昨日、第185臨時国会が召集され、畏くも天皇陛下に御臨席賜り、開会致しました。


安倍首相の消費税増税を来年4月に予定通り5%→8%にする発表から半月経ち、
ちらほらと今回の消費税増税決定の過程が出てまいりました。

いずれにしても「政治家・政府・行政」は、「国家・国民」の事を第一に考え、
働いて欲しいと存じます。


消費増税の舞台裏、緒戦は官僚連合圧勝 そして始まった獲物の分捕り合戦
(http://diamond.jp/articles/-/42832)

8兆円増税して、5兆円ばらまく。来年4月から大衆課税が始まるが、集めた税金の
3分の2が景気対策に消える。社会保障財源に回るはずだった増税で、
最も恩恵を受けるのは法人税を払っている大企業ということになる。
永田町で繰り広げられる風景は、さながら増税マネーの分捕り合戦である。

[消費増税を巡る安倍政権の勢力相関図]

消費増税を巡る攻めぎ合いは、安倍政権を支える勢力の内戦ともいえる展開だ。
官邸・官僚・自民党という3極の攻防である。

「官邸」とは安倍晋三首相・菅義偉官房長官を中心とする政治主導を目指す
側近グループ、「官僚」は財務省を核とする実務派集団、「自民党」は財務省に
同調する税制調査会と土建などの族議員による国土強靭化支持層の混成部隊だ。

首相にはためらいがあった。増税で景気を腰折れさせたら、アベノミクスの成果が
台無しになる。高い支持率を支えるのは経済回復への期待だ。これが崩れたら
長期政権の夢は消え、念願の憲法改正が遠のく。

財務相を経験していない安倍は、経済政策で上げ潮派だ。財務省の敷いた路線を
そのまま走ることに抵抗があった。もともと財政への危機感は希薄だ。

第一次安倍内閣は小泉・竹中路線を引き継いだ新自由主義の色彩が濃かった。
政権を投げ出した失意の時代、周辺に集まったのは本田悦郎静岡県立大教授、
高橋洋一嘉悦大学教授など経済政策で「傍流の異端者」に位置する人たちだった。

本田も高橋も財務官僚出身だが、役所の外に新天地を求め、財務省路線に
冷ややか。そこに竹中平蔵や浜田宏一イェール大名誉教授などが合流した。
経済に明るくない安倍に金融緩和とインフレ政策を吹き込んだのは、
こうした人脈である。異端であっても不遇の時の友は信用できる。安倍が耳を
傾けるのは側近グループの声である。

個人としては増税に懐疑的でも、政府を代表する首相になると個人の思いだけで
政策運営はできない。増税法案は昨年秋に成立している。
来年4月実施を止めるには、増税廃止法案を通さなければならない。
財務省を敵に回し、不安な財政という危ない橋を渡るのは政権にとってかなりの
リスクになる。政治主導にこだわりながらも、財務省と折り合いを
つけていくことが安倍政権の課題でもあった。

[攻防第一幕は財務省vs安倍側近]

攻防第一幕は財務省vs安倍側近だった。

財務省の戦術は「増税の既成事実化」だった。6月に決めた骨太の方針2013で
「プライマリーバランスを2015年までに赤字半減、2020年までに黒字化」という
財政目標を掲げた。消費税率を10%に上げてもまだ足らない目標である。

財務省は、この目標を国際公約にして国内政策を縛る、という手法を取った。
すでに民主党政権の時代から、日本は国際通貨基金(IMF)やG7財務相会議の
場で、「財政赤字の削減」を約束してきた。他の先進国に比べ飛びぬけて高い
日本の財政赤字比率は、国際会議のたびに問題にされてきた。安倍は9月の
サンクトペテルブルグでのG20首脳会合で、財政再建を公約せざるを得なかった。

「国際公約を破ったら国債暴落が起きる」というキャンペーンを財務省は始めた。
日本国債の格下げ、国際的な投機筋が手ぐすね引いている、暴落すれば長期金利が
急騰し財政は破たんする、という「今そこにある危機」がメディアを通じて煽られた。

次が側近の切り離しである。安倍は
「小泉政権をまねて経済財政諮問会議を舞台に財務省の力を剥ぐ」ことを模索し、
竹中平蔵を議員として送り込もうとした。これを阻止したのが麻生太郎財務相だ。
安倍に電話して「竹中だけは認められない」と通告した、とされる。
財務省は「竹中対策」を徹底した。

「竹中さんには御了解していただけた」と、財務官僚から聞いたのは6月中旬
だった。6月19日、楽天の三木谷浩史社長らによる新経済連の討論会で、竹中は
消費税増税を容認する発言をした。財務省と竹中の間でどんなやり取りが
あったかは分からない。財務省と竹中は「犬猿の仲」のように見られるが、
パイプはつながっている。
状況によって妥協する「柔軟さ」を竹中は持ちあわせている。

財務省が次に警戒したのは読売新聞グループのトップ、渡辺恒雄代表だった。
読売は「今は上げる時期ではない。景気回復を見定めて2015年に10%に上げれば
いい」という社論を掲げ、2014年4月からの8%への引き上げに反対していた。

[安倍家と経産省の因縁 安倍政権は「経産省政権」]

今回の増税問題で見落とすことができないのは経済産業省の動きである。
安倍政権は「経産省政権」とも揶揄されるほど、経産省と近い関係にある。
秘書官は首相の政策参謀だが経産省は6人中2人の秘書官を官邸に送り出している。
その一人が主席秘書官の今井尚哉。資源エネルギー庁次長から官邸入りした
経産省のエースだ。主席秘書官は首相に入る情報を管理する関所の番人であり、
日程調整や面会者の選別などを決める。

首相の動静が日々の新聞に載っている。安倍政権になって特徴的なことは、
やたらと外遊が多いことだ。
インドやミャンマーなどアジア各国、ポーランドなど東欧、中東諸国など
「行っていないのは中国・韓国ぐらい」と言われるほど、こまめな首脳外交ぶりだ。

「国内に居るとお友達と接触する機会が増え、安倍さんの地金が出てしまう。
外国に行っていれば問題発言も出る機会が減る。情報管理の面からも外国に
いてもらうのが一番いい」

官邸の内情を知る官僚はそう指摘する。経産省が総力を挙げて首相の脇を固めて
いるのは「原発対策」があるからだ。その一方で、父・安倍晋太郎は通産大臣
として政治家の地歩を固めたという因縁がある。後に外相にもなったが大蔵大臣の
経験はない。安倍家人脈は財務省に疎く、その結果、官邸は経産省の天下になった。

緒戦の財務省vs安倍側近で、経産省は財務省と組んだ。「異端の学者」から
首相へのアドバイスは、政権の実務を担う官僚組織にとって雑音でしかない。
外部から注入された情報で、にわかに思いつきのような政策を口にされることを
官僚たちは嫌う。下から上がる情報で素直に動いてくれる首相が望ましい。
この点で財務省と経産省の利害は一致していた。浜田も本田も竹中もナベツネも
「雑音」にすぎない。

外遊で接触を断ち、帰国すると各省にたまった案件を次々に注入する日程を組む。
お友達との面会や会食は極力避ける、というスケジュール管理で首相の脳みそを
管理した。

ナベツネは以前から直談判を求めていたが会談が実現したのは9月10日。
消費増税8%はすでに固まっていた。パレスサイドホテルの和食屋での会談は、
発表前にナベツネのご理解を頂く儀式になった。読売が「消費増税決定へ」の
特ダネをもらうことで鉾を納めた。

財務省にとっても首相側近を抑え込むことは、増税路線を固めるため欠かせない
手立てだった。官房長官の菅も、もはや増税を止めることはできない、
と判断した。側近の弱体化は経産省にとっても官邸支配に必要なことだった。
財務省と経産省の共闘は成果があった。

[共通の敵を排除すると新たな戦いが始まった]

共通の敵を排除すると、新たな戦いが始まった。

「経産省が成功報酬を求めている」。

そんな情報が霞が関を駆け巡った。増税が決まると経産省は、かねてからの
懸案である法人税減税の旗を掲げた。増収分の一部を経産省傘下の産業界に
還元せよ、という要求だ。錦の御旗は「景気対策」である。先頭に立ったのは
甘利明経済財政担当相。経産省が育てた商工族議員の親分で原発再稼働、
TPP交渉推進など経産省の主要政策でお世話になっている政治家だ。
甘利は安倍に、増税するなら「経済を冷やさない大胆な景気対策が必要だ」
と説いた。

財務省には押し切られたことを快く思っていなかった安倍は甘利の意見に乗った。
8兆円のうち5兆円を景気対策に使えば、純増分は3兆円だけ。
「3兆円なら消費税1%分。本田教授が主張していた毎年1%づつ増税する案に
近い政策になります」と経産省は首相に耳打ちした、という。

安倍は財政再建より景気対策を選んだ。消費増税と法人税減税をセットにした。
「成長戦略に自信がない経産省は、法人税を下げることで成長率を
底上げしようとしている」と財務省は抵抗したが、
官邸の意思を覆すことはできなかった。

[自民党税制調査会の無力化が鮮明に]

今回の「増税騒ぎ」で特徴的なことがもう一つある。自民党の税制調査会の
無力化が鮮明になったことだ。

増税や減税という税制の重大事には自民党税制調査会が主導権を発揮する、
というのがかつての風景だった。税こそ権力の源泉、という考えが自民党にあり、
歴代の税制調査会会長は官界・産業界に絶大な影響力を持っていた。
ところが今回は、官邸主導の増税処理を追認する形になった。

税制調査会会長の野田毅は財務省OBで、財務省の別働隊と見られ、
首相は税調に重きを置かなかった。税調に参加する議員たちも、財務省の
緊縮財政で公共事業が抑えられ選挙区の要請にこたえられない。
増税には賛成だが、財政改革には冷やか、
というのが自民党の空気を反映し、甘利の主張する
「増税して景気対策」という掛け声に議員たちは乗った。

増税は年金・医療・介護など社会保障財源に、という原則論を自民党内で言うのは、
野党時代に増税法案に賛成した谷垣禎一法相のグループぐらいになっていた。
そんな中で、景気対策のために震災復興の法人税加算を前倒しで廃止することに、
高村元副首相は「そろばん勘定を優先して国民感情を忘れている」と苦言を
ていしたという。

安倍政権を支える「国土強靭化」などを叫ぶ政治家は、
「増税で歳出を増やし地方の公共事業に」というかつての自民党に逆戻りしている。
安倍政権の内輪揉めのような増税騒動で右往左往しているうちに、
「なんのための増税か」が分からなくなった。

健在なのは「増税してばらまく」という日本型保守政治の風景である。
それが行き詰まって、政府借金が1000兆円に膨らみ、
人々は危機を自覚するようになった。政権交代はそんな中で起きたのではないか。

自民党の復活で財政節度はまた緩み、政権の緊張感も失われつつある。
[DIAMOND online]


「増税してばらまく」に当たるかどうかは分かりませんが、今回の消費税増税分に
群がってくる「ハイエナ」が居ることは確かではないでしょうか。


「消費税増税延期希望メール」発信継続中