[集団的自衛権(1)~基礎知識①~のつづき]
各国憲法と安全保障の関係
日本の常識、世界の非常識を見るために、各国憲法と安全保障の関係を見ておこう。しばしば、日本の憲法第9条の制約で、集団的自衛権の行使は認められないという。しかし、日本の第9条のような規定を持っている憲法は、世界では珍しくない。
先のオバマ大統領のアジア歴訪国である韓国やフィリッピンも戦争否定の規定がある。ヨーロッパでもイタリアやドイツの憲法には戦争否定の規定がある。ところが、これらの国で集団的自衛権がないという話は聞いたことがない。日本を含めて、似たような安全保障条約を結んでいるが、日本以外の国は全て集団的自衛権の行使は当然の前提である(表参照)。


集団的自衛権の反対論者が言う、「巻き込まれ論」は、国際的に日本だけは「見て見ぬふり」を公言しているのをわかっていない。
それと、地球の裏側まで行くのかという議論も、極論である。正当防衛論から見れば、「緊迫性」、「必要性」、「相当性」が求められているので、地球の裏側というのは、そうした要件に該当するものとはなりにくいので、極論といえるわけだ。
報告書では、2008年に示された4類型(公海における米艦の防護、米国に向かうかもしれない弾道ミサイルの迎撃、国際的な平和活動における武器使用、同じ国連PKO等に参加している他国の活動に対する後方支援)のほかに、次の6事例があげられている。
事例1:我が国の近隣で有事の船舶の検査、米艦等への攻撃排除等
事例2:米国が武力攻撃を受けた場合の対米支援
事例3:我が国の船舶の航行に重大な影響を及ぼす海域(海峡等)における機雷の除去
事例4:イラクのクウェート侵攻のような国際秩序の維持に重大な影響を及ぼす武力攻撃が発生した際の国連の決定に基づく活動への参加
事例5:我が国領海で潜没航行する外国潜水艦が退去の要求に応じず、徘徊(はいかい)を継続する場合の対応
事例6:海上保安庁等が速やかに対処することが困難な海域や離島等において、船舶や民間人に対し武装集団が不法行為を行う場合の対応
これらに対して、次の3つの対応が考えられる。
A.対応を行わない
B.個別的自衛権の延長として、行う
C.集団的自衛権として、行う
A~Cのどれでいくのか。ただし、これまで述べたように、Bは国内でしか通じないロジックで、国際的にはCと見られる。[DIAMOND online]