正論(38)~財政審の実態①~のつづき
[財務省に都合の良い前提条件]
今回、財務省が、「起草検討委員」を隠れ蓑として出していたと思われる財政制度等審議会の資料は、まったく2006年当時と同じ考えのものだ。
欧州委員会「Fiscal Sustainability Report 2012」に倣(なら)ったというが、以下のように、かなり都合良く前提条件を書き直している。

特に、インフレ率がおかしい。EUでは、事実上インフレ目標2%となっているので、インフレ率2%はいいが、インフレ目標2%の日本が1%ではおかしい。財務省官僚は、消費者物価指数で見れば2%だが、GDPデフレーター(全体を表す物価指数)では1%とかいうが、EUでは、消費者物価でもGDPデフレーターでも同じ2%となっている。GDPデフレーターが消費者物価指数より低い数字なのは、デフレ期だけだ。日本でもデフレ期以前はほとんど同じ動きだ。
インフレ率を低く見積もっているため、名目成長率が低くなっている。その一方で、金利は高めに設定し、名目成長率より1.7%も高い。一方、EUでは、金利は4.5%、名目成長率3.6%。金利は名目成長率より0.9%しか高くない。このからくりがばれないように、財政審の資料では、EUの紹介のところで、金利は長期金利5.1%しか書かれておらず、金利が名目成長率より1.5%も高いように誤解させる表現になっている。
一応、言い訳のために、形ばかりの実質成長率2%(名目成長率3%)も試算しているが、メインの前提条件がこれだけ違うと、50年も計算すれば「財政危機」を演出できる。はじめに増税に向けての「地ならし」=答えありきといわれてもしかたないだろう。
最近、科学論文でデータねつ造が話題になっているが、霞ヶ関の審議会資料もなかなか手が込んだ作りになっているものだ。
科学論文では、データの再現性がポイントである。財政審は税金で運営されているわけなので、国民は資料に書かれたデータを再現できるように、計算モデル式と基礎データの公開を請求できるはずだ。誰か、情報公開請求して、財政審資料の欺瞞性を徹底的に調べてみてはどうか。ただし、「起草検討委員」という「詠み人知らず」では、情報公開請求は難しいかもしれない。
ちなみに、前に述べた郵政民営化における試算は、野党の要求に応じて計算モデル式と基礎データを公開した。[DIAMOND online]
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元 財務事務次官の勝栄二郎と現 財務事務次官の木下康司
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