エア御用人」たちの笑える論理
(http://diamond.jp/articles/-/57932)
世の中では、赤字と騒ぐと大きな関心を集める。大企業が赤字だとニュースになる。そして、タイトルの経常収支赤字(これは貿易赤字でもいい)や財政赤字も同じくニュースになる。
8月6日、2014年1~6月は5075億円の経常収支赤字で、初の赤字だとニュースになった。財政赤字もいつもニュースになっている。
多くの人は、赤字=悪と条件反射する。企業や個人の赤字はその前提でもあまり問題ないだろう。しかし、国の経常収支赤字や財政赤字となると、そうでもない。むしろ問題はどこまで赤字でも大丈夫かというサステイナビリティがポイントである。
■経常収支=国の「収益」ではない
経常収支赤字の場合、そもそも国の「収益」とは無関係だ。経常収支赤字がマクロ経済にとって「それほど問題なのか」と問われると、経済学の観点からは、かなり疑問になる。経常収支赤字をある程度続けても、経済成長に支障ない国はたくさんある。経常収支と経済成長には何の関係もない。経常収支赤字になると金利が高騰するという人もいるが、データで見れば、経常収支と金利も無関係だ。これらは、2012年2月23日付け本コラム「日本の貿易収支が赤字転落で本当に国債は暴落するのか」にデータを含めて書いてあるので、参照していただきたい。
とはいっても、経常収支赤字が「永遠」に続くと問題になるだろう。というのは、経常収支赤字は、国際収支会計上の定義といっても同じであるが、国の対外資産を減少させるからだ。もっとも、日本の対外純資産は300兆円なので、仮に5兆円の経常収支赤字でも純債務国になるまで60年かかる。10兆円の経常収支赤字でも30年だ。こうした長期になると予測するのが馬鹿馬鹿しくなる。その間に「想定外」のことが起こるからだ。
■経常収支と金利は無関係
経常収支赤字と財政赤字は一緒に話題になることもある。これは理由がある。会計上の定義でもあるが、IS(投資・貯蓄)バランス論がある。民間部門の貯蓄超過が政府の財政赤字と経常収支黒字の合計に事後的に等しくなるというものだ。直感的にいえば、国民の貯蓄は、政府への貸付と海外への貸付にまわっているといえる。
たとえば、アメリカのいわゆる双子の赤字だ。国民の貯蓄が少ないので、海外からの借入(経常収支赤字)で、政府への貸付(財政赤字)を賄っているという状態だ。もっとも、ISバランス論は会計上の事後恒等式であり、その間の因果関係をいうものではない。このため、経常収支赤字であるからといっても、それが財政赤字をもたらすものではない。まして、国際収支のリファイナンスに問題がなければ、金利の話にはならない。それが、上に述べた経常収支と金利は無関係だという事実に呼応している。
経常収支赤字が問題という人は、金利の上昇を問題にする人が多いが、どうもその人たちは、財政赤字で金利が上昇すると言いたい人のようだ。このあたりは、ISバランス論や過去のデータからはロジカルでないのだが、これがそういう人たちの心情なのだ。
■かつては財務省も経済成長派
筆者は、経常収支赤字に比べば、財政赤字のほうがサステイナビリティの点では問題があると思っている。経常収赤字では30年か60年かはどちらでもいいが、さしあたり大丈夫だし、変動相場制など長期的には大きな問題を回避できる仕組みが整っている。しかし、財政赤字で経済を壊すのは、馬鹿な為政者がいれば簡単だ。実際、経常収支赤字の国際金融問題より、財政破綻のほうが実例も多い。
かといって、財政健全化を増税で行えとも思わない。実際、筆者が政権運営にタッチしていた小泉政権では、増税なしで財政再建を行った経験もあるからだ。その根拠は、名目経済成長によってプライマリー(基礎的財政)収支が改善するという事実である。この点は、2012年6月14日付け本コラム「6・13 国会公聴会 私が述べた消費税増税反対の10大理由」を参照してほしい。
財政再建を財政赤字のサステイナビリティの観点からいうのは正しい。しかし、その手段として増税はまったく間違いで、主軸になるべきは経済成長なのだ。
財務省も馬鹿ではない(なかった!)。少なくとも筆者がいた時は、財政再建は経済成長という主張だった。
先日、藤井真理子氏(現東京大学先端科学技術研究センター教授)の論文「英国における国債管理政策の変遷:1694-1970」を見つけた。この論文のオリジナルは、30年前に、私が係長時代に元財務省キャリア官僚の藤井氏と共同で書いた財務省(当時は大蔵省)の内部資料である。 藤井真理子氏は、財務省の意向からはみ出る人ではなく今では増税論者だろうが、財務省資料では異なり、英国の財政再建では「経済の成長や国富の増大を背景とした税の自然増収等を基本的な要因とする」と書かれている。当時、財務省幹部のところで説明し、やはり財政再建は経済成長しかないという結論だった。
ところが、今の財務省は、財政再建のためには増税が必要という立場だ。これは、財務省の「歳出権拡大」という意図だ。その詳細は、2013年12月26日付け本コラム「消費増税は「財政再建」のためでなく「歳出権の拡大」が証明された政府予算」を参照してほしい。
つづく