[なにゆゑ消費税増税⑮~エコノミストを疑え!(1)~のつづき]


このように、エコノミストたちの「想定内」はいつの時点の予測かをはっきりさせないと、あやしい。直前なら、誰でも当たるだろう。エコノミストたちの真価は、直前ではなく、かなり前に当たる予測ができるかどうかにかかっている。

そこで、ESPフォーキャスト調査が、3か月後の実質GDP成長率をどの程度当てているかを、過去のデータ(→こちら)から考えてみよう。エコノミストたちの3か月先の予測力はどうなのかは関心が高い。というのも、11月17日に1次速報、12月8日に2次速報が公表される予定の7-9月期の実質GDP成長率がどうなるかは、12月に政府が10%への消費増税を決定するにあたり、きわめて重要だからだ。

ちなみに、7-9月期の実質GDP成長率について、8月のESPフォーキャスト調査のフォーキャスターの平均は4.08%とかなり反発すると予測している。

データを分析すると、エコノミストの3か月先の予測力はきわめて低い。下図は、3か月前の予測と実績がどうなっていたかを示す図だ。予測力が高ければ、ゼロのあたりに大きな山ができて両脇は低い山のような形になるが、この図ではほぼ台形のような感じだ。





要するに、エコノミストたちの予測は、上にも下にも大きく、かつ万遍なく外している。若干の統計処理をすると、7割は当たらないと考えたほうがいい。

データの中には、リーマン・ショックも東日本大震災もあったので、ちょっと過酷な時期だったかもしれないが、エコノミストという商売は経済予測が当たってナンボの世界だ。それにもかかわらず、この程度の予測力ではプロの名前がすたるというものだ。

これまでのエコノミストの低打率を考えれば、7-9月期の実質GDP成長率が4%というのは当たらないと考えたほうがいいだろう。ただもちろん、これは平均の話であり、個々のエコノミストでは打率の高い人もまれにいるかもしれない。

■財務省の意向に逆らえない事情

どうして当たらないのだろうか。特殊能力があるわけでもない普通のサラリーマンが予測しているというのが、もっともらしいが、4-6月期と7-9月期では別の要因もあるというのが、筆者の直感だ。

4-6月期が消費増税で下がり、7-9月期がその反発というのは、誰でもわかる。下図は、エコノミストが過去に行なった4-6月期と7-9月期の予測の推移だが、4-6月期が悪いと7-9月期を高めるなど、両者を合計すると、影響が軽微になることが前提になっているような数字だ。「谷深ければ山高し」と言うが、その根拠ははっきりしない。





問題はそれぞれの大きさであるが、97年4月の消費増税の例が参考になる。97年は、先行所得税減税もあり、建前としてはレベニューニュートラル(増減税同額)だ。しかも、消費増税幅は2%。今回は、先行減税もなく、ネット増税で、消費増税幅は3%。これだけでも、今回のほうが、谷深しは明らかだろう。しかも、97年の時には、たいした反発もなく、そのままドボンだった。だから、今回もV字回復はないのかもしれない。

しかし、エコノミストたちには、何が何でも消費増税の影響が軽微と言いたい事情がある。多くのエコノミストは金融機関の子会社にいるが、親会社の金融機関は財務省に弱い。その財務省が消費増税を何が何でもやり遂げたいのだ。

かつて大蔵省の時代には、金融機関の監督・検査も大蔵省であったので、大蔵省の金融機関への影響力は大きかった。今や、金融庁が分離されたので、かつてほどではないが、麻生太郎財務相は、金融庁を所管する金融担当大臣でもある。

また、金融機関は、外為資金の運用・取扱、国債入札や財務省オペの対象、財務省の事実上の内部組織である国税庁、国税局と税務上のトラブルを避けたい等の点において、財務省には弱い立場であることに変わりはない。

さらに、金融機関も増税は営業トークにもなっていることも無視できない。公式に言われることはないが、「増税しないと財政破綻になって、ハイパーインフレ・国債暴落」というのは、預金・国債を売って別の金融商品を売り込むときの密かな商売用語だ。実際、筆者の周りにはこう言われた人がいる。

その手前、増税しないと営業トークのウソがばれる恐れがある…というのは、筆者の邪推に過ぎないかもしれないが。いずれにしても、今回もエコノミストの予測は当たらないだろうと思う理由はいくつもあるのだ。[現代ビジネス]

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