国会は唯一の立法機関である。
その責務を果たして頂きたい。
政局、選挙の事ばかり考えている国会議員の怠慢で国が侵されている現状を
国民は知り、声を上げていかなくてはならないのではないか。


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中国・韓国資本に狙われる国境離島
あまりに無防備な日本の土地管理制度
(http://diamond.jp/articles/-/57789)

東京で働くKさんは、瀬戸内海東部の播磨灘に浮かぶ家島諸島の出身だ。その離島での暮らしぶりを「何をするにも不便」と語るが、「ヘビやカメを捕まえて遊んだ」と楽しかった子どもの頃を振り返る。

 大小40余りの島から成る家島諸島だが、「最近、外国資本が孤島を買いに来るようだ」と話す。だが、「誰がどんな目的で買うのかはよくわからない」と言う。噂ばかりが独り歩きしているようだ。

 日本列島は本土の5島を除けば、その数6847島にのぼる離島で構成されている。小さなものを入れれば、島の数は数万にもなる。そのうち、日本の領海やEEZ(排他的経済水域)の基点となる国境に接する離島は約500島あるが、そんな国境離島にも外国の影が延びる。

 2012年夏、長崎県・五島列島で国境離島の無人島が、ネットオークションで売りに出された。五島最大の福江島に属する包丁島、その価格は1500万円だった。関係者によれば、「地権者は高齢を理由にこの島を手放したがっていた」という。ネットでの売り出し直後、この包丁島に中国資本からのアプローチがあった。

 福江島には自衛隊基地もあり、まさしく防衛上の要衝である。海の向こうは中国大陸、上海市の南に位置する浙江省寧波には中国人民解放軍海軍の東海艦隊が司令部を置き、その周辺を上海基地、舟山基地、福州基地が固める。仮に中国資本がここを購入したら、後にこの土地はどう利用されるのか。これが五島市の住民にとって、大きな不安材料となったことは察するに余りある。

■民と民の取引に行政は不介入だが

 その後、当時の市長が「待った」を掛け、最終的に地権者に売却を思いとどまらせた。2014年7月22日の産経新聞には「みんなで情報を共有して山を守ろうとした」(同市長)と当時の状況が綴られている。この売却話が持ち上がった背景には、当時の野田政権による“尖閣諸島の国有化”の動きもあり、国境離島の所有については誰もが敏感になっていたことが伺える。

包丁島という名の無人島は、2人の日本人による共同所有である。個人の自由意思で処分できるとはいえ、やはり結果がもたらす影響の大きさを考えずにはいられない。五島市役所によれば「本来なら民間の取引に行政が介入することは稀」だと言うが、そうでもしなければ「安全」は保てなかったのだ。

 日本の土地売買は、売り手と買い手が存在すれば取引が成立し、そこに行政が介入する余地はほとんどない。「それが資本主義だ」とする声もある。また、世界貿易機関(WTO)の「サービスの貿易に関する一般協定」では、日本は土地取得について外国人を日本人と同様に扱うとしている。

 土地所有をめぐっては、日本では私権があまりに強い。土地基本法の第二条で「土地についての公共の福祉優先」と謳われているにもかかわらず、だ。ドイツでは「所有権は義務を負う」とし、「その利用は、同時に、公共の福祉に奉仕すべきである」と憲法に定めている。アメリカでも自治体によっては公社が土地収用権を発動する。

 首都圏中央連絡自動車道(圏央道)がこの夏開通したが、埼玉県内にある事業用地内には立ち退きに応じない民家1戸があり、全面開通は来年度に変更となった。このように、都市部では地権者の反対で高速道路が延びず、離島では国防上の懸念に反して自由な取引が行われているとすれば、現行の土地制度は有効に機能していない、ということになる。

■国として土地売買の情報がつかめない

 沖縄県竹富町に属する西表島の無人島、ウ離島(うばなれしま)に買収の危機が迫ったのは昨年9月のことだ。当時、中国人らしき男がウ離島を管轄する那覇地方法務局石垣支局に姿を現したことから「買収寸前」と騒がれた。竹富町役場は「中国資本による買収というのは噂だった」とするが、「現在の所有者については把握できていない」という。

 その理由は、「届け出を必要とする面積ではないため情報が入ってこない」(同役場)ためだ。国土利用計画法は、一定面積以上の土地の取引について届け出を義務付けており、その面積を市街化区域では2000m2以上、市街化区域を除く都市計画区域では5000m2以上、都市計画区域以外の区域では1万m2以上と定めている。このウ離島については「ギリギリ1万m2未満でもあり、届け出は必要とされなかった」(同)という。そのため、所有者や用途が判然としないままだ。

そもそも、国土利用計画法は、土地価格が上昇する1970年代に、土地の投機的取引や地価の高騰を抑制することを目的に制定された。これがバブル崩壊後の日本の現状にもはやそぐわなくなってきている上、離島における土地売買においては、なおさら役に立たないというわけだ。仮に中国資本が何らかの意図を持って購入したとしても、1万m2以下なら「届け出不要」、素性を明かす必要もない。しかも、この届出は取引後に行われるものである。

 竹富町役場によれば「確かに島の売買はある」と言う。電話の向こうの言葉のニュアンスからすると、1つや2つではなさそうだ。だが、役場としてその実態を把握したくとも、「どこの誰が所有しているのかを明らかにすることができない」というジレンマがある。

 法務局に行けば誰でも土地登記簿を閲覧でき、その所有形態を確認することができるが、土地を一筆ごとに調べるのも膨大な時間がかかる。固定資産台帳から割り出す手も考えられるが、第三者の閲覧はできない。他方、国として「外資による土地売買」については、林野庁が森林について行っている以外は、実態調査がなされていない。

 離島保全にこれまで多くの提言を行ってきた第一人者である、東京財団研究員の平野秀樹氏も「一国として土地売買の情報がつかめない事態」(『季刊しま』230号)に強い懸念を示している。
                                つづく